初心者でも簡単! 料理研究家・和田明日香の運命を変えた「キッチンツール」
何気ない出会いが、自分の運命を変えることだってある。さまざまな分野で活躍する著名人・ライターの皆さんが、今までの人生において自分の運命を変えた“モノ”を紹介。それにまつわるエピソードや想いを語っていただく特集です。
取材・文:於ありさ
撮影:洞澤佐智子
編集:高橋千里
テレビ番組『家事ヤロウ!!!』で、料理が苦手な芸能人に料理をレクチャーする企画「和田塾」を担当している、食育インストラクターの和田明日香さん。
料理愛好家の「平野レミ」を義母に持つ彼女は、今でこそ料理を職業としているが、実は結婚するまで、料理の経験はほぼゼロ。「食べることは好きだったけど、調理器具なんて1つも持っていませんでした」と、はにかみながら当時のことを振り返ってくれました。
そんな和田さんにとって料理は習慣となり、意識を変え、職業になった、まさに”運命を変えた”物。料理経験ゼロだった彼女は、いかにして料理の世界に惹きつけられたのか。運命を変えたキッチンツールとの出会いや、料理や食事へのスタンスなどを交えながら、運命の出会いについて語ってもらいました。
料理経験ゼロでも使えた超便利ツール
――和田さんが料理を始めたのはいつからですか?
結婚してからですね。結婚するまでは実家に住んでいたこともあって、ほとんどしたことがありませんでした。調理器具は持ってないし、スーパーに行くのもお母さんの買い物について行くだけ。
――なるほど! 結婚を機に料理をしようと思ったのは、何か理由があったのでしょうか?
いえ。正直、結婚する時は家事に対する意識はほとんどありませんでした。ただ、夫が外で働いている間、私は家にいたので「できる人がやればいいや」と思って、やってみたんです。
――ほう……。実際、料理をしてみていかがでしたか?
自分が作ったものがおいしいかは分からなかったですし、「こんなの食べさせられない」って思って捨てたことは何度もあります。ただ、意外とやってみたら楽しかったですね。
――料理を嫌いになりかねないエピソードですけど、「やりたくない」とは思わなかったのでしょうか?
幸いにも、夫から否定されるようなことは1回もなかったんですよね。何を出しても「おいしい」って食べてくれました。
だから、プレッシャーを感じることもなく、夫が持っていたお義母さん(平野レミ)の本を見て、いろいろ作ってみてました。その時に「レミパン」に出会ったんですよね。
――レミパンって平野レミさんが開発しているフライパンですよね? 私の周りでも使っている人が多いのですが、どんなところが魅力なのでしょうか?
どんな料理にでも使えるし、軽いので初心者に優しいんですよ。だから、料理をしている時にストレスを感じることが少ないんです。
もし料理をし始めた頃に、レミパンじゃない調理器具を使って「重いな」とか「不便だな」とつらい思いをしていたら、続けられなかったんじゃないかな。
――つらいとか、やらなきゃという思いが強すぎると何事も続かないですもんね。
そうそう! 振り返ってみると、私が料理を始めた当初楽しいと思えたのって「この間よりもおいしくできた」とか、「30分で作れるようになった」とか小さな成長を実感することが多かったからだと思うんですよ。やればやるほど、上達していると思えることが楽しかったんですよね。
料理をするようになって感じた素材選びの重要さ
――料理をするようになって、和田さん自身にはどのような変化がありましたか?
体って食べるもので作られるんだなと実感するようになって、意識も行動も変わりましたね。子どもに食べさせる物ということで、無農薬野菜に関心を持つようになりました。
それに、食育の資格を取る時にフードロスの問題を知って、自分にできることを考えるようにもなりましたね。
――なるほど。日頃から食品選びをこだわっているとは思うのですが、特に「運命を変えた食品」があれば教えてください。
カナモト食品の「こだわりキムチ」ですかね? 私、昔からキムチが好きだったんですけど、家で食べるキムチってあんまりしっくりくる物がなくて。
でも、これに出会った時に「やっと出会えた」って感動したのを覚えています。おいしいのはもちろんですけど、全部国産ですし、白菜も契約農場の物で、甘味料や増粘剤も一切入っていない。体に優しくて、おいしいキムチに出会えるなんてってすごくうれしくなって、ずっと使い続けています。
――そんなキムチがあるんですね! 気になる……。
素材の甘みだけでドレッシング代わりにできるし、納豆ご飯に乗せても、スープや炒め物に入れてもおいしいので本当におすすめですよ。
あと、最近出会った日東醸造の「三河白だし」もお気に入りです! これも人工的な物が入っていなくて、原材料を見ても自然な物だけなんですよ。
――えー! どういうふうに使うんですか?
カブを切って浅漬けみたいにすることもあれば、煮物に使ったり、カルパッチョを作ったり……何にでも使えますね! これに出会ってから「出汁を取らずに、味の底上げができるって、なんて楽なんだ」って重宝しています。
めんどくさい日は「時短」でOK!
――お話を聞いていても、普段から食べ物の素材に気を使っているのだなということが伝わりました。和田さん自身の、食育ポイントがあればお伺いしたいです。
うーん……。あんまりガチガチに「あれもだめ、これもだめ」とは言わないようにしていますね。我が家では金曜日の夜は、家族全員で外に食べに行くって決めているのですが、そこでは何を食べても良しとしています。
――へー! それはなぜですか?
ルールで縛りすぎて、食べることそのものが嫌いになったり、私に隠れてこっそり食べたりしたら意味ないなと思って。
だから私、子どもが苦手な物を残してても「食べなさい」じゃなくて、「え? 残すの? おいしいのに! じゃあ、もらっちゃうね! あーおいしい」ってコミュニケーションするようにしていますね。
――矯正されると余計嫌になることってありますもんね。
それにね、今どれだけ縛っても、中学生、高校生になったら学校の帰りに好きな物を食べちゃうでしょうからね。だから、家で出す食事を私が気を付けるだけで良いのかなって。
――食育って勝手にハードルの高い物として考えてしまっていたんですけど、和田さんの話を聞いて「それくらいで良いんだ」ってちょっと身近に思えました。
それはうれしい! もともと料理経験ゼロだったけど、今、料理が好きで研究していて、伝えている。こんな私だからできる「完璧すぎない料理」を発信をしたいと思っているのでね。
――完璧すぎない料理……詳しく教えてください。
苦しいくらいだったらサボるのも大事だと思うんですよ。「あー今日は時間がない」っていう日だって当然あるんだから、毎日完璧じゃなくても良いと思うんです。1週間、10日間で見た時にバランスを取れていたらOK! そんなに構えなくても良いんですよ。
――なるほど。そうやって聞いたら自炊のハードルがぐっと下がりました!
よく、イベントを開催すると「バランスが良い食事を食べさせたい」とか、「子どもの好き嫌いを無くしたい」と相談を受けるんですけど、「そう思っているだけで偉い! 100点!」って思うんですよね。料理も食べることも楽しむのが大切。だから、あまり肩肘張らずにいてほしいなと思います。
「運命の出会い」を引き寄せるコツは、オープンでいること
――お話を聞いて、料理や食育へのハードルがぐっと下がりました。最後に、和田さんは料理を通して運命が変わったと思うのですが、「運命の出会い」を引き寄せるコツがあれば教えてください!
好きな物や、好きな事ばかりを追求するんじゃなくて、何事に対しても柔軟に、オープンでいることですかね。
――なぜそう思うんですか?
今振り返ると、結婚するまで料理経験がなかったことって、「できない」んじゃなくて「やらず嫌い」だっただけなんですよね。だから、もし頑なに「やらない」って決めていたら、今みたいに毎日料理をすることも、職業にすることもなかったと思うんです。
――なるほど。
だから「自分ってこういう人だから」って決めるのもかっこいいけど、決めつけすぎなくても良いんじゃないかなって。
普段からアンテナを張っておく必要はないけど、閉ざさないことで舞い込んできた意外な物や出来事が、グサッと刺ったりする時ってあると思うんです。それが運命を変える可能性はありますからね。
――「運命を変える」って聞くとすごく大それたことのように感じますが、意外と身近な事がきっかけになることもありそうですね。ありがとうございました。
和田明日香 著:和田明日香のほったらかしレシピ 献立編(タツミムック)
和田明日香(料理研究家・食育インストラクター)
料理愛好家・平野レミの次男と結婚後、修行を重ね、食育インストラクターの資格を取得。各メディアでのオリジナルレシピを紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての
活動のほか、各地での講演会、コラム執筆、CM出演など、幅広く活動する。2018年、ベストマザー賞を受賞。
※この記事は2021年03月10日に公開されたものです