【妖怪女ウォッチ】File17:私は聖母女子
「自分は普通の常識人」それは認知の歪みです! 私も妖怪、あなたも妖怪、みんな妖怪。分析妖怪ぱぷりこが、恋するアラサー女子の中に潜む「妖怪女」の特徴、思考回路、進化予想、お祓い方法を解説します。楽しくウォッチして、必要ならば供養しましょう。
分析妖怪ぱぷりこが、恋するアラサー女子の中に潜む「妖怪女」の特徴、思考回路、進化予想、お祓い方法を解説します。楽しくウォッチして、必要ならば供養しましょう。今回は、とうとう妖怪界のレジェンド『私は聖母女子』が登場です。
「私は聖母女子」の基本スペック
●分類群
聖人目 聖母科
●危険度
★★★★★
●特技
「彼をわかっているのは私だけ♪」と自己犠牲精神を美徳とし、聖女を目指すこと
●生息地
全職業・職種に幅広く広く分布
●生息地における遭遇率
5%
●特性
・自己愛モテ女子の進化系
・「全てを受け入れる聖母」という自己像で認知の歪んだ世界に生きる妖怪界のレジェンド
・自分は「いい子」なので、誰からも嫌われないと確信している
・モテ女子として、下僕を従える生活を謳歌してきたため、プライドと自己評価はチョモランマ級
・モテて賢いという自認のため、世の95%は自分より格下の人間だと思っている
・次から次へと下僕(彼氏)を従える生活のため、内省・反省はない
・自分が「尊敬」できる相手になら尽くすため、自分はMだと思っている
・特別になりたい願望があるため、ドラマチックな設定を求めがち
・ハイスペックな男性に「この人しかいない」と選ばれ、崇拝されたという願望を持っている
・他人はには理解されないハイスペ彼の唯一の理解者になりたいと考えている
・モラハラを愛だと変換する回路が発達しており「彼をわかるのは私だけ♪」というノロケを繰り返す
・「男を癒し包み込む」癒しの女神という自己像を目指して地獄のデス・ロードを爆走する
詳しい生態
危険度MAXだった自己愛モテ女子(妖怪女File06: 自己愛モテ女子参照)がメガ進化を遂げたのが「私は聖母女子」です。彼女たちが目指すのは、全てを包み込む癒しの聖母、男性から崇拝される唯一無二の女性です。なぜそんな自己像を目指すのかというと、彼女たちが惚れこむモラハラ男と添い遂げるためには「全てを受け入れる聖母」をオーバーソウルしないと、関係を継続することができないからです。
モラハラ殿下は「君は俺と一緒にいれる程度には賢いし、本命彼女にするってことは特別な栄誉なんだよ」という大気圏の高みからの褒め言葉というアメと、「こんなことも知らないの?」「教養を疑う」などの人格否定というムチを与えます。
まっとうな神経の持ち主なら「奴隷扱いされるなんて耐えられない!」とさっさと逃げ出しますが、自己愛モテ女子は逃げるどころか「彼のすべてを受け入れたい!」と献身に走ります。「私に振られた男はみんな病むから笑」など圧倒的に人を見下す立場に慣れすぎているため、いざ自分が見下されると「なにこの人すごい! ぜんぜん違う!」と服従してしまうのです。「支配するか支配されるか」でしか人間関係を理解しておらず「対等」という文字がないため、このような逆転現象が起こります。
このように自己愛モテ女子が「私は聖母女子」に変化する要因は大きく5つ。
1.いい女でありたいから
2.尊敬する相手に選ばれたいから
3.その他大勢の女とは違う「圧倒的な存在」として彼の中に君臨したいから
4.社会的に勝ち組である男に選ばれることで、周囲に羨ましがられたいから
5.モラハラや傷つく言動を「自分に心を開いているから」と変換したいから
彼女たちにとって「いい女」であることは何よりの価値を持ちます。いい女=モテる女=求められる女であり、他人に求められることは彼女たちの自信を強化します。そのため、「いい女になれる! これは成長の機会!」というモチベーションでモラハラ殿下のムチを受け止めます。
彼のモラハラ言動は「私のことを考えてくれているから☆」「彼は私には素直に自分の言いたいことを言える☆」など、全てポジティブに変換します。そう語る彼女たちはうっとりとして満足げです。周囲が「それはモラハラでは……?」と警鐘を鳴らしても「あなたのような下民に私たちの崇高な関係が理解できるはずもない」と一笑に付します。
ほかの人から理解しがたい彼を受け止めるというシチュエーションは、私は聖母女子にとって最高の舞台です。「他人に理解されない彼」を「私だけは彼を理解し、彼は唯一の理解者である私を愛する」という脚本は、平凡さを嫌う聖母女子の大好物。しかし、ここまで現実を歪曲しないといけないということは、ストレスと負荷がかかっている証拠です。
それでも、私は聖母女子は「癒し・慈しみ・愛」を標語に掲げて、自分のストレスや不安を抹殺しにかかります。常に笑顔で優しく、相手の暴言を受け止めて包み込む癒しの聖母が信仰の対象になるのは、現実世界には成り立たないファンタジーだからですが、彼女たちはその自己像の達成にまい進します。
そうして突き進んでも限界はきます。脳内で仮想人格を作り上げても、彼女たちの心と体がSOSを出して活動停止し、結果として心を病んだり、我慢の限界が来てヒステリックを起こします。その瞬間、聖母女子になってまで尽くそうとしたモラハラ殿下との関係はTHE・ENDです。なぜなら、病んだ人間・折れた人間は彼らにとっては人生の落後者で、自分に相応しくない欠陥品だからです。
殿下との共依存関係から抜け出して人に戻れればよいですが、戻っても自己愛女子という妖怪です。自分の失ったプライドを取り戻すため、また下僕を従えて自己愛を満たす方向に舵を切り、永遠に対等な関係というエデンにはたどり着けず、今生を迷走する方向に行きがちです。
見つけ方
自己愛モテ女子状態だと発見が困難ですが、進化した「私は聖母女子」は個体数が少ないものの、判定は難しくありません。恋愛トークをする間柄になれば簡単に見つけられます。なぜならわかりやすいワードである「彼は私には心を開いてくれているから♪」「彼にとって最高の女になりたいの♪」などのパワーワードが随所にちりばめられるからです。
彼氏の話をよくよく聞くと「深夜に呼び出されて出汁からのお味噌汁を作ったの。彼すごく喜んでくれて♪」だの「一緒に旅行に行ったら、その地域の経済状況を答えられないことを怒られちゃったの♪」などの常識的な人間が聞くとショックを受ける内容をノロケ・エピソードとして語ります。
内容に対して疑問を呈しても「彼はちょっと気難しくて」「率直に言ってくれるから勉強になる」「彼を側で支えたいんだよね」などの「愛・希望・慈しみ」に溢れた標語しか打ち返してこないなら「私は聖母女子」なので、笑顔で撤退することをお勧めします。
妖怪化を予防する方法
予防方法はに有効なのは、「つらい・悲しい・苦しい」などといった不安・ストレスによる、動機・息切れ・眩暈を「本当の恋」と錯覚しないことです。私は聖母女子たちが、認知を歪め・自己像を強烈に捻じ曲げてまでつらい恋に突き進むのは、「自分を犠牲にして自分が苦しい思いをすることこそが、本当の愛」だと信じているからです。
「私は聖母女子」という、聖人君子の名を冠した大妖怪にならないために心に刻むべき教訓は5つです。
1.痛みや苦しみを「本当の恋」「本当の愛」という言葉でキラキラ粉飾しない
2.痛みや苦しみを与える相手の言動を「私に心を許しているから」とキラキラ変換しない
3.「素晴らしい相手に認められる自分」という外部評価に振り回されない
4.「全てを許す」「相手の傷を受け止める」という聖母化=いい女という幻想を捨てる
5.支配:被支配といった上下関係で人間関係を築くことをやめる
痛いものは痛い、つらいものはつらいと受け止めることと、それを「愛」「恋」などという言葉でキラキラ粉飾しないことが、私は聖母女子化を防ぐ手立てです。
(文:ぱぷりこ イラスト:ほそえあみ/OFFICE-SANGA)
バックナンバーはこちら※この記事は2016年08月25日に公開されたものです