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湖の絶景に癒される。「界 ポロト」で過ごす北海道1泊2日の旅

小浜みゆ

雪が解けて植物が芽吹き、動物たちも動きはじめる――そんな冬から春にかけての四季の移ろいを、都会ではなかなか感じられないですよね。

北海道・白老温泉の「界 ポロト」は湖畔に佇む大自然に囲まれた温泉旅館。ただそこにいるだけで四季を感じ、心がデトックスされるようなお宿です。絶景を見て、お肌がスベスベになる茶褐色の温泉でほっこり。働く女子の心を癒す、北海道1泊2日の旅をお届けします。

全室レイクビュー。2022年に誕生した「界 ポロト」

界 ポロトは星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」の19施設目として、2022年1月に開業した施設。全客室がポロト湖畔を見渡せるレイクビューで、ポロトの自然との一体感を堪能できます。建築やランドスケープも素晴らしく、設計を担当したのは建築家の中村拓志さん。アイヌ文化に尊敬の意を込めたデザインが見どころです。

アクセスは新千歳空港から在来線と特急に乗り、約40分で最寄りの「白老駅」に到着。白老駅からは徒歩約10分もしくはタクシーに乗り約2分で宿にたどり着きます。北海道というと遠いように感じますが車無しでスムーズに行けるので、移動の疲れを感じることはありませんでした。

 

エゾシカがお出迎え。大自然と美しい建築を堪能

おしゃれな館内は白樺が立ち並び、室内にいながらも北海道の自然を感じられる空間です。客室を含めて宿の中にある白樺は、約570本! まっすぐに伸びた同じ太さの白樺を探すことに苦労したそうです。入ってすぐの「界 ポロト」と書かれた壁はコンクリートに本物の白樺を埋め込んで固めた後に白樺を剥がし、木の跡を残したもので、素敵な発想に心が動かされます。

ウェルカムティーとして用意されていたのは北海道の自然を感じる「エント茶」とハスカップ&ラベンダーの香りがする「コロポックル」。エント茶は「邪気を遠ざける香り」として、アイヌ民族に親しまれてきたお茶です。

暖炉を中心としたロビーにはとても大きな窓があり、そこから見る景色は文字通りの絶景! ピクチャーウインドウとして、四季の移ろいを切り取ります。私も見た瞬間に「素敵すぎる……!」と声を出さずにはいられませんでした。

景色に目を奪われていると、何やら動いてるものが……なんとエゾシカが宿の敷地内に遊びに来ていました! 界 ポロトはポロト湖の延長線上にあるので、季節やタイミングによって野生の動物や鳥を見ることができます。

宿全体はアイヌ民族の集落を意味する「コタン」をイメージしており、暖炉もコタンに欠かせない要素です。アイヌ民族が火のカムイ(神様)を大切にしていることから着想を得て、火を囲みながらゲストが会話を弾ませる空間を演出しています。銅板で作られた屋根はアイヌ建築の特徴である「ケトゥンニ構造」がモチーフ。ケトゥンニとは三本の丸太を立てて三角錐状にした構造で、アイヌ民族が狩りに行く時の仮小屋を建てる時に使用されていました。

チェックインを終え、トラベルライブラリーを通って客室へ。トラベルライブラリーにはアイヌ文化や北海道に関連した書籍が並んでおり、ドリンクを自由に楽しみながら読書ができます。

飲み物はホットコーヒーのほか、ハーブティーが無料。「シラカバ×アイヌを感じる本」「コーンフラワー×北海道を旅する本」など、本を読むときにぴったりのハーブティーのペアリングが提案されています。

 

全室レイクビュー。アイヌ文化を感じるご当地部屋「□の間」

客室は2~4階にあり、「洋室」が界 ポロトのスタンダードタイプのお部屋。全客室がアイヌ民族の伝統的住居「チセ」から着想を得たご当地部屋「□の間(しかくのま)」となっており、チセの中心にある「炉」をイメージしたテーブルが置かれています。広さは約42平米。

正面には壁一面の大きな窓があり、ロビーよりも高い位置からポロト湖を眺めることができます。ソファに置かれている白樺色のクッションはアイヌ文様研究者・津田命子さんがデザインしたアイヌ文様が刺繍されています。刺繍糸はポロト湖の「水色」。ほかにも木彫りのオールアートや壁紙など、随所にアイヌ文化を感じることができる空間です。

全42室のうち3室限定の客室が「特別室」。スタンダードタイプの洋室より広々とした約71平米の客室です。ソファの上に飾られているのは、アイヌ民族が着用している織物「アットゥシ」の原材料となる木の皮が印象的なアート。アイヌ民族は木の皮を温泉やお湯に浸けて柔らかくし、糸のように使用していたそうです。

特別室は角部屋にあり、テラスと露天風呂付き。天然温泉を独り占めしながら、ポロト湖を眺める時間は至極の幸せです。ほかにも露天風呂付き客室はありますが、テラスが付いているのは特別室だけとなります。

お付き菓子として用意されていたのは、バスカップのバターサンドクッキー「イヨマンテ」。ゴロゴロ入ったハスカップの実は酸味が効いていて、濃厚なクリームと相性抜群でした。

 

茶褐色&トロトロ。珍しい「モール温泉」で癒される

界 ポロトを象徴する建物が「とんがり湯小屋」。アイヌ建築の特徴であるケトゥンニ構造が用いられており、設計者の中村さんが特にこだわった建築です。界 ポロトでは2つの場所で温泉を楽しむことができ、とんがり湯小屋にある「△湯(さんかくのゆ)」は宿泊者限定。

温泉の種類は世界的にも珍しい「モール温泉」。地層奥深くに眠る腐食した太古の植物に由来する、茶褐色のお湯です。フルボ酸やフミン酸という肌を整える成分も含まれた「美肌の湯」! トロトロとした湯ざわりとハーバルな香りで、入った瞬間に「ほかと違う」と感じられます。

湯船は内風呂と露天風呂。日中はポロト湖と青空、夜は月と星空が見え、何度も入りたくなる温泉です。

温泉に入る前に「温泉いろは」に参加すると、より効果的な温泉の入浴方法を学ぶことができます。教えてくれるのは界 ポロトの湯守り。アイヌ文化や白老の自然についても触れ、より深みのある滞在になりますよ。参加は無料です。

 

魔を遠ざける植物「イケマ」でお守りづくり

アイヌ文化を体験できる無料のアクティビティがご当地楽「イケマと花香の魔除けづくり」。独特な香りがすることからアイヌ民族が「魔を遠ざける」と考えている植物「イケマ」と北海道のハーブを使って魔除けを作ります。「最近良いことないかも……」なんて人にもぴったりです。色とりどりのハーブも可愛らしく、アイヌ文化を楽しく学ぶことができました。

 

毛蟹、帆立貝、鮭……北海道の恵みを大満喫する夕食

お楽しみの夕食は「毛蟹と帆立貝の醍醐鍋会席」。この日は先付けから甘味までの計8品で、新鮮な魚介や北海道らしい食材を用いた料理をたっぷりと堪能できました。器も見事で、「宝楽盛り」はアイヌ民族の伝統的な丸木船をイメージした器で登場!

台の物は「毛蟹と帆立貝の醍醐鍋」。たっぷりの毛蟹の身、帆立貝、鮭をブイヤベース仕立てでいただくお鍋です。北海道らしい海鮮の旨みがギュギュっと詰め込まれており、スープも具材も絶品。十勝産ナチュラルチーズをかけていただく締めのリゾットはとても濃厚で、余すことなく北海道の恵みを味わうことができました。

 

作り手に感謝。夜限定のバーで北海道のお酒に舌鼓

1日の終わりに訪れたのは「ケトゥンニBAR」。火を囲みながら北海道で造られたお酒を味わう予約制のバーです。このバーはアイヌ民族の風習に倣って、作り手に感謝を込めてお酒を楽しむのが特徴。アイヌ民族はあらゆるものに魂が宿ると考え、食べる時や温泉に入る時など感謝の祈りを捧げています。今回私が選んだのはニセコ蒸留所の「ohoro(オホロ)ジン」。北海道産のハーブが入っており、ボタニカルな香りに心が安らぎました。

 

丹頂鶴のようにはばたく! ユニークな体操から1日をスタート

翌朝は7:00から行われる「丹頂鶴のはばたき体操」に参加。冬の時期、ポロト湖に現れる丹頂鶴をイメージした動きを取り入れたユニークな体操です。最初は呼吸を整えながらストレッチ。そして丹頂鶴がはばたくように大きく腕を振ったり、スキップしたりと体を動かします。とんがり湯小屋で行われるので、楽しく体操した後はそのまま温泉に入ることもできますよ。

 

北海道の王道食材「じゃがいも」を使ったスープも。おいしい朝食

体操とあつ湯でシャキッと身体を目覚めさせた後は、朝食の時間です。昆布醤油をかけていただく自家製豆腐、いくら醤油漬け、鮭節ふりかけ、ルバーブジャムの自家製ヨーグルトなど、目移りする料理がずらり! 「鮭とじゃがいものすり流し鍋」は白味噌で仕立てた和のスープ。途中で北海道産バターを加えるとコクが加わって洋風に変わり、その変化も楽しめました。

 

アイヌ文化を体感できるプログラムが楽しい! ウポポイ観光

12:00にのんびりチェックアウトした後は、隣接する「ウポポイ(民族共生象徴空間)」へ。東京ドーム2個分の敷地に博物館や体験施設が点在し、アイヌ文化について学ぶことができます。入場料は大人1,200円。

とても広い敷居なのでどうやってまわるか迷いますが、最初に「国立アイヌ民族博物館」でシアタープログラム 「アイヌの歴史と文化」を見るのがおすすめ。わかりやすい解説になっており、プログラム鑑賞後に展示を見ると、より深く理解できます!

ウポポイで見逃せないプログラムの一つが、最大303人も入場できる体験交流ホールで行われる伝統芸能上演「シノッ」。白老、阿寒、帯広など各地域独自の演目を映像美とともに楽しめます。内容は開催時間によって変わり、私は帯広に伝わる「フッタレ チュイ(トドマツの踊り)」や小さな弁の音を口の中で響かせて鳴らす口琴「ムックリ」の演奏などを鑑賞。フッタレ チュイ(トドマツの踊り)は黒髪の女性が激しく頭を振る、圧巻の踊りです! 嵐の日に松の木が風に揺れている情景を表していると言われています。

界 ポロトの客室がイメージしている伝統的住居「チセ」を再現した建物も「伝統的コタン」のエリアで見学できます。囲炉裏に座っているのは、アイヌ民族の伝統的な正装に身を包んだスタッフ。楽しく会話しながら、アイヌ民族の衣食住について教えてくれます。


一押しプログラムが体験学習館で開催している調理体験「ポントキッチン」。約30分でアイヌ民族に伝わる料理を作り、味わえる体験です。この日のメニューは「コンブシト」。シトとはお団子のことで、狩猟を中心としていたアイヌ民族にとって本州との交易で得られるもち米はとても貴重なものでした。その米やアワ、ヒエなどの穀物を使って作るお団子は、儀式などで食べるごちそうだったそうです。タレは油で揚げてある昆布を砕き、砂糖と塩で甘辛く味付け。昆布がよく採れる日高地方のアイヌ民族の伝承者の方が教えてくれたレシピはとてもおいしく、楽しく文化を体感できました!

・ウポポイ(民族共生象徴空間)
住所:北海道白老郡白老町若草町2丁目3
HP:https://ainu-upopoy.jp/

アイヌ民族の伝統に触れながら、自然あふれる空間と温泉で癒しの時を過ごせる「界 ポロト」。宿泊料金は1人あたり31,000円~(2名1室利用時、朝夕食付き)。隣接するウポポイでの観光も楽しめ、女子旅でも、一人旅でもおすすめの旅先です。これからの季節は新緑が美しく広がるグリーンシーズンとなります。季節の移ろいを感じるポロト湖でリフレッシュして、仕事の活力を養ってみては?

・界 ポロト
住所:北海道白老郡白老町若草町1-1018-94
HP:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiporoto/

(撮影・取材・文:小浜みゆ)

※この記事は2023年04月14日に公開されたものです

小浜みゆ

神奈川県在住の旅ライター。旅が大好きなのでフットワークは軽く、国内・海外の素敵な場所を求めてどこへでも。得意ジャンルはホテル・リゾート・美容。写真にこだわります。

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