読めば結婚相談所いらず? 婚活のバイブル『結婚の技術』書評
仕事、結婚、からだのこと、趣味、お金……アラサーの女性には悩みがつきもの。人生の岐路に立つ今、全部をひとりじゃ決め切れない。誰かアドバイスをちょうだい! そんな時にそっと寄り添ってくれる「人生の参考書」を紹介。今回は、『結婚の技術(植草美幸著・中央公論新社)』を、ライターのミクニシオリさんが書評します。
「結婚相談所は、ちょっと違うんだよなあ」。今も恋愛で悩み続けている友人の多くから、聞いたことがある言葉です。
そんなふうに語る人の多くが「結婚したくないわけじゃないんだけど」とも言います。そして、彼氏が「できない」わけではなかったりする。人からの紹介やマッチングアプリなどで、たまに彼氏ができたり、告白されたりすることがある。けれど、そういう人のことはタイプでなかったり、周りの友人から見てもどうかと思う部分がある人だったり……。
“けれど”という接続詞が続いてしまいましたが、結婚する気があるとかないとかいう話は、結局タラレバ論でしかありません。「私には一生、結婚生活はいらない」なんて20代のうちに決めきれる人は、かなり覚悟のある人でしょう。今はしなくていいけれど、どうしたらいいか分からない……多くの未婚女子にとって、結婚はグレー。
だからこそ逆に“婚活”というワードに触れると「ちょっと違う」と思うのかもしれません。結婚相談所も本気の婚活も、自分には無縁に感じる。行動に移せないあなたにこそ、読んでほしい本があります。
【この本を読んで分かること】
・恋愛に必須な「自己分析」が足りているかどうか
・なぜ「今は結婚しなくていい」と思ってしまうのか
・結婚相談所に入ったら、どんなふうに婚活がすすむのか
「自己分析」できてる? プロフィールづくりは自分との向き合い
『結婚の技術(植草美幸著・中央公論新社)』の著者・植草美幸さんは、結婚相談所で長年婚活アドバイザーを務めてきた方。彼女によれば、結婚相談所でのカウンセリングとは「自己分析」だといいます。
恋愛がしたいのか、結婚がしたいのか。どんな未来を描きたいのか。なぜ自分は今、結婚していないのか。自分の素を、どこまで他人にさらけ出せるのか。自己分析と聞くと「自分でもできるじゃん」と反論する人もいそうですが、積み上げてきた見たくない自分、嫌いなところ、犯した失敗、悪い部分も含めて自己分析を自分で行うというのは、並の精神力では難しいこと。
植草さんがお客様の婚活プロフィールを作る時は、自身のことから家族のことまで、ありとあらゆる素性を聞くと言います。日本人はなかなかカウンセリングを受ける機会がないのでピンと来ないかもしれませんが、カウンセラーという第三者に自分のことを面と向かって話せるのは、かなり意味のあること。
ということで、本を読んだだけで自己分析を進めきるのは難しいかもしれませんが、第1章では植草さんが婚活をするお客様をカウンセリングしていく様子が紹介されていきます。人に心をさらけ出すということがどういうことなのか、なぜ結婚以前に恋愛がうまくいかないのか、この章を読めば少し分かるのではないかと思います。お互いにうまく心を開けなければ、いいマッチングにはなりませんし、信用を獲得できないままお別れすることになるのです。
恋愛に主体的になれない理由は、なんだろう?
第2章では、恋愛や婚活でよくある「高望みな理想」との向き合いが始まります。自分が持つ理想が、本当に自分にとって必要なものなのかどうか。「いい人なのに好きになれない」という、誰しもがぶつかったことのある壁への対処法などが語られています。
このあたりはかなり実践的な内容なので、実際にセルフで恋活・婚活を行っている人にはもちろん生きるでしょう。そして婚活にまだ興味がないという人にとっては、耳が痛いか興味がない、と思う部分なのではないかと思います。「はいはい、どうせ妥協しろって話でしょう」と呆れる気持ちも分かりますが、まあ落ち着いて。婚活に興味がない派の方には、第3章をじっくり読んでほしいんです。
第3章で語られるのは「交際中に好かれるコミュニケーションの極意」。交際中、とありますが、そもそも恋愛はコミュニケーションありき。コミュ力は、交際前から必要なんです。植草さんは、この章の最初で「プライドは捨てろ」と語りかけてきます。私自身、思い返してみると、今までうまくいかなかった恋愛の多くは、コミュニケーション不足だったなあと痛感しました。
相手からの連絡が遅くて、デートの約束が思うようにできなかった元彼。話し方や行動の癖が気になっても、指摘もできないくせにモヤモヤし続けた自分。言いたいことをのみこんでも、無理して連絡頻度を遅くしても、うまくいった試しがありませんでした。
かといって自分が相手を「好きになる努力をしていたか」と聞かれれば、相手に私を好きにさせてほしい、と思っていたあの頃の自分。プライドと誇りが守れていたので後悔はありませんでしたが、だからこそ迷走した時間も長かった気がします。「こんな自分を受け入れてくれる王子様探し」に時間をかけていましたね(痛)。
この章を読むと、恋愛や交際の中で、女性がプライドを捨てて「主体的になるテクニック」を知ることができます。ここまでしたくないな、そう思ったあなたのその心は、本心ですか? それともプライドですか?
自由な恋愛、できていますか?
『結婚の技術』を読んでいて、心に響いた言葉がひとつあります。それは「もっとわがままでいい」という言葉。分かる。最近の女性はあまりにもわきまえすぎている、と友人の話を聞く時によく感じます。「連絡を急かしたらメンヘラと思われる」「私は気が使えるけど、相手はそうじゃない。でも期待していない」などなど。男性に嫌われるようなことを先回りして避けて、それができない男性の粗雑さに絶望しているのです。
青春時代に読んだ少女漫画を読み直してみると、あの頃の主人公はもっとわがままだった。大人になって「あれは夢物語なのだ」と、男性に期待しなくなるのは、期待した後に自分が傷つくのが怖いからかもしれません。
けれど、涙をのんで我慢を重ねても、不自由なだけ。恋愛も結婚も、仕事も人間関係も。自ら選び抜ける人が自由なのであり、受け身でいる人には、用意された選択肢しかないのです。
この本を婚活中の方が手に取ったなら、きっと共感があふれることでしょう。でも、結婚や恋愛に必要なのって、共感じゃないんです。今の自分と向き合うためには、共感だけではだめなんです。だから私はこの本を、婚活中ではない人に勧めたいなと思いました。
本には結婚相談所でよくあるトラブルや抱えやすい悩み、婚活の流れなども書いてあるので、婚活を検討したことがない人の方が、目からウロコな話が多いと思います。それに、多くの結婚相談所はセルフ婚活よりも多くの予算を必要としますが、本を読むだけなら1,500円程度。「婚活って、どんな感じなんだろう」という疑問も解決しますし、植草さんからの問いかけの中に、響く言葉があるかもしれません。「結婚したい」と強く思うわけではないあなただからこそ、まずは本を読んで、感想をジャーナリングし、自己分析の一貫として利用してもらうのがいいと思います。
(ミクニシオリ)
※この記事は2023年12月17日に公開されたものです