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営業職の20代女性が、味の素でウェルビーイング事業を立ち上げた理由

#わたしが向き合う女性のカラダ

ミクニシオリ

すべての女性が自分らしく過ごすために、女性の健康や身体にまつわるサービスを展開するリーダーにインタビュー。女性としても、ビジネスパーソンとしても輝く彼女たちは、一体どんなことを考え、“女性のカラダ”と向き合っているのでしょうか?

取材・文:ミクニシオリ
撮影:洞澤佐智子
編集:松岡紘子/マイナビウーマン編集部

自分のからだのこと、性のこと。本やネット検索などで、正しい情報を知ることは簡単にできるようになってきたものの、やっぱり身の回りでは、話しづらいことだったりします。情報を得たり、自分で実践したりするだけではなく、やっぱり誰かと悩みや気持ちを分かち合いたい。そんな女性のために立ち上がったのは、とある一人の女性でした。

味の素株式会社で営業として働いていた橋麻依子さんは、社内の起業家育成プログラムを利用して、女性Well-being事業「LaboMe(R)」を立ち上げました。メンバーが選んだセルフケアプロダクトが毎月届くサブスクに加え、参加者たちが意見や悩みを共有できるコミュニティとしても機能しているLaboMe。チームを牽引する橋さんに、LaboMeの掲げる「自身の身体と向き合うこと」の意味を聞きました。

目指したのは体調管理を強制するのではなく、共有し合える事業

――まずは、橋さんのこれまでのご経歴を教えてください。

新卒で味の素株式会社に入社し、現在7年目です。飲食店様に商品提案する外食用営業として4年間働いた後、2020年に社内起業家育成プログラム「A-STARTERS」に応募・採択され、LaboMeを立ち上げました。

――プログラムに応募したきっかけは?

新卒から営業として働いていましたが、ゆくゆくはマーケターになりたいという目標を持っていました。その気持ちを当時の上司との面談で伝えたところ、仕事は目的ではなく手段だ、と教えられました。「なぜマーケターになりたいのか、誰の役に立ちたいのかも考えてみて」とアドバイスを受け、自分のキャリアについて再考しました。その結果、自分のやりたいことを実現するために、若いうちから挑戦したいと考え、入社1年目から応募できるA-STARTERSに応募しました。

――上司のアドバイスを受けて、仕事を通して誰の役に立ちたいと考えましたか?

「自分のような女性の役に立ちたい」というのが、私の答えでした。というのも、私は中高生時代から生理が重く、PMSにも苦しんでいました。私はずっと誰にも言えなかったけど、大人になってからは「実は私もずっと悩んでいたの」と、友人の方から打ち明けてくれる機会も何度かありました。きっと私以外にも、身体のことで悩んでいる女性はいるはず。そう思うと励まされる気持ちもありましたし、そんな女性たちの役に立つ事業を始めたいと、LaboMeの構想を練りました。

――「セルフケアのサブスクとコミュニティ運営」という構想は、その当時から決まっていたのですか?

事業が採択されてから実際にチームが組まれるまでには、約1年のラグがあったのですが、その1年間に色々模索していました。最初は、ウェアラブルデバイスでPMSや体調変化を予測する、体調管理系サービスなどを考えていました。しかし、プロダクトの検証期間に社内外の女性にインタビューしたり、アンケートを取ったりしていく中で、女性たちの想いが見えてきたんです。

実際のお声を聞いてみると「揺らいでしまう自分をコントロールしなければいけない」と考えている女性がとても多いことが分かりました。体調不良になると、自分を責めてしまうという方も多く、体調管理を強制させてしまうようなサービスを展開するのは嫌だな、と考えるようになりました。そこから、自分の体調や気持ちを共有できる場所を提供する、今のLaboMeのカタチが見えてきました。

LaboMeは「自分に合うか」を研究するセルフケアラボ

――コミュニティ運営に加えて、セルフケアのサブスクを展開しようと考えたのはなぜですか?

検証期間にお話した女性たちが「毎日、毎月同じことで悩んでいるわけではない」と言っていて、その意見にとても共感したからです。たしかに、PMSも月によって重さは違うし、季節によってはPMS以上の悩みを持つ時もあります。それに、生理が重いから、PMSがひどいからと言っても、ずっとそのことについてばかり悩んでいると、逆に疲れてしまいますよね。だから、商材は絞らずに女性の様々な課題を解決できるプロダクトをお届けするサービスを考えました。

女性の悩みはいろいろあると思いますが、状況に合わせたセルフケアを模索できるようになれれば、もっと生きやすくなる人もいると思います。セルフケアのプロダクトとコミュニティを通じて、その時の自分に合うケアを探求していくのが、今のLaboMeのコンセプトです。

――毎月届くプロダクトは、どのように選定されているのですか?

LaboMeでは味の素の製品をお届けしているわけではなく、女性に役立つ製品を作っている、さまざまなブランドのアイテムをお届けしています。商材も食べ物や飲み物、スキンケアコスメやバスケアグッズ、衣料品など、テーマに合わせて変えています。

お届けするプロダクトは、味の素(株)研究員メンバーが自信を持っておすすめできると判断したものです。自分に合うものを知りたくても、自分では本当にいいものか分からないという悩みを持つ人も、安心して使っていただけます。プロダクト選定会議は研究員だけでなく、チームメンバー全員が参加し、実際に自分たちで手に取って、使用した感想をぶつけ合います。私たち自身が「みんなにすすめたい」と思ったものをお届けしています。

――LaboMeのメンバーはどのような活動ができるのですか?

届いたプロダクトを使ってみた感想をコミュニティの中で発信したり、コメントで交流したりすることができます。コミュニティにはLaboMeの研究員メンバーも参加しているので、気になることがあれば専門家に質問することもできます。アイテムをただ使うだけではなく、他の人の意見を聞きながら「自分に合うか」を研究することができます。

セルフケアのサブスクはたくさんありますが、参加メンバーと交流して悩みを共有できるのは、LaboMeの大きな強みだと考えています。プロダクトが届いて終わりではなく、他の人の意見を聞きながらアイテムが自分に合うかどうか模索できるのが、LaboMeならではの活動です。

また、オンラインだけでなくオフラインのイベントも毎月開催しています。毎回テーマを設定してイベントを行っているのですが、ゲストをお招きして参加者の皆さんとワークショップをしたり、トークショーを行ったりしています。ゲストには、お届けしたプロダクトの開発者さんや、さまざまなセルフケアの専門家をお招きしています。イベントでは参加者さん同士が交流できる機会も多いので、自分と似た悩みを持つメンバーと実際に仲良くなったとおっしゃってくれた方もいます。

――LaboMeの参加メンバーからはどんな声が届いていますか?

オフラインイベントでは、同じ悩みを持つ人と知り合えて安心した、という嬉しい意見を聞くことが多いですね。また、個人的に嬉しかったのは、お届けしたプロダクトを「使い続けている」というお声をいただく時です。会員の方々が私たちの選んだアイテムを手に取り、それが新しい習慣となって生活に馴染むことは、LaboMeの目指すひとつのゴールでもありますから。

身体の揺らぎと共存し、許し合える社会へ

――現在2年ほどLaboMeの開発・運営されていると思いますが、これまでにどんな苦労がありましたか?

LaboMeは社内の新規事業なので、立場が上の方も含め、たくさんの人の意見をいただく機会が多いです。その認識をすり合わせていくのは大変なことではあるのですが、それぞれに違う前提を持っている人々の意見を理解し、聞き入れていくことも、LaboMeの成長に必要なことだと思っています。

チームメンバーにも、味の素の研究所で働くメンバーや、後輩にあたる年次の社員、社外の方など、いろいろなバックグラウンドを持つ方がいます。当初はお互いにうまく意見が言えない時期もありましたが、実際にLaboMeを受け入れてくれた会員の方々と交流する中で、メンバーの目標も一致するようになりました。会員の方々もチームメンバーにもそれぞれの個性があるので、自分とは違う意見も、大切な目線として捉えていきたいです。

――LaboMeが考える「自分の身体と向き合う」ことの意義とはなんですか?

体調の揺らぎは、年齢とともに感じる機会が増えていくものです。完全になくすことは難しいからこそ、私たちは揺らぎと共存していく必要があります。体調変化と上手に付き合いながら、しなやかに生きていくために必要なのが「自身との向き合うこと」です。何かあった時にも自分なりの対処法があれば安心ですし、揺らぎを受け入れることができれば、体調の変化があっても不幸に感じづらくなります。

自分と向き合い、揺らぎと共存できる人が増えていくことで、社会全体の体調変化に対する寛容度が高まっていけばいいなと思っています。いつも全力で頑張らなくても、大丈夫。そんなメッセージを、LaboMeでの活動を通して発信し続けていきたいです。

※この記事は2023年11月28日に公開されたものです

ミクニシオリ

1992年生まれ。2017年にライター・編集として独立。芸能人やインフルエンサー、起業家など、主に女性に対するインタビューを多数執筆。恋バナと恋愛考察も得意ジャンル。ハッピーとラッキーがみんなに届きますように。

Twitter:https://twitter.com/oohrin

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