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「拝受」の意味。「拝受いたしました」は正しい使い方?

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「拝受いたしました」は二重敬語ではない?

さて、日頃から敬語の用法に気を付けている人は、ここで、ちょっと気になることはありませんか?

それは、「二重敬語」についてです。通常、敬語の用法では、一つの語に対して同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」と定義しています。

例えば、「ご覧になられる」は、既に「ご覧になる」だけで「見る」の尊敬語ですが、さらに尊敬語の「られる」を重ねており、二重敬語です。こうした用法は、一般的には過剰な表現だとされています。

そして、「拝受いたしました」も「拝受」だけで既に謙譲語であるところに、さらに「いたしました」と謙譲語を重ねているので、「二重敬語になってしまうのでは?」と疑問に思う人がいるかもしれません。

しかし、「拝受いたしました」は二重敬語ではありません。その理由を説明します。

異なる種類の敬語から成り立っているので二重敬語ではない

「拝受いたしました」の原形は、「拝受する」という動詞で、これは謙譲語Ⅰ(※)に当たります。

そこから、「拝受する」の「する」を「いたす」に変化させると、「いたす」の部分は謙譲語Ⅱ(※)に当たります。

さらに、「拝受いたす」に丁寧語の「ます」を加え、「た」を加えて過去形に変化させたものです。

したがって、「謙譲語Ⅰ+謙譲語Ⅱ+丁寧語」という異なる敬語がつなげられた形となり、二重敬語の定義にはあてはまらないというわけです。

「拝受」と同様に、「拝」の付く単語を使った「拝見」「拝聴」「拝読」などについても同じように捉えることができます。

もちろん、「拝受しました」や「拝見しました」でも謙譲語として成立します。十分な敬意を表しつつも、すっきりした印象を与えることができるでしょう。

※「謙譲語Ⅰ」とは、自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて、その向かう先の人物を立てて述べるもの。「謙譲語Ⅱ」は、自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。(「敬語の指針」P15~20より)

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