「目を通す」は敬語ではない? 正しい意味と目上の人に使う際の言い換え表現を解説
実は「目を通す」という言葉は、目上の人に使うには、あまりふさわしい表現ではありません。「目を通す」の正しい意味と敬語表現にするにはどうすればいいかを解説します。
読んだり見たりといった行動を示す「目を通す」。日々仕事をするなかで「目を通しておきます」「目を通していただきたく」などと、何気なく使っているのではないでしょうか。
実は「目を通す」という言葉は、目上の人に使うには、あまりふさわしい表現ではありません。
今回は、誤解しやすい「目を通す」の意味と使い方をおさらいします。正しい敬語表現や類語・言い換え表現もご紹介するため、ぜひ役立ててください。
「目を通す」の意味
「目を通す」とは、「一通りざっと見る」という意味です。書類の確認をあおぐシーンが頻発するビジネス上で使いがちな表現ですが、改めて意味を見てみましょう。
目(め)を通(とお)・す
ひととおり見る。通覧する。「朝刊にざっと―・す」
出典:『デジタル大辞泉』小学館
全体を一通り確認するという意味を持つことが分かりました。「ざっと見る」という程度のため、細かな部分まで確認するニュアンスは含まれません。一言一句を見逃さずに読むのではなく、全体を把握するために斜め読みするシーンにマッチするといえるでしょう。
とはいえ、元々「目を通す」という言葉には謙遜の意味合いが含まれています。実際には隅々まで確認していても、「目を通しておきました」と伝えた経験がある人も多いでしょう。
「目を通す」の間違った使い方
書類・依頼の内容をおおまかに確認する時に使用する「目を通す」ですが、実際のところ間違った使い方をする方も少なくありません。
そこで次に、「目を通す」のNGな使い方を解説します。
(1)目上の人へ使う際は敬語表現にする
まず、覚えておかなければいけないのが、「目を通す」は目上の人には不適切な表現ということ。その理由の1つに、「目を通す」という言葉が敬語でないことが挙げられます。
もし敬語にするならば、「~いただく」などの謙譲語を組み合わせることが必要です。「目を通していただく」とすれば形的には敬語表現になります。
さらに、そもそも「目を通す」の意味は、「一通り見る」ということです。もし相手に依頼するならば「ざっくり見てもらえますか?」といった、かなりライトなニュアンスになります。
相手によってはビジネス上の書類を「軽く斜め読みしてください」というのは失礼だと捉えられる可能性があるため注意しましょう。
(2)きちんと確認してほしい時には不適切
ざっと見るという意味を持つ「目を通す」は、じっくりと確認してほしい時にはそぐわない表現です。万が一、細部まで見てほしいシーンで「目を通しておいてください」と伝えてしまうと、相手は「ざっと読む程度で良いのか」と思ってしまうかもしれません。
認識の違いを生まないためにも、内容をしっかり確認してほしい時には他の表現を選びましょう。そもそも目上の上司には適さない表現である「目を通す」ですが、たとえ相手が同僚や部下であっても、使用するシーンは見極めなければなりません。