【医師監修】稽留流産って何?予防法はあるの?流産の種類とその原因

【医師監修】稽留流産って何?予防法はあるの?流産の種類とその原因

妊娠を待ち望んでいた人なら、妊娠検査薬で陽性反応が出たら、飛び上がるほどうれしい気持ちになることでしょう。しかし、妊娠初期は流産の可能性が高く、まだまだ油断できない状態です。流産には何種類かありますが、そのうちのひとつである「稽留(けいりゅう)流産」について、詳しく説明します。


そもそも流産って何なの?

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着床して妊娠が成立したものの、妊娠22週未満で胎児が子宮外に出ることをいいます。この妊娠22週未満というのは、胎児が母体の外で生きていけない週数です。これ以降の週数で妊娠が継続できなくなる=産まれてくることは「早産」といいます。

医療機関で妊娠が確認できたあと、母体や胎児の原因で自然に流産する確率は約15%で、妊娠したことのある女性の38%が流産を経験しているといわれています[*1]。とても残念なことですが、流産は決して珍しくはない現象なのです。なお、流産の80%以上は妊娠12週以内に起こり[*2]、特に7~9週に多いとされています[*3]。

流産の種類は?

流産にはそのタイミングや子宮の状態によって何種類かあり、その時の自覚症状はさまざまです。

進行流産

流産が進行している状態です。子宮口が開き、性器から生理の時よりも多めに出血します。陣痛のような下腹部痛もあります。

不全流産

流産は始まっているけれど、胎児やその付属物は完全に排出されずに、子宮内に一部が残っている状態のことをいいます。この場合も子宮口は開いており、出血と下腹部痛が続きます。

完全流産

流産が進み、胎児やその付属物が完全に排出された状態です。流産の進行中にあった出血や下腹部の痛みは、完全流産の後には、軽くなったり消えたりします。

稽留流産

胎児の成長や心拍が止まってしまったものの、その付属物とともに子宮内にとどまったままの状態のことを言います。母体の自覚症状はないことが多いです。

化学的流産(生化学的妊娠)

受精卵が子宮内に着床したあと、超音波検査で胎嚢を確認する前に流産することをいいます。妊娠はしたものの、胎嚢ができる前に成長が止まり、いつもの生理のような出血が起こったものです。

実は、妊活中の生理開始予定日に妊娠検査薬を使えば、かなりの高確率で妊娠反応は陽性になります。これは、市販の妊娠検査薬の感度が上がりすぎたことで、その直後に受精卵の遺伝子が原因で流産する運命の妊娠まで、陽性として判定できるようになってしまったためです。

化学的流産(生化学的妊娠)を防ぐ方法はなく、何の異常もないカップルの間でも実はよく起こっているとされています。変に期待をしないためにも、妊娠反応検査薬を使うのは生理開始予定日から1週間後くらいにしましょう。

よく聞く「切迫流産」って何?

妊娠初期に下腹部痛がおきたり、少量の出血があったりしたので産婦人科を受診したところ、「切迫流産」と診断されることがあります。これは、流産になりそうな状態ではあるのですが、超音波検査では胎嚢などは子宮内に確認できる状態です。つまり、流産になってはないけど、これから流産になりそうだと判断された状態です。

切迫流産と診断されたら、妊娠週数や個々の状態を確認のうえ、慎重に経過を観察することになります。切迫流産から流産になるのを予防する方法は特にありません。薬物療法を行うこともありますが、流産予防効果について有効性が十分に確認された薬剤はありません。切迫流産の所見/症状はいくつかありますが、そのうちのひとつが絨毛膜下血種です。これは、胎盤の絨毛膜と子宮の膜の間に血の塊ができる状態で、この場合は、安静にしていると流産を予防する可能性があるとされています。

流産の原因は?

流産は、妊娠週数によって大きく2つに分類されます。妊娠12週未満の流産を早期流産、妊娠12週以降22週未満の流産を後期流産といいます。早期流産の原因は胎児由来の場合が多く、後期流産では母体由来の原因が多いとされています。胎児由来の原因としては、染色体の異常や遺伝病によるものです。そして母体由来の原因としては、子宮の奇形や頸管無力症、黄体機能の不全、感染症、ホルモン分泌の異常、母体と胎児の間での免疫の異常などが挙げられます。

ただし、原因が母体側にあるとされる場合でも、流産は妊婦が注意すれば防げるというものではありません。「私が無理をしたから流産してしまったんだ」と自分を責める人は多いものですが、妊婦さんの努力ではどうしようもない場合がほとんどのため、たとえ流産してしまっても、自分を責める必要はありません。

稽留流産の前兆は? どうやってわかるの?

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稽留流産はほぼ無症状で、自覚できる前兆のようなものもほぼありません。基本的に超音波検査で胎児自体やその心拍が確認できない場合や、妊娠週数に対して胎児の成長が遅い場合などに、稽留流産が疑われます。ただし、胎児の成長が遅いのは、排卵の遅れによって、最終月経からの週数よりも実際の妊娠週数が少ないからという可能性も考えられます。

もし、正常に妊娠しているのに稽留流産と診断されて、すぐに子宮内除去手術を行ってしまうと、せっかく育つはずだった命が失われてしまうことになります。ですから、産婦人科では1回の検査で稽留流産と診断することはあまりなく、1~2週間程度の適切な間隔をあけて再度検査をしたうえで、やはり胎児が成長していないようなら稽留流産と診断するようにしています。

近年の稽留流産の診断基準は、
・頭殿長(胎児の頭からお尻までの長さ)が7mm以上あるのに胎児の心拍を確認できない場合
・卵黄嚢を伴わない胎嚢を確認した2週間後以降に、胎児の心拍を確認できない場合
・卵黄嚢を伴う胎嚢を確認した11日後以降に胎児の心拍を確認できない場合
です[*1]。

稽留流産を予防する方法はある?

「流産の原因は?」で紹介したとおり、ほとんどの流産は妊婦さんの努力によって食い止められるものではありません。また、稽留流産と診断されたら、すでに胎児の成長は止まってしまっているということなので、残念ながら妊娠は継続できません。

稽留流産と診断されたらどうするの?

稽留流産は症状がないため、そのまま放置しても支障がないように思えます。しかし、成長の止まった胎児などを子宮内に長く残したままにすると、出血量が増加したり感染の原因になったりします。そのまま胎児などが自然に排出されるのを待つか、手術を行うか、それぞれの利点や欠点を比較検討して対応します。自然な流産を待っていても、なかなか排出されない場合は、子宮内容除去手術が必要になります。

まとめ

妊娠初期は、胎動が感じられるわけではないですし、流産の可能性も高いので、赤ちゃんがちゃんと育っているかどうか、祈るような気持ちで毎日を過ごす妊婦さんも多いことでしょう。

状況を把握するために、妊娠初期は定期的に超音波検査を受けて、赤ちゃんがちゃんと育っているかどうか確認しましょう。しかし、流産を予防することは難しく、食い止めることもほとんどできません。もし流産してしまっても、どうか自分を責めすぎないようにしてくださいね。

この記事の監修ドクター
産婦人科医 太田寛先生
アルテミスウィメンズホスピタル産婦人科(東京都東久留米市)勤務。京都大学電気工学科卒業、日本航空羽田整備工場勤務。東京医科歯科大学卒業後、茅ヶ崎徳洲会総合病院、日本赤十字社医療センター、北里大学医学部公衆衛生学助教、瀬戸病院を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士、インフェクションコントロールドクターICD)、女性のヘルスケアアドバイザー、航空級無線通信士

(文:今井明子/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]産婦人科診療ガイドライン―産科編2017/公益社団法人日本産科婦人科学会 CQ202 妊娠12週未満の流産診断時の注意点は?, 127p
http://www.jsog.or.jp/uploads/files/medical/about/gl_sanka_2017.pdf
[*2]日本産科婦人科学会 流産・切迫流産 http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=4
[*3]NEWエッセンシャル産科学・婦人科学 第3版, p399, 医歯薬出版, 2004.

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

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