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空前の『silent』ブームに沸いた3ヶ月。私たちをここまで夢中にさせた“その理由”

【特集】とっておきの、冬ごもり。

明日菜子

放送されるたび見逃しサイトの再生回数は記録を塗りかえ、Twitterでは世界トレンドを何度も獲得した話題のドラマ『silent』。なぜこんなにもヒットしたのか、その理由をドラマ大好きライターの明日菜子さんが語ります。

物語をスムーズに届ける演出。“ハンバーグ”に込められた思い

©フジテレビ

視聴者を置いてけぼりにしない分かりやすい演出も好印象。これはストーリーにも当てはまることだが、人の複雑な心の“揺らぎ”を描いているにも関わらず、見ているこちら側に「?」を残さない。かといって、登場人物たちに不粋な説明をさせることもなく、物語をスムーズに届けているのである。

例えば、たびたび登場する紬の好物“ハンバーグ”。ブラック企業で働いていた頃の紬(第3話)が、無理に頼まれた仕事を片づけるために駆け込んだファミレスで頼んだメニューも、ハンバーグだった。誰にも言えなかった会社への辛さを湊斗に打ち明けた紬は、蓄積していたものを吐き出し、その隙間を満たすようにハンバーグを食べる。結局食べきれないまま湊斗に預けてしまうのだが、この夜を境に、二人は距離を縮めていく。ハンバーグは湊斗との思い出の味でもあり、湊斗にとっては、紬が紬らしく生きていることの象徴でもあったのだ。

湊斗にフラれた後、紬が作っていたのもハンバーグだった(第5話)。紬と一緒に住む“湊斗過激派”の弟・光(板垣李光人)に「湊斗くん呼ぼうか?」と言われるくらい、二人分にしてはちょっと多めの材料をネコ形に捏ねていた紬。しかし、湊斗からの電話で改めてお互いの気持ちを話した後、手のひらサイズのネコはパンダになり、二人で食べきれるくらいのハンバーグになった。

©フジテレビ

ハンバーグの作り置きをしなかったこと、翌日に想と会った時に「ハンバーグ以外のものが食べたい」と伝えたことから、紬なりに湊斗から巣立とうとしていたのではないかと思う。わざわざ二日連続で同じものを食べたくないからでは……と受け取った人もいるが、あの瞬間の紬に少しでも湊斗のことを思っていてほしいと、願わずにはいられなかった。

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