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【少女マンガに学ぶ不倫】第4回『ハッピー・マニア』

和久井香菜子

少女マンガ攻略・解析室室長の和久井香菜子が不倫を扱った少女(女性向け)マンガを毎週1冊ピックアップ! そこに描かれた男女の姿から、不倫の哀しさ恐ろしさを学んでいく連載です。美しく描かれることも多いけど、不倫はダメ、絶対!

こんにちは、少女マンガ攻略・解析室室長の和久井香菜子です。

恋愛って楽しいですよね。
デートがOKだったときのキャッホー感、何を着ていこうかのワクワク感。
先日、デートに行くのに女友だちと勝負パンツを買いに行っちゃいましたよ。ああ楽しかった。
なんかいいホルモン出てるんだろうなーと思います。

付き合っちゃうと責任とか期待が出てくるので、楽しいことばかりじゃないですよね。
妊娠とか結婚とか、女はリアルに考えざるを得ないですし。
だから「付き合うか付き合わないか」の頃が一番楽しいとかよく言います。

そのいいとこ取りしたのが2D~3Dのアイドルですよ。
自分に不利益のあることは絶対言わないし、しない。ステキなキュンキュンだけくれるのだから、お金も時間も、持ってけドロボー! という勢いです。

少女マンガの男性キャラには「ほかにはやることないのか!」と言いたくなるくらい、主人公をつけ回す男性がいます。
彼の人生のナンバーワンになりたいのが、女というもの。だからそういうキャラが登場するんですね。

そこをそもそも期待してないから、アイドル愛って幸せなんだと思います。

今週の教科書『ハッピー・マニア』

久しぶりに読み返したら、胸が痛くて仕方なかったです。
主人公シゲタが、幸せを探して男で失敗しまくる話です。
相手の男は、浮気者のDJだったり、新興宗教の怪しい人だったり、夢見る偽作家だったり、思い込みの激しい若旦那だったり、いつもロクでもない感じです。

シゲタと同居人のフクちゃんは、同時期に不倫をします。
フクちゃんは、ヒデキと超絶ラブラブな最中に、彼には別居中の妻がいることがわかります。
シゲタは、バイト先で知り合った大河内さんに「僕も(恋人は)いませんよ」などと調子のいいことを言われ、夢中になった後に彼が既婚者だということがわかります。で、「僕は(ヒデキとは違い)りこんはしない」「君のことは本当に純粋に好きなんだ」と完全不倫宣言。なんてクソ野郎なんだ。

フクちゃんとヒデキはなんやかんや前進していきます。
だけどシゲタは、完全に大河内さんにとって「都合のいい女」。

「会ってもHをするだけ会話ナシ」「連絡はあたしからしても無視」

完全に遊びです。これは女がやられたら一番痛いパターンじゃないですか。

こういう「女が本当に痛いと思う話をポップに描いちゃった」ところが、『ハッピー・マニア』の新しさだったと思うんです。
もう20年も前の作品なんですね。驚きました。ぜんぜん色あせないです。

シゲタの不倫から学ぶ「不倫の回避策」

さて、ちょっと考えたいのは、シゲタはどうすれば大河内さんとの不倫を回避できたか問題。
シゲタは彼氏が欲しくて仕方ありません。思い思われのラブラブになりたい。

だけど、シゲタは自分のことを一途に追いかけ回すタカハシのことは好きになれません。
それそれ、そこが問題っぽい。
シゲタはタカハシのことを「あたしのことあんなにスキだなんて、どっかおかしいんじゃないの!?」と思ってます。タカハシは実家が金持ちだし東大卒だし、条件はいいはず。
でもシゲタが欲しいのは「ふるえる程のしあわせ」らしいです。
タカハシでは「ふるえる程のしあわせ」は得られないっぽい。
なぜ得られないのかしら?

いや、たぶんそんなのどこにもないんじゃない?
たいていのものは、手に入ってしまえば、その価値はどんどん色あせていくんだもの。
「りこんはしない」宣言した大河内さんは、手に入らないもの、価値のあるものに錯覚してしまうのかもしれません。

仕事も続かない、カレシもいない、特技もない。だから「こんな私を好きになる人の気持ちがわからない」。
自分を評価できないから、人のものを奪うときの快感に惹かれてしまう。タカハシが人のものになると急に魅力的に見えてきたりします。
そりゃダメだ!

自分に対する肯定感って、人生を押し進めていくのにとても大切だなあと思います。
シゲタと同じように不倫をしても、フクちゃんがシゲタほど迷走せずにゆるゆると前進していくのは、たぶん自分に対する揺るぎない自信なんじゃないですかね。

と言いつつ、自分に自信を持てない気持ちって、たいていの人は共感できるのじゃないでしょうか。
自信はなくても、少しずつ努力して、少しずつ自分を好きになっていくしかないのかもしれません。それをショートカットして、とびきりステキな条件に食いつこうとすると、変な男に引っかかっちゃうのかもしれないですね。

まとめ

誰かとつき合う前に、まず自分を好きになろう!
じゃないと「都合のいい女」設定されちゃいますよ!

カレシがいないと幸せになれないなんてたぶん間違い。まずは自分を見つめよう、話はそれからだ!

(文・イラスト 和久井香菜子)

★次回の『少女マンガに学ぶ不倫の実態』は11月5日(土)掲載予定です、お楽しみに!

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※この記事は2016年10月29日に公開されたものです

和久井香菜子

少女マンガ攻略・解析室 室長(http://kanako-wakui.net/index/)、編集・ライター。卒業論文で『少女マンガの女性像』と題して、女性の社会進出と少女マンガの主人公の描かれ方がどうリンクしているかを研究。以後、各種少女マンガレビューの執筆を始める。著書に『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)がある。

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