目的はなんでもいい。『パッドマン』が教える“働くことのありがたさ”
映画のなかにはいろいろな人生が存在し、自分では経験することができない世界がたくさんあります。そんなめくるめく映画の世界を、映画好きイラストレーターのトモマツユキさんが紹介。金曜夜は、映画の世界にトリップして、非日常を体験してみてはいかがでしょうか?
あけましておめでとうございます。イラストレーターのトモマツユキです。本年もどうぞよろしくお願いいたします!
年末年始のお休みが終わってしまい、また仕事に追われる毎日。なかなかお正月気分が抜けず、やる気も出ないですよね。
でも、そんな気持ちとは裏腹に仕事はどんどん溜まっていく一方。どうにかしてやる気を出さなければ……!
そんな時、私は“インド映画”を観て、無理やり気分を上げています!
インド映画といえば、“ずっと歌って踊り続けている映画”というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、最近は歌や踊りの要素が控えめで、ミュージカルが苦手な方でも観やすい作品も増えてきています♪
日本で公開されたインド映画は、貧困や格差社会など、大きな困難に立ち向かう物語が多いのですが、とにかく明るい登場人物が多く、メッセージが直球で、心に響く作品ばかりなので、きっと頑張る気持ちを分けてもらえるはず!
今回はそんなインド映画の中から、新年早々、仕事のモチベーションが上がらない時に観てほしい映画『パッドマン』を紹介します!
インドの発明家の実話を基にしたサクセスストーリー
映画『パッドマン』は、インド人の発明家・社会起業家のアルナーチャラム・ムルガナンダム氏の実話を基に作られたお話です。
アルナーチャラムさんをモデルにした、主人公・ラクシュミは、なんと“生理用品”の普及のために人生の全てをささげた男!
インドの小さな村では男女格差が大きく、日本とは比べ物にならないくらい男性の前で「生理」について話すことは“タブー”とされています。さらに生理の期間、女性は家の外で眠り、学校も休まなくてはいけない……ということを、私はこの映画で初めて知り、とても驚きました。
そんな状況で、男性が生理用品を作るなんて、想像するだけで困難しかありませんよね。
失敗しても、否定されても、何度も立ち上がるインドのヒーロー“パッドマン”
さて、映画『パッドマン』のストーリーをご紹介します。
インドの小さな村で、慎ましいけれど幸せな新婚生活を送るラクシュミ(アクシャイ・クマール)は、妻・ガヤトリ(ラーディカー・アープテー)が、生理用品として、汚い布を洗って何度も使用していることに気づきます。
このまま不衛生な布を使い続けたら、ガヤトリが病気になってしまうと考え、薬局でナプキンを買ってプレゼントするのですが、村では高価なナプキンを使用している女性はほとんどおらず、ガヤトリはナプキンを受け取ってくれません。
高価なナプキンがダメなら、“お手製ナプキン”を作れば良い! と、ひらめくのですが、今まで生理のことを全然知らなかったラクシュミは失敗ばかり。
妹や村の女性にも“お手製ナプキン”を使ってもらって使用感を確かめようとするのですが、村では男性が生理の話をするのはタブー。ましてやナプキンを配るなんて“奇行”でしかありません!
ついにラクシュミは、ガヤトリが実家に連れ戻されるほどのハプニングを起こしてしまい、村を出て行かざるをえなくなります。
それでも諦めなかったラクシュミが、何度失敗しても、どれだけ周りに否定されても立ち上がり、妻だけでなく、インド全土の女性たちを救うヒーローになる物語です!
あらすじだけ読むと少し重そうなお話に思えますが、ラクシュミの底抜けに明るい性格と、打たれ強さと、諦めの悪さは、きっと観ただけで「自分も頑張ろう!」と思えるはず♪
働けることのありがたさを改めて感じる映画
この物語は“生理用ナプキン”を作るお話ですが、“仕事”そのものを作る物語でもあります。
中盤以降の展開を少しだけお話しますが、ついにナプキンを完成させたラクシュミですが、女性は無料でも生理用品をもらってくれません。
しかし、ラクシュミの熱意に心を動かされた都会育ちの女性・パリー(ソーナム・カプール)が手伝ってくれることになり、ナプキンをあっという間に配り終え、お金をくれる人まで現れます。
そしてラクシュミは機械作りに専念して、村に住む仕事がない女性たちに、ナプキンの製造と販売の仕事を手伝ってもらいます。
ラクシュミは発明の天才だけど、ナプキンを売ることはできなかった。村の女性たちは発明はできないけど、ナプキンを売ることはできる。
誰でも得手不得手があるもの。助け合うことで“仕事”ができるこのシーンが、私はとても好きで何度観ても胸が熱くなります……!
ふいに、なんのために働いてるんだろう……なんて考えてしまう時もありますが、この映画を観ると、働くことのありがたさを改めて感じることができます。
ここまであらすじを知っていても楽しめる映画ですし、ラストのスピーチがとにかく素晴らしいので、ぜひ一度は観てほしい映画です!
働く目的はなんでもいい!
この映画は壮大な物語のようにみえますが、ラクシュミは生理用ナプキンを作って世の中を良くしたかったわけではなく、ただ、妻に衛生的なナプキンを使ってほしかっただけなんですよね! 目的を忘れずに突き進んだからこそ、より大きな目的を果たすことができたのだと思います。
誰かのためや、世の中のために頑張れたら、それはとても素敵ですが、私はラクシュミのような大層なことをしようとして無理する必要はないと思います。
給料で欲しかった洋服を買ったり、旅行したり、推し活のために仕事を頑張ったって良いじゃないですか(笑)!
なんのために働いているのかを忘れてしまうとモチベーションはすぐに下がってしまいます……。新年なので、映画を見終えたら、気持ちを新たに今年の目標を立ててみてはいかがでしょうか?
(文・イラスト:トモマツユキ)
※この記事は2022年01月07日に公開されたものです