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美容院が苦手。人見知りすぎる私がノンストレスで髪を染められる店を見つけた話

朝井麻由美

ヘアケアをしてもらいながら「美容師さんと楽しく会話をする」のが美容院に行くことの醍醐味のひとつでもあります。でも中には、美容師さんと会話をする“あの時間”が苦手という人も多いのではないでしょうか。そんな方にとっては、美容院に行くことが何よりも苦痛だったりしますよね。今回は、同じく“美容院での会話”に苦手意識を持ち、『ソロ活女子のススメ』の作者でもあるライターの朝井麻由美さんに、一般的な美容院とは一味違ったヘアカラー専門店を体験してもらいました。

かねてより私は、「話しかけてこない美容院」があればいいのにと思っていた。多くの美容院はお客さんと話すことを美徳とし、お客さんもまた楽しい会話をすることで喜ぶ、らしい。

というのも、私は見知らぬ他人と話すことにすこぶるストレスを感じる性質がゆえに、この喜びが昔から今一つ分からないのだ。けれど、この会話を楽しみにしている人がいる以上、美容院を責めるわけにもいかない。向こうもよかれと思ってやっているのである。

とはいえ、こういう話をするたびに、共感の声も聞こえてくるため、私のような層は一定数いる。「話しかけてこない美容院」は一部に向けて確実に需要があるはずだ。

この度、そんな悩みを解決してくれそうな美容院「毛染めの窓口」を発見した。カットはなく、カラー専門ではあるものの、必要最低限の接客で、静かに過ごせるのは非常にありがたい。今回はそんな「毛染めの窓口」を、極度の人見知りの私が体験した話を紹介したい。

「毛染めの窓口」はある意味“天国”

「毛染めの窓口」は全国260店舗でサービスを展開しており、今回行ってきたのは「スマイルカラーイトーヨーカドー赤羽店」。値段は店舗によって異なるが、だいたい2,000円~3,000円くらいとのこと。カラーリングのメンテナンスとして利用する人も多いのだそう。

生え際を染め直すために毎回いつもの美容院に行っていたらコストがかかる、という人に重宝されているのだとか。

利用する時はインターネットか店頭に設置されている予約システムで予約を取るのだが、空いていればその場で予約してすぐに入ることも可能。所要時間も40分~1時間程度(長さと染める範囲による)と短いため、空いた時間にサッと入ることができるのもありがたい。

入店すると、まず希望のメニューを購入。まるで食券のようだ。これもまた店舗滞在時間を短くする工夫のひとつ。

いわゆる「接客トーク」も最低限。「休みの日は何をしているんですか?」「今日はお休みですか?」とも聞かれない。そう、私のような平日にもフラフラと美容院に出かけられるようなフリーランスにとって、聞かれて困る質問ナンバー1と言ってもいい「お休み」問題。

今日は確かに休みだが、「休みです」と答えると、今度は「平日休みなんですね! 何系の会社なんですか?」と聞かれ、「いや、そもそも休みっていうか、休みではなく時間が空いたから美容院に来ただけで、そもそも会社員ではなくて……」。だからと言って「フリーランスです」と言ってしまうと一体何の仕事をしているのかの説明がややこしくなるからできれば何も答えたくないんだけど、あーもう! リラックスしに美容院に来たのになんて答えればいいか分からなくてリラックスできないよ! となるから美容院での会話が嫌なのだ。

それが、「毛染めの窓口」では一切そういうことを聞いてこない。会話をしたそうな人とは会話もするらしいが、話しかけてこないのがデフォルト。私のような、できる限り他人との会話を避けて生きていきたい人間にとっては天国である。ハッピー!

とはいえ、カラーリングをする上で、どんな色にすればいいのかはある程度きちんと相談しないと不安だとは思う。そこは案ずることはなかれ。質問すればなんでも丁寧に答えてくれる。

ちなみに、初めてカラーをする人や、久々にする人は、事前に自分でパッチテストをしてくる必要がある。私は髪を染めたのが15年前だったため、今回はカラー薬剤が入っていないトリートメント剤を使って一通り体験させてもらった。

施術は「早さ」こそが価値

そしていざ、塗り始めると……早い! 早すぎる! 塗るのがあまりに早くて驚いた。だいたい3分で塗り終わるのを目指しているらしい。早く塗るための研修も行っているのだとか。

そんなに早く塗って、ムラにならないのかと心配にもなるが、そこはしっかりムラなく塗る技術があるからご安心を。

「毛染めの窓口」のコンセプトは「時短」。ほかの美容院では、会話をしながらゆっくり塗ることもサービスのひとつ。そこをすべて省いて、早さに価値を置いているのだ。

薬剤を塗ったら壁と向き合うように設置された待機コーナーに25分間待機。自分の体温でカラー剤が髪に浸透していくらしい。

そして、シャンプーもまた早かった。……らしいのだが、実はそこまで早く感じなかった。

機械を使ってのオートシャンプーを2分半、その後、手で洗ってもらうのが30秒。だったそうだが、オートシャンプ―も手洗いも、まんべんなく頭皮を洗ってくれているからなのか、頭皮がすっきりしてとても満足度が高かった。

実際の時間は短くても、体感時間は短く感じない。きっと、美容師さんのシャンプーの技術が高いからなのだろう。

最後は自分で乾かすのもこの店の特徴。美容院に行った時、後は家に帰るだけなのに無駄にセットされることがあるが、急いでいる時は正直ありがた迷惑に思ったこともある。そういう意味でも、サッと帰りたい時に自分で乾かすシステムはいいかもしれない。

左:before、右:after ※「毛染めの窓口」提供写真

なお、カラー薬剤を使って全体を染めた場合、このような仕上がりになる。ムラなくもきれいに染まっているのが分かる。

ドライヤーコーナーにはヘアオイルや洗い流さないトリートメントなどが設置されている

初めて知る美容業界の現状

ちなみに美容師の指名制度はなし。ごくまれに指名をしたいと希望するお客さんもいるようだが、お断りしているのだそう。それはひとえに、美容業界の働き方の性質に関係している。

私たちはほとんどの場合、美容師を指名してカットやカラーをしてもらう。その指名理由は美容師のカット技術……と言いたいところだが、果たして本当にそうだろうか。話が面白くて仲良くなったから指名したり、逆に必要以上に話しかけてこないのが心地よくて指名したり、あるいは見た目がオシャレで「なんか上手にやってくれそうな気がする」という理由で指名することもあるだろう。

今回伺った「スマイルカラー」の店長さん曰く、美容師の仕事は年齢を重ねると続けるのが非常に難しくなるらしい。会話力や技術以外に大きいのが容姿と年齢。若くて美人orイケメンの美容師に指名は集中するのだという。“技術が高そうに見える説得力”において、容姿と年齢の比重はあまりに重い。ルッキズムとエイジズムとが切っても切り離せない業界であることに、言われるまで気づかなかった。

年齢を重ねて経営側に回ることができればいいが、そうなれなかった人は業界を離れざるを得ない。出産して仕事に復帰したい人が戻る受け皿がない。「毛染めの窓口」の立ち上げは、そういった問題を解決する意味もあったのだそう。

だから、「毛染めの窓口」では指名制度で競い合うことはなく、誰が施術しても一定の技術を提供するようになっている。

技術を持っているのに復職できない美容師が世の中にはたくさんいる。実際には、美容師のような技術職は、年齢を重ねるほど経験を積むため、「若い=上手い」ではないはずなのに。思いがけず、美容業界の難しさを考えさせられてしまうひとときだった。

こうやってしんみりと思いにふけってしまうのも、店全体が静かだからだろうか。静かに施術してくれて、乾かすのも自分一人でやるため、なんだか自分一人の時間を堪能できた気がした。

それにしても、仕上がりの早さと値段の安さには大満足。実は私、メンテナンスの面倒くささと金額が理由である時から一切カラーをしなくなったのだけれど、これならまたやってみてもいいかも、と思えたのだった。

(取材・文:朝井麻由美、写真:マイナビウーマン編集部)

※この記事は2023年12月04日に公開されたものです

朝井麻由美

ライター・編集者。著書に『「ぼっち」の歩き方』、『ひとりっ子の頭ん中』。
Twitter:@moyomoyomoyo

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