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「ご武運を祈る」とは? 本来の意味と注意点(例文付き)

松岡友子(コミュニケーションマナーアドバイザー)

「ご武運を」の使い方

「ご武運を」という言葉は、かつての日本において、戦(いくさ)に向かう武士や戦争へ向かう兵士の、出陣の際に使われていました。

映画やアニメの中では、例えば夫や息子が戦地へ出陣していく時に「ご武運をお祈りしています。どうぞご無事でお帰りください」と妻や母親が声を掛けます。

そして戦で負けると、「武運つたなく敗れた」と言って嘆き悲しむのです。

また、「武運長久」については、出征する兵士の壮行会などで、「○○君の武運長久を祈って、万歳三唱!」と、若者を戦地へ送り出す時に使われていたようです。

「ご武運を」を使う上での注意点

正直に言うと、筆者は「ご武運を」という言葉を実生活で使ったことはありません。この言葉は、アニメやマンガを含む、時代劇や戦争映画の中でしか聞いたことがないのです。

そこで、周囲の人々に「ご武運を」についてリサーチしてみました。

まず、学生たちに聞いたところ『鬼滅の刃』や戦闘系ゲームで使われているので「ご武運を」という言葉は知っているという声があり、中には就活面接に向かう友人に言うことがあると教えてくれた学生もいました。

一方、ビジネスパーソンに聞いてみたところ、全員が即座に「使わない」「聞いたことがない」との答えでした。

そして、例えば自分が大切なプレゼンに向かう時、部下に「ご武運を」と言われたらどう思うかと聞いてみたところ、「なんでそんな言葉を使うのかと思う」「言葉の使い方を知らないのかと思う」という意見が多くありました。

中には「よほど戦闘系ゲームが好きなのだなと考えて一応理解に努める」と話してくれた人もいました。

ここで私たちが考えなければならないのは、この「ご武運を」という言葉が、本来は武士・軍人・戦場という、戦争のない平和な現代日本に住む私たちとは、およそ縁のない人々やシーンに向けられる言葉であるということです。

もちろん就活生やビジネスパーソンにとって、面接やプレゼンの場がある種の戦いであるということも分かります。

ですが、面接やプレゼンに失敗しても、その場で相手に命を奪われることはありません。そこは戦争の場ではなく、競いの場です。

本来「ご武運を」という言葉は、比喩としてではなく、殺さなければ殺され、負けはすなわち死を意味する、そんな戦場へ赴く人に掛けるとても重い言葉なのです。

「ご武運を」という言葉の本来の意味や使われた方が、現代日本においては経験することのない、壮絶で悲壮なものであることを理解すれば、軽々しく使うべき言葉ではないということが分かります。

少なくとも、上司年代の方たちは使わない言葉であると言って差し支えないでしょう。

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