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最高の男たちが揃う「ラグビー日本代表」への偏愛 #PM6時の偏愛図鑑

いくえちゃん

定時後、PM6:00。お仕事マインドを切り替えて、大好きなあの映画、あの舞台、あのドラマを観る時間が実は一番幸せかもしれない。さまざまな人が偏愛たっぷりに、働く女性に楽しんでほしいエンタメ作品を紹介する連載です。

別れは突然、やってきた。そう、その日は10月20日の日曜日。外に蹴り出されたボールを見て、その場に立ち尽くした。あの瞬間からわたしは生きる屍だ。

ラグビーワールドカップ2019準々決勝の対戦国・南アフリカは確実に、ジャパン(日本のラグビーナショナルチーム)を研究し尽くしてきていた。

4年前、世界のラグビーファンの心をつかんだ、前回のワールドカップでの日本対南アフリカ戦「ブライトンの奇跡」は、南アフリカにしてみれば「ブライトンの屈辱」だった。

それを証拠に、スプリングボクス(南アフリカのナショナルチーム)は、翌週もウェールズを破り、いよいよファイナルにコマを進めた。ウェールズ戦での戦い方も、最後まで死力を尽くしたものだった。

それにしてもノーサイド後のジャパンもすごい活躍だ。まさに「One for all, All for one」で、あんなに体をはってタックルを繰り出していたのに、もう元気な顔でテレビ番組のひな壇に座り、笑顔を見せながら話をしている。

ウォーターボーイ徳永、北出丼の北出も含め、みんな本物の理想の男子。もうだれでもいい。いや、みんな素敵。そんな中でも、特にわたしが愛してやまないラグビー日本代表選手たちをご紹介する。

恋する女心は複雑です。田村優への想い

「はい、最初に正直に言います。わたしはスタンドオフ田村が大好きです」

わたしの大本命は、キックの度にスクリーンをひとり占めしていたソース顔イケメン、田村優だ。

なんだ、結局、ルックスなのか、と思わないでほしい。わたしはもともとスタンドオフ、つまり司令塔の選手に惹かれる。好みだから仕方ない。

ちなみにサッカー選手では柴崎ファンだ。どちらもイケメンではないかと、また思われそうだが、思い出してほしい。2人は180度くらいちがう。わたしは大会前、田村が五郎丸のような人気者になってしまうことを、ひそかに恐れていた。

しかし、蓋をあけてみると、田村人気は思ったほどではない。なぜか、わたしには理解できないでいる。キックの精度は正直、五郎丸以上。落ち着いた表情は、これぞ男前。

もしかしたら、キック前の動きに問題があるのか。そういえば、五郎丸はキック前に派手なルーチンをおこなっていた。ここか。田村のルーチンは、蹴る前にマウスピースを出したり入れたり。キックする姿よりなんかそっちのほうが気になる。

まあ、人気が出すぎてさびしい思いをしなくて済んだけれど。それはそれでさびしい。

実は笑えなくなったガッキー

プロップという、スクラムの最前列の地味さゆえ女子に一番モテないポジションのガッキーこと稲垣は、今回「笑わない男」として人気者になった。

その上スコットランド戦では、フォワードにもかかわらず、トライまで決めてしまった。フォワードで走りこんでトライなんてそうはない。いわば、ラッキーボーイだ。

しかしである。野球の解説をしても、高校の後輩からのメッセージを見ても、やっぱりガッキーは笑わない。わたしはこの原因を、くりぃむしちゅーの上田にあると思っている。大会前、ガッキーがテレビ出演した際に、強面のガッキーに上田が「笑わせよう」と絡んだからだ。

ガッキーは顔をくちゃくちゃにして笑いたいはずだ。しかし、みんなのイメージを壊したくない一心で笑えなくなってしまった。こんな心づかいができる人、いい人でないわけがない。

グーくん、ラブ

ジャパンのメンバーは、外国出身の選手が多い。本当は5人いると言われるキャプテンのリーチ、最年長のトモさんことトンプソン、中島イシレリ、レメキなどなど。わりとラグビー強豪国の出身者が目立つ。

ただ、もうひとりのプロップ、グーくんこと具智元は韓国出身、しかもソウル出身だ。韓国といえば、現在日本とは政治的に難しい関係。どうなのか、と思った人もいるのではないかと考えられるが、グーくんはそんなこと関係ない。

スコットランド戦の前半、負傷交代を余儀なくされたグーくんは、泣きながら出場継続を訴えていた。その姿にわたしは惚れてしまった。グーくんラブ。

南アフリカ戦では、相手選手のジャージを引っ張り、排除しようとしていた姿が印象的だ。大きな体で、顔いっぱいに笑うグーくんってほんとかわいい。

2人への愛に揺れるなんて

わたしには、大本命・田村優のほかに、気になって仕方ない選手がいる。

敗戦後の記者会見のとき、ヘッドコーチのことばに、ひとり号泣していたスクラムハーフの田中史朗、わたしのふみふみだ。身長166cm。海外のフォワードの選手には、片手でジャージをつかまれ、ポイッと退けられてしまう。当然だが、タックルに行くと跳ね飛ばされ、おにぎりのようにクルクルと転がってしまう。

なのに、ふみふみは2m超えの選手にも、正面切ってひとりでタックルに行く。ラックからボールを出すと、ボールを持ったまま、相手チームの屈強な選手に向かって、自ら突っ込んだりもする。そんなの、かっこよすぎないか。

そしてもうひとりのスクラムハーフ、ナイツの塙に似ていると話題になった流 大(ながれゆたか)。わたしはふみふみのことが好きすぎて、最初は1本目(スタメン)の流がふみふみに交代する時間を楽しみにしていたが、最後の南アフリカ戦では、流が下がるのが悲しかった。

南アフリカのスクラムハーフ、デクラークは確実に流を狙ってタックルしていた。なのに、誠実に球出しをしている流の姿に心打たれた。誠実って大切よね。

番外編 伊藤さん

伊藤なんて選手、ジャパンのメンバーにいたかな、とお思いの方もいるだろう。伊藤さんとは、今回の大会アンバサダーを務めた伊藤剛臣さんのことだ。

彼は元ジャパンのナンバー8。昨年までは最年長の現役選手だったが、今回はいろいろな場面に、解説者として出ている。TBSドラマ『ノーサイド・ゲーム』にも出演していた。

わたしは何年か前、伊藤さんが秩父宮ラグビー場の近くで外国人に「プリーズ。アフターユー」といってタクシーをゆずる姿を見た。大きなガタイに、不器用な日本語風英語。そのときからわたしは彼のファンだ。

実はわたしは、ウェールズ対フランス戦の解説でファンゾーンに来ていた伊藤剛臣さんにサインをねだってしまった。すると伊藤さんは、となりに座っていた大西将太郎さんにもサインをもらってくれた。

「ありがとう伊藤さん。でもわたしは伊藤さんのファンなんです!」

4年後のフランス大会に向けて

わたしは早い段階から日本戦のチケット入手に奔走にも関わらず、願いは届かなかった。

最初のロシア戦では、丸の内のパブリックビューイングの整理券入手のために、朝9時の配布時間の30分前から並んだ。それでも十分、画面が目の前にすぐ見える席で座って観戦することができた。

しかし、ラグビーファンは回を重ねるごとに増え、最後となった南アフリカ戦では、朝6時の丸ビル開館と同時に、整理券配布の定員に達してしまったという。わたしはその日、丸の内での観戦が叶わず、有楽町のパブリックビューイングの前で、オープンまで6時間以上も並んだ。

思えば開幕戦のロシア戦以来、わたしは良い席を確保するため、慣れない早起きをし、長時間並び、熱い声援を送った。そして気がつけば声は枯れ、体は冷え、腰を痛め、熱を出し、仕事を休んだことさえあった。すでに体はこの1カ月で、ジャパン同様、満身創痍となっていたのだ。

もし仮にジャパンが勝ち進んでいったとしたら、観戦のためにわたしはすべてを失っていただろう。

フランス大会に向けて、まずは体力作りからはじめよう。4年後なんて今よりも、老いはきているはずだ。選手と同じように、わたしもいろいろなものを犠牲にする必要がある。スポーツマンへの愛には体力も必要なのだ!

(文:いくえちゃん、イラスト:谷口菜津子)

※この記事は2019年10月29日に公開されたものです

いくえちゃん

ラグビーとサッカーが大好き。自分はイタリア人だと思っている。並外れたコミュニケーション力と積極性が魅力であり、欠点。

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