【男女のマネートラブル】第4回 既婚と知らなかった不倫で慰謝料は発生する?
「彼氏がお金を返してくれない」「婚約破棄された」「不倫の慰謝料」。世の中の男女の問題にはお金がつきもの。そんな男女のマネートラブルの悩みに、多くの離婚・男女問題を解決してきた弁護士・堀井亜生先生が答えます! 法律面のアドバイスだけでなく、これまでの事例に基づく恋愛アドバイスももらえるので必見。 悩める子羊たち、門を叩きましょう!
【今回の相談】
大学生の頃から付き合っている、8歳年上の彼氏がいます。はっきり言われたことはないのですが、土日に会ってくれず、彼の家にも行ったことがないので、彼は既婚者なのではないかと疑っています。一度だけ、左手の薬指に結婚指輪らしきものをしていたこともありました。もし私たちの関係がバレたとしても、彼から結婚していると知らされていないのですから、奥さんに慰謝料を払う必要はありませんよね? 私はもうすぐ28歳で、貴重な20代を捧げたので、私の方こそ慰謝料をもらいたいぐらいです……。(かわかみ・27歳/情報・IT/事務系専門職)
堀井亜生先生の法律アドバイス
不倫関係が相手の奥さんに知られてしまった時に、「結婚しているとは知らなかった」と言う女性は少なくありません。
法律的な観点からしても、相手が結婚しているということを知らなければ、不倫をして奥さんの権利を侵害しているという認識もないわけですから、慰謝料を支払う責任を負うことはありません。
ただし、「独身だと思ったから交際をはじめた」「結婚しているとは言われなかった」というだけでは不十分で、相手が既婚者だと知らなかったことについて過失がない必要があります。
●「過失がない」場合とは
過失がないというのは、例えば相手が「俺は独身だよ」「結婚してないよ」とはっきり言った上で、単身赴任をしているから土日も普通にデートしていたし家にも入れてくれていた、まわりの人も彼が結婚しているとは知らなかった……など、女性から見て、相手が結婚しているのではと気づく余地がまったくないような場合を指します。この場合は、慰謝料が発生することはないでしょう。
●「過失がある」場合とは
逆に、土日はデートできなかったり、家に呼んでもらえていなかったり、周囲の人から「彼は結婚しているかもしれない」と聞いていたりするような場合には、「結婚していることに通常気づくはずである」と認定されて、「過失がある」とされる可能性もあります。「過失がある」場合には、慰謝料が発生する可能性があります。
●交際途中に既婚者とわかったら
また、交際途中に既婚とわかった場合にも、その時点から慰謝料を払う義務が生じます。
交際の最初知らなかったということだけで、慰謝料を免れることはありません。
かわかみさんの場合、まさに土日は会っていなかったり、家に呼んでもらえなかったり、指輪をしているところを見たことがあったりという事情があって、ご自分でも彼が結婚しているのではと考えているのですから、裁判になった際に、「結婚していることを知っていた」もしくは「結婚していると知らなかったことについて過失がある」と認定されて、慰謝料の支払いを命じられる可能性があります。
一方、既婚者であることを隠して交際されたという場合は、不倫相手に慰謝料の支払いを求めることも可能です。上記の「過失がない」ケースの場合には慰謝料の支払いが認められる可能性が高いですが、かわかみさんのケースでは難しいでしょう。
堀井亜生先生の恋愛アドバイス
このように、彼から既婚者であることをはっきり知らされていない場合であっても、慰謝料を支払わなくてはいけない可能性はあります。
彼が結婚していることを本気で隠していたのならまだしも、「結婚しているとははっきり言われなかった」という程度では、不倫について責任がないと認定してもらえるとは限らないということです。
彼と交際していて「結婚してるのかも?」と思ったら、すぐに彼に確認をして、独身であるという確証が持てなければ別れた方がよいでしょう。
結婚しているとははっきり言われていないからと、曖昧な状態で交際を続けてしまうと、かわかみさんのように何年もずるずる続いて……ということになってしまいます。
彼にきちんと確認をした上で、現実から目をそむけずに、もし相手が既婚者だとしても交際を続けたいか、そもそも既婚者と知っていたら交際をはじめていたかどうかを冷静に考えてみましょう。
もう何年も付き合っているのだから、最初は知らなかったのだからと惰性で交際を続けても、メリットはありません。交際した年月のことは諦めて、次の恋愛に切り替えることがおすすめです。
(監修・文:堀井亜生)
★次回の『男女のマネートラブル』は12月27日(火)公開予定です。お楽しみに!
バックナンバーはこちら
※この記事は2016年12月13日に公開されたものです