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発売数カ月で話題に! 冷感グッズの新定番「アイスリング」が“バズった”ワケ

#バズりの裏側

吉川夏澄

ついつい気になってしまう「バズり商品」。手に入れるために何件もお店を回った、運良く見かけて何個も買ってしまった……そんな経験をしたことがある人も多いのでは? そんなヒット商品は、どんな経緯で生まれたのでしょうか。「ヒット間違いなし!」と自信を持って世に送り出され、順当にバズったのか、それともひょんなきっかけがあったのか……製品の開発担当者やPR担当者にお話を伺います。

最近の夏はとにかく暑すぎる……。昨年ごろから電気代の高騰が始まり、暑さ対策と節電の両立に悩む人も多い中、注目されているのが電気を使わない冷感グッズ。外出時に何かしらの冷感グッズを持ち歩く人を街でよく見かけるようになりました。

F・O・インターナショナルから発売されている「アイスリング」もそのうちのひとつ。首に装着するだけという手軽さで発売するやいなやSNSで話題になり、入手困難になる時期もあったようです。

今回はF・O・インターナショナルのネット販売部クリエイティブチームの藤井光さんに「アイスリング」の“バズりの裏側”について伺いました。

提供写真

「バズり商品」を生み出したのはまさかの子ども服メーカー

首元を冷やすことで全身の熱をクールダウンさせてくれる「アイスリング」は、直接肌につけることで身体の熱を吸収し、身体にこもった熱を逃してくれるアイテムです。その特徴は、28℃以下で自然に凍結し、屋外屋内どこでもくり返し使うことができます。

そんな「アイスリング」を2021年6月に発売したのが、兵庫・神戸を拠点とし、全国で子ども服やベビー服ブランド「ブリーズ」「アプレ レ クール」「アルジー」など複数展開するF・O・インターナショナルです。なぜ子ども服メーカーから夏には欠かせない冷感グッズが生まれたのか、藤井さんに聞いてみると意外にも企業との出会いがきっかけだったのだそう。

「コロナ禍はいろいろなマーケットに変化が生じていたと思うのですが、弊社としてはアパレルだけでなく、ベビーや子供の総合企業を目指しているので、新コンテンツ開発に力を入れていました。そんな中、担当者が展示会で『SUO_クールリング』という名前で売り出していた株式会社WIZさんのブースに立ち寄り、商品の説明を聞いて面白かったので、すぐにやりたいと思ったのがきっかけです」

「SUO_クールリング」との出会いから発売までに与えられた時間はわずか4カ月。その間に限定のデザインを発注しながら、まずは新しく不思議な商品の特性を、お客さまに自信を持って伝えられるよう、社内に理解してもらうところからスタートしたのだそうです。

「店舗数が200以上あることから、まずは商品を理解してもらうことに時間をかけました。社内の理解を深めることと並行して行っていたのがプロモーション。一年目ということでプロモーション費用をかけられなかったことから、SNS訴求に注力しました。Instagramでアンバサダーを募集するなど、明らかに『この商品を強化している』という事を認知してもらうためにいろんなことをしました」

夏本番に向けて販売を予定していたことから、短期間で準備を進めていた藤井さんは、「4カ月もあったっけ? という感じでした。」と話すほど目まぐるしい日々を送っていたのだそうです。

最初の「バズ」は発売後わずか1カ月。たった約4カ月で販売本数は4万本近くに

口コミを集めることや商品を知ってもらうために募集をしたInstagramのアンバサダー。その口コミが投稿されるとすぐに拡散されて話題になったのだそうです。

「発売を開始し、1カ月後の7月にはバズり始め、本格的な夏シーズンということもあり、完売と再入荷をくり返し、同年9月には約4万本を売り上げるヒット商品となりました。商品が品薄で大変で……。一年目でここまでヒットするとは思いませんでした」

購入者の反応を聞いてみると「一番は結露しないことが良い、そして不思議だというお声が多いですね。あとは水より30%比重が低いので肩こりにもならないし、軽くて良いと言ってくれる方もいらっしゃいます」との答えが返ってきました。

二年目はターゲットを拡大、掲げた目標を達成した年に

発売して1カ月で話題になり、大ヒット作となった「アイスリング」は、一年目は子ども用とママ用だけの展開でしたが、二年目からはペット用や男性用も増やし、プロモーションやブランド化にも力を入れたのだそうです。

「二年目は、一年目の4万本から一気に10倍以上の本数を販売する目標になりました。この時点で類似品が出てくると分かっていたので、いかに『アイスリング』が本家かを伝えるために、まずはブランド化を提案して実行しました。

ロゴをキャッチーなものに刷新し、全てのクリエイティブに入れ込んでいくこと、あとはウェブサイトの作り込みや、あえて説明せずとも『この丸いのは一体なに?』という興味から『アイスリング』を知っていただけるような動画を作成しました。さらにバリエーションも増えたことから、プロモーションにも力を入れたのが二年目です」

二年目ではテレビなどで取り上げられ、その影響力の強さを実感したと話す藤井さん。どのような影響があったか聞いてみると、驚きの答えが返ってきました。

「翌日の売り上げが変動したり、私たちが目標としていたスポーツ系やフェス、キャラクターとのコラボ、ヒット商品に選ばれるなどの事柄が全部達成できたりしたんです。

スポーツ系だと、ヴィッセル神戸さんの別注商品を作らせていただいたり、『TREASURE05X(トレジャー)』というフェスで別注商品を売らせていただいたり、一年の最後には日経トレンディのヒット商品で3位に選ばれるなど、テレビの力はやっぱりすごいなって思いました」

さまざまなアクションから子どもやママに限らず、多くの人からの認知を獲得した二年目では、今までになかった購入者からの意外な使用方法も届いたのだそうです。

介護士さんからは入浴介助に使えるというお声がありました。暑くて閉めきった場所で介助対象者の体を支えながら洗うため、電気を使用できない環境だからこそ『アイスリング』が役に立っているといったお声や、アラフィフ世代からは更年期の症状のホットフラッシュの時に使えるといったこれまでのターゲット層でない方からレビューをいただけたことがうれしかったです」

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その他にもお年寄りからは体調管理や温度管理のためにも使用しているという声があったと話してくれた藤井さん。そんな幅広い年代から支持される「アイスリング」ですが、若年層への定着が今後の課題になっているのだそうです。

「若者層に話を聞くとただの便利グッズというイメージがまだあるらしく、なかなか若い世代が使ってくれる機会が少ないので、年齢性別問わず、便利グッズから夏のファッションアイテムのひとつになってくれれば良いなと思っています

3年目を迎えた今年は、SNSでのスタイリングキャンペーンやポップアップストアを去年よりも行い、「アイスリング」を冷やすための保冷バッグなどの周辺雑貨を特に強化しているF・O・インターナショナル。ヒットまでの経緯を聞いてみると、驚くべき速さで冷感グッズの新定番となったことが分かりました。課題にしている若年層への施策や今後の展開にも注目です。

(取材・文:吉川夏澄、撮影・編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部)

※この記事は2023年08月07日に公開されたものです

吉川夏澄

アパレル、スポーツジムのインストラクターをなどを経験し、現在はOLライターとしても活動中。ファッションをはじめ、コスメ、スキューバダイビング、美食、辛いもの……など幅広い興味を記事として投稿中。

instagram : kassunne67

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