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気にしすぎて苦しくなるのはなぜ? 思いこみ癖から解放される方法

平松隆円(化粧心理学者)

周囲から“どう見られているのか”を気にしすぎる人がいます。既読のLINEに返事がないのは嫌われたんじゃないか。後ろの席のヒソヒソ話は私の悪口なんじゃないか……さまざまなことを気にしすぎて毎日グッタリ。このように「気にしすぎてしまう」のはなぜでしょう? なんでも気にしすぎてしまう心理と対策を、心理学者の平松隆円さんに教えていただきます。

自意識過剰というわけではありませんが、「まわりの人が自分の悪口を言っているんじゃないか……」とか、「変に思われているのでは……」とか、いろいろ考えてしまうことがあります。

これがポジティブな方向で気にしすぎるのであれば、まだ問題はないのかもしれませんが、ネガティブな方向で気にしすぎたり、思い込みが強すぎると、ストレスになって大変です。

どうして人は、“気にしすぎ”たり“思い込んだり”してしまうのでしょうか。また、そこから解放されるにはどうすればいいのでしょうか。

なぜ“気にしすぎ”てしまうの?

気にしすぎ
以前に認められたい、ほめられたい! 承認欲求が強すぎる人の特徴と対処法 というコラムで、承認欲求が、「賞賛獲得欲求」と「拒否回避欲求」という2つの側面から研究がおこなわれてきたことを紹介しました。

実はこれ、“気にしすぎてしまう”ことと無関係ではありません。まずはあらためて、2つの承認欲求の説明をしておきましょう。

「賞賛獲得欲求」と「拒否回避欲求」

気にしすぎ

人には、“まわりから受け入れられたい”という「承認欲求」があります。この承認欲求には、他人から肯定的な評価を得ようとする「賞賛獲得欲求」と、反対に否定的な評価を避けようとする「拒否回避欲求」の2つがあると言われています。

たとえば、“自分が注目されていないと、つい人の気を引きたくなる”とか、“大勢の人が集まる場では、自分を目立たせようと張り切る”などは、「賞賛獲得欲求です。

気にしすぎ

それに対して、“意見を言うとき、みんなに反対されないかと気になる”とか、“目立つ行動をとると周囲から変な目で見られないか気になる”というのは、「拒否回避欲求です。

つまり、「まわりの人が自分の悪口を言っているんじゃないか……」と考えてしまうのは、否定的な評価を避けようとする「拒否回避欲求」のあらわれといえることがわかるでしょう。

<診断テスト>あなたの“拒否回避欲求”傾向は?

せっかくなので、ここであなたが“拒否回避欲求”が強いかどうか、ちょっとテストをしてみましょう。

1.人に文句を言うときも、 相手の反感を買わないように注意する
2.相手との関係がまずくなりそうな議論は、できるだけ避けたい
3.意見を言うとき、 みんなに反対されないかと気になる
4.人から敵視されないよう、 人間関係には気をつけている
5.自分の意見が少しでも批判されるとうろたえてしまう
6.目立つ行動をとるとき、 周囲から変な目で見られないかが気になる
7.不愉快な表情をされると、 あわてて相手の機嫌をとるほうだ
8.場違いなことをして笑われないよう、 いつも気を配る
9.相手との関係がまずくなりそうな議論は、できるだけ避けたい
10.すぐれた人々の中にいると、 自分だけが孤立していないか気になる

あてはまる数が多いほど、“拒否回避欲求”が高い傾向があるということになります。

とはいえ、“拒否回避欲求”が高いことが悪いというわけでは必ずしもないので、あてはまった数が多くても気にしないでくださいね。

“気にしすぎ”思考にハマる人の特徴

気にしすぎ

では、どうして“拒否回避欲求”が高い、つまり“気にしすぎ”思考になってしまう人がいるのでしょうか。

小島弥生による「日常生活における自己呈示と賞賛獲得欲求・拒否回避欲求との関連」(※)という研究では、気づかいができる」「思いやりがある」「他者の気持ちを察することができる」といった、いわゆる“配慮”が関係しているのではないかと言われています。
(※)『立正大学心理学研究所紀要』2007

つまり、“否定的な評価を避けよう”というたんなる欲求(=願望)ではなく、人から嫌われないために実際にいろいろな行動をしている人に、“気にしすぎ”思考の人が多いといえます。

これ以外にも、“気にしすぎ”思考の人にはいくつか特徴が考えられます。

自分に自信がない

気にしすぎ

診断テストの5番目に「自分の意見が少しでも批判されるとうろたえてしまう」というのがありましたが、批判されたらイヤというのは、まさに“自分に自信がないから”です。

6番目の「目立つ行動をとるとき、 周囲から変な目で見られないかが気になる」というのも、自分に自信がないことで、自分が変なことをしているんじゃないかと思ってしまうことが影響しています。

自分よりも相手優先

気にしすぎ

また9番目の「相手との関係がまずくなりそうな議論はできるだけ避けたい」は、自分の意見が正しい・正しくないにかかわらず、“相手が不快な気持ちになることを避けようとする心理”が影響しています。

自分のことよりも相手のことを優先してしまうことで、いろいろと気になってしまうんです。

消極的な性格

気にしすぎ

“消極的な性格”というのも、拒否回避欲求に関係していると言われています。拒否回避欲求が強いと、周囲から嫌われないようにしよう、と自分が積極的に発言したり行動したりするのを抑制してしまうというんです。

それで結果的に、消極的な性格になってしまうわけです。

気にしすぎる性格を直して、もっとラクになる方法

それでは、どうすれば“気にしすぎ思考”から脱却して、ラクになれるのでしょうか。いくつか考えてみましょう。

基本は、“考えない”

気にしすぎ

気にしすぎる人は、「気にしすぎ症候群」ともいえるくらい、気にしてばっかりです。気にする、つまり考えることが多いと、それだけで疲れてしまいます。

なので、まずは何も考えなくてもいい時間を作りましょう。1人で映画をみたり、趣味に没頭するのもいいと思います。

八方美人をやめる

気にしすぎ

たしかに人間関係は大事です。ですが、だからといって気にしてばかりだと、人間関係だけはなく、仕事だってうまくいきませんよね。

ですから、相手に配慮しすぎるあまりに自分の気持ちや考えをおさえこむのではなく、もっと自分を大事にしてみましょう。いいかえるなら、“八方美人をやめる”ということです。

気にしすぎは、まさに“自意識過剰”だと理解する

気にしすぎ

周囲が自分のことを変に思ったらどうしようという不安が、気にしすぎることに影響するのだとしたら、根本的に「人は自分のことなんて興味ないんだから」と思うことが大事です。つまり、周囲が自分に注目しているという、ある意味での自意識過剰さが、気にしすぎにさせてしまっているわけです。人は案外、他人のことになんて興味がないんだと思いましょう。

気にしすぎはストレスの原因にもなり、心や体の不調にもつながります。もちろん簡単なことではないかもしれませんが、“気にする”を少しでもやめられたらいいですよね。

(平松隆円)

※画像はイメージです

※この記事は2019年08月11日に公開されたものです

平松隆円(化粧心理学者) (化粧心理学者)

1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、タイ国立チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理にも詳しい。日本やタイを拠点に、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は『化粧にみる日本文化』『黒髪と美女の日本史』『邪推するよそおい』など。

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