「頑張ってください」は目上の人に使って良い? 正しい敬語・言い換え表現とは
上司や目上の人に「頑張ってください」という言葉を使うのはちょっと違う気がする。そう感じている人も多いのではないでしょうか。では、目上の人を応援したい時、どんな言葉を使うと良いのか? 今回は、ライティングコーチの前田めぐるさんに、「頑張ってください」の言い換え表現を教えてもらいました。
「上司に“頑張ってください”と言ってもいいのか?」と悩んだことはありませんか。
「応援したい気持ちはあるけど、言うと失礼になるのでは?」と使うのをためらってしまう「頑張ってください」という言葉。
本当のところはどうなのでしょうか? 相手や自分自身を鼓舞する「頑張る」について、一緒に考えてみましょう。
「頑張ってください」は目上の人に使うと失礼?
上司など目上の人に「頑張ってください」と言うのは、失礼にあたるのでしょうか?
ビジネスで上司などに使うのはあまり好ましくない
結論から述べると、ビジネスの場面で上司や目上の人に「頑張ってください」と言うことは、あまり好ましいとはいえません。
それは、なぜか? そして、どんな言い方が好ましいのか? まずは、言葉の意味を調べてみましょう。
そもそも「頑張る」の意味とは
「がんばる」は「我に張る」が転じたもの。「頑張る」は当て字です。
その意味は、以下の通りです。
がんばる【頑張る】
(1)我意を張り通す。
(2)どこまでも忍耐して努力する。
(3)ある場所を占めて動かない。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
「頑張ってください」は、どんな時に使える?
自ら努力してやり抜く意欲を誰かに示したい時に「頑張ります」と使ったり、相手を応援したい時に「頑張ってください」と使ったりします。
特に、ビジネスシーンでの「頑張ってください」は、次のように「(2)どこまでも忍耐して努力する」というニュアンスで使われることが多いでしょう。
(初めて営業に行く後輩を送り出す時)
・行ってらっしゃい。落ち着いて頑張ってください。
(自分も参加したかったプロジェクトチームに同僚が選ばれた時)
・〇〇さん、おめでとうございます。私の分まで頑張ってくださいね。
「頑張ってください」を目上の人に使うべきでない理由
さて、この「頑張ってください」を上司や取引先の人に使えるかどうか? まず分解してみましょう。
「頑張ってください」→「頑張って」+「ください」
「頑張って」はラ行五段活用の動詞「頑張る」の連用形である「頑張り」の促音便形に、接続助詞「て」が付いたもの。
「ください」は「くださる(=お与えになる)」の命令形「くだされ」の口語形です。
この構文には次のような意味があります。
動詞の連用形(または漢語)+ください → 「懇願」を示す
つまり、「頑張ってください」は、相手に対して「どこまでも忍耐し、努力してください」と強く願う気持ちを表現するものです。
部長が社長から「期待しています。頑張ってください」と言われたらうれしいでしょうが、部下から同様に言われたら、カチンとくる人もいそうですね。
仮に語尾を丁寧に「頑張ってくださいませ」としたところで、意味合いが大きく変わるものではありません。
また、一段高い敬意を加えようとして「書いてください → お書きください」のように、尊敬語の型である「お+動詞+ください」に当てはめるようとすると、「お頑張りください」と奇異な言葉になってしまい、成立しません。
忍耐や努力など相手の内面や意思に関するこの種の言葉は、直接的な敬語には変換しづらいのです。
次のページでは、「頑張ってください」の正しい敬語・言い換え表現を紹介します。