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「いただけますでしょうか」は誤用? 言い換え表現を解説

井上明美(ビジネスマナー・敬語講師)

「いただけますでしょうか」は誤用なの?

冒頭でも触れた通り、「いただけますでしょうか」は、よく「間違いではないか? 二重敬語ではないか?」と迷ってしまったり、時に問題になってしまったりするようです。

果たしてどうなのか、解説していきます。

「いただけますでしょうか」は間違った表現ではない

問題になる点はおそらく、「~いただけますでしょうか」の「ます」と「でしょう」が、「丁寧語が二重に用いられている誤用」と思うからではないでしょうか。

では、「いただけますでしょうか」の言葉の構成と辞書の解説を見てみましょう。

・「いただけ」:基本形は「いただく」。「もらう」の謙譲語は「いただく」ですから、「(私は○○さんに)~てもらう」の意の謙譲語

・「ます」:丁寧語

・「でしょうか」:丁寧語「だろう」+質問や疑問・依頼の意を表す終助詞「か」=[連語]「だろうか」の丁寧な表現

となります。

ですから、「ます」と「でしょうか」は、たしかに両者は丁寧語ではありますが、一つの言葉について敬語を二重に用いてしまっているものではなく、「ます」に「だろうか」を添えた表現です。

『デジタル大辞泉』の解説にも「いつ私がそんなことを言いましたでしょうか」という例も記載されており、通常使われている問題のない形であることがうかがえます。

「でしょうか」は「だろうか」「ですか」よりも丁寧な言い方

では、「でしょうか」のみをもう少し詳しく見てみますと、辞書では以下のような表記があります。

「でしょうか」とは
[連語]「だろうか」の丁寧な表現。

1 不明・不確かなことを問い掛ける意を表す。「今、何時でしょうか」「あの方が先生でしょうか」

2 婉曲に反論する意を表す。「いつ私がそんなことを言いましたでしょうか」
(小学館『デジタル大辞泉』)

でしょうか
( 連語 )
〔連語「でしょう」に終助詞「か」の付いたもの〕

未来のことや不確定なことについての疑問・質問の意を表す。 「明日うかがってもよろしい―」 「お客様は何人―」 〔「だろうか」 「ですか」よりも丁寧な言い方〕
(三省堂『大辞林 第三版』)

このことから、「でしょうか」は、疑問や質問、問い掛けなどの意を表し、「だろうか」「ですか」よりも丁寧な言い方であり、遠回しな表現であることが分かります。

なぜ「いただけますでしょうか」が用いられるのか

「いただけますでしょうか」は、言葉の形として問題がないと紹介しましたが、言葉は使い方や捉え方に個人差もあるものです。

「いただけますでしょうか」は、「いただく」「ます」「でしょうか」がつながった形であり、さらに詳しく分析しますと「でしょうか」は婉曲(遠回し)な意味も表します。

「いただけますか」だけでも正しい敬語の形ですから、これで十分と感じる人もあり、その点が個人の印象・捉え方の違いでしょう。

言葉は必ずしも長くすればいいというわけではありませんが、長い方がより丁寧な印象を与えるということはあります。

「いただけますでしょうか」はその点から言えば、それぞれの語を敬語にしてつなげた形ですから、言葉全体として長い形となり敬意の度合いも増す表現になります。

まとめますと、「いただけますでしょうか」は、それぞれを敬語にした上で「でしょうか」が付くことで、より婉曲に相手の気持ちや都合を尋ねる意味が強まり丁寧さが加わる表現です。

これが「いただけますでしょうか」という表現が用いられる理由の一つでしょう。

次ページ:「いただけますでしょうか」の言い換え表現

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