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昇進しても女を捨てたくない! 地元と東京の落差に揺れる編集女子 #美容迷子のお守りコスメ

長田杏奈

働く女性にとって、メイクやスキンケアは欠かせない習慣。その一方で、たくさんの葛藤や不安を抱えながら“美容迷子”に陥っている人は多いもの。そんな迷える女性のお悩みに、美容ライターの長田杏奈さんがコスメで回答。毎日自信を持って働くための「お守りコスメ」を提案します。

【今回の美容迷子】都内で働くアラサー女性編集者

入社7年目で課長に昇進すると同時に、4年付き合った彼と破局。荷が重い役職を背負ったうえに、「彼と結婚してゆくゆくは家庭に入る」というライフプランもガタガタに! 仕事のおもしろさは感じているし、がんばりたい気持ちはあります。でも、いかにも「私、女を捨てて仕事に命をかけています!」みたいなバリキャリっぽい見た目にはなりたくないんです。年次が上がって“かわいい後輩”じゃいられなくなっても、どこかに隙がある女っぽさは残しておきたいし、チヤホヤされたい! そんな私にぴったりの、新しい出会いに効くコスメってありますか?(ちょろ子/28歳/編集者)

女の武装をするのと、女を捨てるのは同じこと?

男女雇用機会均等法の制定から、30年余り。女性が働くにあたり、いまだに女を捨てるとか捨てないとかいう話になることに驚きです。ただ、ちょろ子さんの考える「女を捨てる」について探ってみたところ、スカートを履かないとかメイクをしないとか毛がボーボーとか(それもまたよし)、そういう話ではありませんでした。

「たとえ見た目は華奢な美人でも、男の人をコテンパンに言い負かす女上司を見ると、ああはなりたくないと思います。さらに上の、大きなビジューにボディコンで迫力ある“女の武装”をしたバブル世代も、私にとっては女を捨てているのと同じに見えるんです」。年上の働く女性に、しっくりくるロールモデルを見つけられないちょろ子さん。どうやら彼女にとっての「女を捨てる」は、「弱さや隙を捨てる」と同義なようです。

「地元の父の教え」と「東京の現実」の間で揺れる心

「私、ペラペラのハンカチを常に持ち歩いてるんですよ」と、やや自嘲気味に品のいいハンカチを取り出したちょろ子さん。「女子たるもの、座るときはスカートの上にハンカチを敷きなさい」というのは、お父様の教えだそう。私が何か言う前に、「別にモラハラとか女性蔑視という感じじゃなくて、家族思いのやさしい父なんです」と、すかさずフォロー。ちなみに、「派手なブランドロゴが入っているものや、タオルハンカチはダメ」。ハンカチを敷いていると、出会った男性に「きちんとしてるんだね」と褒められることが多く、釣り果があるたびに「やっぱりちゃんと見られているんだ!」とその効果を実感。父の教えと女性観が、絶対的な説得力をもって彼女の骨身にしみ込んで、ひたひたと内面化していったのです。

「私の地元では、女性の働き口が少ないことも相まって、一般職に就いて結婚したら仕事をやめて“奥に入る”のが幸せの王道。心のどこかで古い考えだとわかっていても、東京で男性と肩を並べて働く女性に囲まれてみると、カルチャーショックでしかありません」。慎ましく男性を立て、いつかは「奥に入る」。そんなちょろ子さんの人生計画は、4年越しの彼との別離で大きく崩れてしまいます。「私が昇進したとき、彼、すごく嫌な顔をしたんですよね……。やっぱり女が偉くなると、引いちゃうんですよ。残業も増えたし、まわりの女上司はみんな結婚していないしで、また婚期が遠ざかる気がして焦ってしまいます」。

結局、男性が選ぶのは「か弱い女」という絶望

周囲の「強い女」に違和感を感じ、いつまでも隙のある女性としてチヤホヤされたいと願うちょろ子さん。しかし、そんな彼女の職場に、リアルな「か弱い女」が現れます。うるんだ瞳で、「私、この仕事できません!」と直談判をしにくる新人女子。責任ある立場のちょろ子さんは、心を鬼にして却下します。努力もしないうちにできないと決めつけるなんて、仕事をナメてもらっては困る!

そんな後輩が職場の女性たちとギクシャクしているのを見かねた同僚の男性が、ちょろ子さんに「もっと仲よくして、助けてあげなよ」とひとこと。ほかの男性社員とちがい、か弱い女に惑わされない「わかっている」はずだった同僚が、彼女の肩を持った。その事実は、「男が大切にするのは結局、守ってあげたくなる儚げな女。私はとうとう強い側の女になってしまったんだ」とちょろ子さんにショックを与えました。

このあたりから、「か弱い女も、そういう女の肩を持つ男も嫌い!」と本音がポロリ。強い上司に「女を捨てている」と辟易する一方で、か弱い後輩に「女を出している」とイライラし、さらにはそれを見抜けない男性に絶望する。そんな自分の矛盾を「支離滅裂なのはわかっています」と恥じるちょろ子さん。オフィスは仕事をする場所のはずなのに、なかなか複雑ですね。

封印したドクターマーチンと、最後の砦の引き算メイク

今でこそ、ひざ丈のフレアスカートに、お行儀よく“見せハンカチ”を敷いているちょろ子さん。実は、学生時代はバンギャ(ビジュアル系バンドが好きな女子)で、キャップをかぶり迷彩柄のシャツにデニム。足下はドクターマーチンのゴツいブーツだった過去が!

現在は「カジュアルや個性派はモテない」とすべてを封印。お店でほしい柄のタイトスカートを見つけても、「こっちのほうがモテそうだから」とフレアのデザインを購入。本当はおでこを出したいけど、かわいく見える前髪がやめられない。しかし「服や髪型がフェミニンで甘いのに、顔までラメキラキラ、唇ぷるぷるだったら、完全に私ではなくなっちゃう」という思いから、使うコスメを整理してシンプル化。その小さな抵抗は、ちょろ子さんにとって自分らしさを守る最後の砦なのかもしれません。「グロスを塗っている女は大嫌いだし、ピンクやラメのアイシャドウも論外。チークも知性に欠けて見える気がして捨てました」という暴言も。人の内面をそんなことでジャッジする目線は、いつか自分のことも傷つけてしまうよ。

ペラペラのハンカチも、ふわふわのフレアシルエットも。本当によいと思って身につけているなら、素晴らしい武器になるはず。でもちょろ子さんが、そんな自分をどこかであざ笑って皮肉に思っているのなら、「じゃない日」を作って、たまにはバンギャだった本来の自分をのびのびと解放してあげるといいのかも。

もう“かわいい後輩”には戻れないし、“奥に入るか弱い女”の道も閉ざされてしまった。強すぎたり個性派すぎたりせずに「女らしい隙」を感じさせ、かつ知性に欠けて見えるのは絶対にイヤ。そして、出会いの場面で「メガバン(メガバンク)に勤めているような、頭のいいエリート」にチヤホヤされたい……。欲張りなあなたの毎日を力づけるお守りコスメ、張り切っておすすめいたしましょう。

「チヤホヤされたい」という一方で、いわゆるモテコスメと言われるような、グロス・チーク・瞳をキラキラ見せるラメアイシャドウには「知的に見えない」と嫌悪感を感じているちょろ子さん。色もツヤも抑えた少数精鋭のポーチの中身を見るにつけ、「あぁ、この人は虚飾を取り払って、素材で勝負したいんだな。そして、そんじょそこらの女じゃない自分を見分けて、愛してくれる存在を求めているんだな」と感じました。素材を磨いて引き立たせ、媚びずに隙や色気を出す。とても難易度が高い技ですが、とりあえず「素材がいい風に見せる」コスメに頼ってみてはどうでしょう? お金をかけても大丈夫とのことだったので、予算は高めで考えてみました。

うるおった肌に見せる、メイクコンシャスなスキンケア

スキンケアでありながら、ベースメイク後のようなつるんとした水ツヤ肌に整える美容液。砂漠化した肌にもみずみずしくなじみ、オフィスの乾燥からしっかり守り抜く。ルナソル ポジティブソリューション 30g ¥5,000+税/カネボウ化粧品

素材で勝負するときに印象を左右するのは、面積が広いぶん目につく肌。メイクがシンプルでも、肌がきれいならそれだけで「上質な色気」を放つことができます。ところが残念なことに、ちょろ子さんのお肌は、粉を吹くくらい乾燥してしまっていたのです。スキンケアが苦手で、中学生のころから同じ化粧水を使っているとのこと。「ばしゃばしゃ塗って」という手振りからは、いかにもおざなりな雰囲気が漂っています。10年前とは肌の状況も変わっています。素材で勝負してチヤホヤされるためには、もうちょっと大事にしなければ。

いきなりがんばりたくないと思うので、手っ取り早く「丁寧にスキンケアしたような清らかな水のツヤ」がのって、つるんとメイクのりのいい肌になる美容液をおすすめします。オイルをジェルコーティングして配合しているので、サラッとした塗り心地ながら、20代後半の肌に必要な油分を適度に補ってくれます。クリーム嫌いのちょろ子さんでも、これなら大丈夫!

上質なツヤ、さりげない色づきの大人グロス

ローズブラウンに赤とゴールドの繊細なラメが煌めくグロス。ナチュラルでみずみずしい薄膜のツヤが、自然な色気を演出。もともとキレイでうるおった唇に見える。キッカ メスメリック ウェットリップオイル 06 ¥3,200+税(2018年5月9日発売)/カネボウ化粧品

美容を愛する者として、グロスやラメに「知性に欠ける」という先入観を持つちょろ子さんに、「そんなことない!」と一発で知らしめるアイテムを紹介したいなと思いました。大人の階段を上るにあたり、さりげなさのさじ加減がわからなくなったら頼ってほしいブランドが、メイクアップアーティストの吉川康雄さんがクリエーションを手がける「キッカ」。吉川さんは、いかにも塗った感のあるあからさまな感じとは対極の、女性の自然な美しさの延長線上にある色や質感にとことんこだわる巨匠。「女性賛美」と「男性目線」で、数々の“素材を引き立てる名品”を生み出しています。

そんなキッカの2018年春夏新色のグロスは、甘さ控えめで媚びてないのに色っぽい。ラメ入りのグロスだって、こんなに上品で知的なものもあるんです。この1本をきっかけに、変な先入観を捨ててもらえたらうれしいです。コンプレックスのない頭のいい人は知性をひけらかさずに、あえてゆるく振る舞うこともあるから、そういう面も見えるようになってほしい。ちょろ子さんの場合、自分の中の「知性に欠けて見える人を蔑む心」を、もうちょっと掘り下げたら何か膿が出てきそうです。

出会いの場に向かう前に、ツヤを仕込む

肌になじみつつ繊細なツヤを放ち、いきいきとした肌とメリハリを引き立てるリキッドハイライター。みずみずしくやわらかなテクスチャーで、メイクの上からでも使いやすい。リキッド ライト ¥7,000+税/ヘレナ ルビンスタイン

今後、合コンや飲みの席に顔を出す機会も増えると思います。でも仕事終わりの肌って、オフィスの空調とかストレスフルな業務のせいで、生気がなくパサついてしまいがちですよね。このハイライトは、パサついた肌でもうるおって見える、繊細な疑似ツヤを叶えるもの。鼻の付け根のくぼんだ部分、目頭のくぼんだ部分、頬の高い所に、点でのせてスポンジでぼかしましょう。余裕があれば、上まぶたの中央と唇の山にも。ダウンライトの下でも、ほんのりツヤがのった「素がきれい」な肌に見えます。顔立ちの立体感が強調され、美人顔を引き立ててくれますよ。

【これもオススメ!】ダメージ肌にベストバランスの水分と油分をチャージ

ミルク美容液をたっぷりしみ込ませたやわらかなシートが肌に密着。肌あれとしみを同時にケア。ミノン アミノモイスト うるうる美白ミルクマスク〈医薬部外品〉 20ml×4枚入り ¥1,500(※編集部調べ)/第一三共ヘルスケア

スキンケアをサボってるなーという日が続いたり、明日は大事な予定があるという日には、このシートマスクを使ってみてください。敏感肌向けのブランドのものなので、激務やおざなりケアでダメージを受けた肌にもやさしく、でもしっかりと底上げしてくれます。ちょろ子さんの肌は、水分を与えるだけでは保湿が間に合わないとお見受けしたので、ちゃんと油分を補って肌をやわらかく整えるミルクマスクがおすすめです。もっちり透明感あふれる肌で、素材力をアピールしていきましょう。

今回選んだのは、小手先のお飾りを取り去り、素材で勝負する自信を後押しするお守りコスメ。見せハンカチなんかに騙されない、素材のわかるパートナーが見つかることを祈っています。ちょろ子さんも「メガバンがいい」とか言わずに、相手の素材もちゃんと見てあげましょうね。

(長田杏奈)

※コスメ写真は編集部撮影。そのほかの画像はイメージです。

※この記事は2018年05月11日に公開されたものです

長田杏奈

ライター。美容をメインに、インタビューや海外セレブなどの記事も手がける。趣味は園芸。

Instagram:https://www.instagram.com/osadanna/
Twitter:https://twitter.com/osadanna

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