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理想の働き方は? ワークスタイル変革の概要と課題

水谷育恵(特定社会保険労務士)

中田ボンベ@dcp

ワークスタイル変革とは

ワークスタイル変革とは

ワークスタイル変革とは、組織の働き方(ワークスタイル)を変えて新しくすることです。

これまでの日本では、フルタイム勤務できる労働者が長時間働き、生産性を上げていました。しかし長時間労働によるメンタルヘルスの不調などが近年問題視されています。また、現在の日本は労働生産性が先進7カ国の中でもっとも低く、国際競争力が低下しています。その上、労働人口が減少して働き手が少なくなっており、今後も少子高齢化が進むので、労働人口はどんどん減っていくことが予想されます。

従来の働き方で働ける人が少なくなっているものの、フルタイムでなくても働きたい人は社会にたくさんいます。こうした状況の中で、企業が取り組むべき改革として重要視されているのが「ワークスタイル変革」です。

企業としても従業員の多種多様な事情に合わせて働き方の選択肢を増やし、労働環境を整える必要が出ているのです。

ワークスタイル変革の目的とは

ワークスタイル改革により、今まで働きたくても時間や場所の制約によって働きに出られなかった人達が働けるようになります。社会とのつながりを持てるようになるわけです。

また、仕事を通して社会に貢献することで、自己実現の場も生まれます。個人が自分の状況を考慮した上で、生き生きと働くことができれば、それが結果的に企業の価値を高めることにつながります。

個人のワークスタイル変革を推進し、自分らしい働き方ができる企業となれば、人材の流出を防ぎ、モチベーションの高い優秀な人材を獲得できます。ワークスタイル変革は、個人だけでなく企業の成長のためにも必要な制度改革と言えるでしょう。

ワークスタイル変革の具体的な取り組み

ワークスタイル変革の具体的な取り組みをご紹介します。

(1)フリーアドレスの導入

社員の固定席を設けず、仕事の状況に応じてオープンスペースや空いている席を使う形態。時短勤務や在宅勤務を希望する社員や、オフィスに常駐しない社員のスペースを有効活用することでオフィススペースの最適化を図ります。また、固定席を設けないことで、固定されたメンバー以外とのコミュニケーションの活性化が期待できます。オフィスが小さいスペースで済むことでコストが削減されますし、仕事内容に応じて部署の垣根を越えてチーム編成ができる利点もあります。

(2)テレワークの導入

「tele(遠い)」と「work(働く)」を合わせた造語で、場所や時間にとらわれない働き方を意味しています。テレワークは、以下の3つに分類され、オフィス以外の場所で仕事をするスタイルです。オフィスに通うことが難しい人でも労働が可能になります。

・1.在宅勤務
パソコンとインターネットなどで企業と連絡をとり、働く。

・2.モバイルワーク
移動中にパソコンやスマホを使って働く。

・3.サテライトオフィス勤務
企業の事業所以外のオフィススペースで働く。

(3)社内制度の整備

オフィス以外で働いたり、働く時間が短い社員が増えるため、オフィスにいないことが人事評価に影響しないようにすることが重要です。ほかの社員と不公平にならないよう、業務内容で正当な評価が受けられるように人事評価制度を見直す必要があります。

ワークスタイル変革の課題

ワークスタイル変革での問題点や今後の課題について解説します。

(1)経営者の意識改革

最近は、昭和時代の働き方を推進する経営者は少ないと思いますが、中にはかつての働き方を重要視する人がいます。そうした企業の場合、会社の制度を見直すことが難しくなります。実務レベルの担当者に対する風当たりも強くなりがちなので、「長時間働く人ほど評価が高い」といった社内風土の改革や、人事制度や評価制度を見直す必要があると、経営陣に理解してもらうことが大きな難問となります。

(2)IT環境の整備

オフィス以外で働く上で、情報をどこでも見られるようにするなど、新たな働き方に合わせたIT環境を整え直す必要があります。ただし、企業の資本力により、必要なシステムをすべて用意することが難しい可能性があります。

(3)社員全体の意識改革

新しい制度を導入したとしても、社内での理解が得られないことがあります。そうなると、制度を利用することがはばかられる状況になって浸透せず、ただ制度があるだけになってしまいます。そうならないためには、新しい働き方に対して社員の理解を深め、組織全体で「働き方」に対する意識を変える必要があります。

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