使う場面で変わる!? 「イニシアティブ」の意味
皆さんは「イニシアティブ(イニシアチブ)」の意味を知っていますか? 意味を理解しないまま使っていると恥をかくことがあるかもしれません。そこで、今回はコミュニケーション研究家の藤田尚弓さんに、「イニシアティブ」の意味や類義語・対義語、シーン別の使い方について詳しく聞いてみました。
ビジネスシーン。特に、マーケティング領域や経営戦略などで頻繁に使われる「イニシアティブ」。最近では、人の行動について話す時などにも使われるようになってきました。
業種によっては耳にする機会が少ないので、ぼんやりとしか意味が分からないという人も多いと思います。
イニシアティブとは、一体どういう意味なのか。言い換える場合におすすめの言葉や、具体的な使用例などを紹介しながら解説します。この機会に確認しておきましょう。
「イニシアティブ」とは
まずは、「イニシアティブ」の意味から見ていきましょう。
英語「initiative」が語源
イニシアティブの語源は、英語の「initiative」で、「イニシアチブ」とも言われることがあります。直訳は主に以下の3つに分類されます。
1つ目は、日本での使われ方に近い「主導権」という意味合い。2つ目は、問題解決をする時の「新たな取り組み」「構想」という意味。そして、3つ目は、「やる気」「自発性」「率先して行う」といった意味で使われるケースです。
日本の場合は、英語の「initiative」に比べると、限定した意味合いで使われています。具体的に見ていきましょう。
日本で使われる「イニシアティブ」の意味
日本では、「イニシアティブ」を「主導権」といった意味で使うことが多いです。
主にビジネスシーンで使われますが、スポーツやゲームなどの競技で使われることもありますし、稀ではありますが政治用語として使われることもあります。
業界によっては聞き慣れないと感じる人もいますので、プライベートでは使わない方が無難です。日常会話や雑談では、次に紹介する類義語を使った方が相手に伝わりやすいでしょう。
「イニシアティブ」の類義語
イニシアティブという言葉を言い換えるのであれば、以下のような類義語を使うといいでしょう。
主導権
先ほどもお伝えしたように、日本語の言い換えで最も近いのは「主導権」です。
イニシアティブを取る→「主導権を取る」、イニシアティブを発揮する→「主導権を発揮する」といった要領で言い換えることができます。比較的広い意味で使えるので、便利な類義語です。
リーダーシップ
似たような言葉で「リーダーシップ」というのもあります。
「主導権」は1対1のシーンで使用する印象ですが、「リーダーシップ」は1対複数に対して使用する印象が強いです。
積極的
人の性格や特性について使うのであれば、「積極的」を使うのもよいでしょう。例えば、「彼女は同期の中でもイニシアティブを取る人材だ」などのようにも使えます。
「イニシアティブ」の対義語
イニシアティブの対義語を、実際に使うシーンは少ないかも知れません。しかし、対義語を知っておくことで、イニシアティブの意味や使い方が、より明確になります。
この機会に確認しておきましょう。
追随
イニシアティブの対義語としては、後を追うという意味である「追随」が挙げられます。
追随には、後を追うという意味の他に「従う」といったニュアンスも含まれています。積極的にリーダーシップを取っていく人に対して、後から従っていくようなイメージをすると分かりやすいでしょう。
フォロワーシップ
従うニュアンスをさらに強くしたのが「フォロワーシップ」です。
フォロワーシップは、従うといっても指示待ちのようなネガティブな意味合いではなく、補佐をして組織に貢献するような、ポジティブな意味合いで使われる言葉です。リーダーシップと対にして覚えておくとよいでしょう。
消極的
類義語の反対にはなりますが、人の性格や特性について使うのであれば、「消極的」も対義語といえます。
ただし、この表現にはややネガティブな響きがありますので、ポジティブな場面で使いたい場合には「控えめ」「人を立てる」といった言葉に言い換えた方がよいでしょう。
シーン別「イニシアティブ」の使用例
では最後に、さまざまなシーンでの「イニシアティブ」の使用例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの「イニシアティブ」
ビジネスシーンでの「イニシアティブ」は、マーケティングや経営戦略領域の他、会議や朝礼など方針を伝えるようなケースでもよく使われます。
主導権を取りたい、リーダーシップを発揮したい、積極的にやっていきたいといったニュアンスだと思っておけば理解しやすいと思います。実際の例文を見てみましょう。
【例文】
「業界でイニシアティブを取っていくことが今期の課題だ」。
「○○課長は、長きにわたり営業1課でイニシアティブを発揮し……」。
スポーツやゲームでの「イニシアティブ」
スポーツやゲームでは、流れを制している側、積極的に攻めている側に対してイニシアティブを使うことがあります。
【例文】
「1セット目、日本はイニシアティブを取れなかった」。
「相手チームにイニシアティブを取られたまま終わってしまった」
政治での「イニシアティブ」
政治の文脈で使われる場合、イニシアティブは「国民発案」「住民発案」という意味合いで使われることがあります。
普段の会話ではなかなか登場回数の少ないケースかも知れませんが、知っておくといざという時に混乱しなくても済みます。
【例文】
「イニシアティブ(国民発案、住民発案)があるのだから、改正を発案すればいいじゃないか」
「直接民主制ではイニシアティブ(国民発案)は重要かも知れないけど」
ビジネスシーンで活用しよう!
イニシアティブという表現は、ビジネスシーンでかなり使われているカタカナ語の1つだと思います。マーケティングといった職種の人や経営戦略に携わる人はよく使う言葉ですし、意味が分からないと恥ずかしい思いをすることもあるかも知れません。
しかし、カタカナ語が伝わらないこともまだまだあります。特に、プライベートシーンでは、日本語の「主導権」に言い換えると覚えておくとよいでしょう。
文脈によって意味が変わってくるので、ざっくりと大きなイメージをつかんだ上で、文脈に合わせて解釈すると間違いが少なくなります。
(藤田 尚弓)
※画像はイメージです
※この記事は2020年10月29日に公開されたものです