ビジネスメールの締めの言葉は、「よろしくお願いいたします」とワンパターンになりがち。
感情が伝わりにくいビジネスメールでのコミュニケーションは、締めの言葉を工夫することで信頼関係が深まるきっかけにもなっていきます。
ここでは、「締め・結びの言葉」の基本の書き方や、状況に合わせた具体例などをいくつかご紹介します。
■なぜビジネスメールに「締め・結びの言葉」が必要なのか
メールの締め・結びの言葉は、なぜ大事なのでしょう。
メールではあいさつ言葉である「拝啓」「敬具」などの礼儀を省略しますので、その代わりになる言葉が必要になります。用件だけで終わると、素っ気なく、何かが足りない印象を相手に与えるからです。
締め・結びの言葉が相手との関係性や状況に合っていることで、メール全体の体裁が整いますし、丁寧に仕事を進めていることや相手への配慮が伝わるのです。
■ビジネスメール「締め・結び言葉」の基本マナーと使い方
ここでは、締め・結びの言葉の基本マナーを紹介していきます。
◇(1)相手や内容に合った言葉を使う
例えば、親しい間柄でのちょっとしたやり取りなのに、「今後とも何卒よろしくお願いいたします」と丁寧すぎる締めくくりは違和感を与えます。
取引先、上司、同僚など送る相手によって適切な言葉を選びましょう。
☆例文
・同僚→「よろしくお願いします」「ご検討ください」
・取引先や上司→「どうぞよろしくお願いいたします」「ご検討お願いいたします」
社内外を問わず、取締役など役職が高い相手や、より丁寧に伝えた方が良い相手に対しては、「何卒よろしくお願い申し上げます」「何卒ご検討いただけますと幸いです」と表現すると良いでしょう。
◇(2)冒頭の言葉とバランスをそろえる
冒頭が丁寧なのに締めくくりが軽い、逆に冒頭が軽くて締めくくりが丁寧、というようにチグハグにならないようにしましょう。
☆例文
・冒頭「お疲れさまです」+締め「よろしくお願いします」
・冒頭「いつもお世話になっております」+締め「よろしくお願いいたします」
・冒頭「いつもご愛顧いただき誠にありがとうございます」+締め「今後とも何卒よろしくお願い申し上げます」
◇(3)クッション言葉を活用する
クッション言葉は相手の気持ちに寄り添う表現。
特にお願いの用件は、クッション言葉がないと命令調で一方的に感じさせます。バリエーションを持ち、配慮を伝えていきましょう。
☆例文
・お手数をお掛けしますが、ご返信いただきますようお願い申し上げます。
・ご多用のところ恐れ入りますが、ご連絡をお待ちしております。
・急なお願いで恐縮ですが、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
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◇(4)締めに「取り急ぎ」と使うのは避ける
「取り急ぎ」という言葉は、「とりあえず急いで」という意味。
送る側の気持ちとしては、「本来は丁寧にお礼などを述べるべきところ申し訳ない」という意味でよく使われている言葉ではあります。
マナー違反ではありませんが、送る側が忙しいことをわざわざ伝えているように受け取る人もいるので、目上の人には避けた方が良いでしょう。
また言い換えた表現も使いこなしましょう。
☆「取り急ぎ」の代用表現例
・まずはご報告をさせていただきます。
・一旦概要のみお送りいたします。
・略儀ではございますが、まずはメールにてお礼申し上げます。
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▶次のページではシーン別で、ビジネスメールの締めの言葉を紹介します。
■【シーン別】ビジネスメールで使える「締め・結び言葉」例文
ビジネスメールで実際に使える締め・結び言葉の例文を、シーン別で紹介していきます。
◇一般的な締め・結びの言葉
・
・どうぞよろしくお願いいたします。
・
・何卒よろしくお願いいたします。
「何卒」(なにとぞ)は、相手に強く願う言葉です。多用しすぎず、重要なここぞ、という用件の結びに使うと良いでしょう。
また、より丁寧に伝えた方が良い相手に対しては、「お願いいたします」よりも「お願い申し上げます」とした方が無難でしょう。
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◇お願いする時の締め・結びの言葉
先方への依頼メールの場合、一般的には「ご確認のほどよろしくお願いいたします」を用いますが、それ以外にもさまざまな締め・結びの言葉があります。
お願いといってもさまざまな場面があるので、状況別に紹介していきます。
☆先方へ協力や検討の依頼をする時
・ご協力のほどよろしくお願いいたします。
・のほどどうぞよろしくお願いいたします。
・いただけますと幸いです。
「ご一考」については、敬語表現ではありますが、「少し考えてみてください」という意味を持つので、少し強引なニュアンスで感じ取られる可能性もあり、使用する相手や状況には注意をしましょう。
☆先方へ確認の依頼をする時
・
・お目通しいただきたくお願い申し上げます。
「ご査収」は、「内容をよく確認して受け取ってください」という意味です。こちらから資料やデータを送って、相手に確認してほしい時に用います。
そのため、何も確認すべきものを添付・記載していないのに「ご査収」と使うと、先方に混乱を与えてしまうので、この言葉を用いる際には気を付けましょう。
☆相手の理解・了解を得たい時
・ご了承のほどお願い申し上げます。
・
こちらの事情を納得し、受け入れてほしい。または、取引のルールなどを先に理解しておいてほしい、というような場合に用います。
「受け入れてください」という意味合いなので、強制的に承諾をさせるようなニュアンスで感じ取られる可能性もあります。そのため、目上の人に対しては使用を避けた方が良いでしょう。
◇お礼や感謝をする時の締め・結びの言葉
・誠にありがとうございました。
・心より
・厚く
相手へのお例や感謝のメールの場合には、下記のような締め・結びの言葉を使うことができます。
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◇お詫びや謝罪の締め・結びの言葉
・心より
・ご期待に沿えず申し訳ございませんでした。
お詫びや謝罪メールの締め・結びには、上記のような言葉が挙げられます。
◇お断りをする時の締め・結びの言葉
・今回は承ることができず申し訳ございません。お詫び申し上げます。
・またの機会がございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
・ご期待に沿えず恐縮ですが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
先方からの提案などに対して断りのメールを送る際には、上記のような言葉で締めることができます。
◇健康や繁栄を祈る締め・結びの言葉
・お体をお大事にしてください。
・ご健康を心より
・時節柄、より一層
異動や退職などのあいさつを送ったり、受け取ったりした場合にも使える締めの言葉です。
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◇感染症などの影響を踏まえた締め・結びの言葉
・不便は多々ございますがどうかお気をつけてお過ごしください。
・何か私どもでお役に立てることがございましたらお申し付けください。
・落ちつかない状況ではありますがどうぞご無事でお過ごしください。
上記は、感染症や天災などの影響を踏まえた締めの言葉となります。
◇ご愛顧を願う締め・結びの言葉
・今後ともご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。
・今後とも変わらぬお引き立てのほどお願い申し上げます。
取引先などに対して、やり取りしていた案件がひと段落した際などに使える結びの言葉です。
◇時候や季節を気遣う締め・結びの言葉
以下のような時候や季節に配慮した締め・結びの言葉も、引き出しを増やしておけばビジネスメールで役立つでしょう。
季節ごとに例文を紹介していきます。
☆春の挨拶
・早春の息吹を感じる季節、心穏やかにお過ごしください。
・朝夕の寒暖差が激しい時節柄、どうぞご自愛くださいませ。
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☆夏の挨拶
・暑さが厳しくなってまいりますが、お体にお気を付けてお過ごしくださいませ。
・猛暑が続く日々ではございますが、くれぐれもご自愛くださいませ。
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☆秋の挨拶
・夏の疲れが出やすい時節です。体調など崩されませんようお気を付けくださいませ。
・秋の風景が見事な昨今、どうぞお健やかにお過ごしください。
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☆冬の挨拶
・日毎に寒くなりますが風邪など引かれませんようにお過ごしください。
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また、冬には年末年始があるため、その時期には以下のような言葉で締めると良いでしょう。
《年末》
・年末でお忙しい時期かと存じますが、ご無理をなさいませんようお過ごしくださいませ。
・本年も大変お世話になりました。良い新年をお迎えください。
《年始》
・本年も変わらぬご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
☆季節を問わない挨拶
・年度の変わり目につきお忙しいことと存じますが、どうぞご自愛くださいませ。
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◇返信が不要な場合の締め・結びの言葉
・ご確認いただければご返信は不要です。
・特に問題がなければご返信には及びません。
・何か不都合がございましたらお知らせくださいませ。
特に相手からの返信は不要である、ということを伝える際には、上記のような言葉で締めると良いでしょう。
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◇長文になった場合の締め・結びの言葉
・長文失礼いたしました。
・長文となってしまい申し訳ございませんがご検討のほどお願いいたします。
長文の目安は10行以上です。長文となってしまった場合には、このような言葉で締めると、相手への配慮が伝わるでしょう。
◇その他の締め・結びの言葉
《アポの予定が取れた後》
・お目にかかることを楽しみにしております。
《先方への訪問後》
・皆様にくれぐれも
アポの予定が取れた際や訪問後などのメールに、上記のような言葉を添えて締めてみてはどうでしょう。
■ビジネスメールの「締め・結びの言葉」で信頼関係を築こう
締め・結びの言葉の重要性や例をご紹介してきました。
寄り添う気遣いを最後の一文にまで表現することが、丁寧に連絡をしてくれる人だなという印象を与え、信頼関係を築く一つの要素となっていきます。
紹介した例文以外にも、自分がメールを受け取った際に良い印象を持ったフレーズをストックしながら、状況や相手に合わせて使いこなしましょう。
(三上ナナエ)
※画像はイメージです