指紋、筆跡、交通事故鑑定、画像解析までやってくれる「民間版CSI」があった!
『CSI』という海外ドラマをご存じですか? CSIとは、Crime Scene Investigationの略で、いわゆる「鑑識課」のことです。鑑識といえば「指紋」「筆跡」などの証拠物を科学的に鑑定するのが仕事ですが、実は日本には、このような科学鑑定を行う「民間」の会社があるのです。
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その会社を『法科学鑑定研究所 株式会社』といいます。
民間版「CSI」というのは海外を探しても珍しいと思われますが、法科学鑑定研究所の剣持貴明さんにお話を伺いました。
世界的にも珍しい民間版CSI!
――どのような鑑定依頼を受けているのでしょうか。
剣持さん 主に、以下のようなことです。
●筆跡鑑定
●指紋鑑定
●交通事故鑑定
●画像解析
●成分分析
――普通は警察などの公的機関で行うような鑑定ですよね。民間でというのは珍しいと思うのですが……。
剣持さん そうですね。例えば、「筆跡鑑定だけ」とか「指紋鑑定だけ」とかそういう会社ならあるのですが、弊社のように総合的に受け付けているという会社は珍しいかもしれませんね。
――警察のOBの方などはいらっしゃるのですか?
剣持さん 会社の設立の際に、科学捜査研究所(科捜研)OBの方々にご協力いただき、各鑑定分野の鑑定人として在籍されております。
科学鑑定は「真実」を明らかにすること
――上記の主な仕事ですが、それぞれどのような内容なのでしょうか?
剣持さん さまざまな依頼がありますが、まず「筆跡鑑定」ですね。
●筆跡鑑定
「この文書が、誰の手によって書かれたものか」を鑑定してほしいという依頼です。例えば、Aさんの署名がされた遺言書があり、本当にAさんが書いたものなのかどうかというケースです。その場合、「遺言書の筆跡」と「確実にAさんが書いた筆跡」とを比較して鑑定します。
この他に「誹謗中傷する文書」や「怪文書」などの筆者を特定したいといったケースもあります
――どのくらいの価格で鑑定してもらえますか?
剣持さん まずは「検査回答」を出すのに20万円です。これは「筆跡が同一か、そうではないのかの検査結果」を出すのに掛かる費用です。この結果を裁判資料にするための「鑑定書」を作成するには、鑑定書作成費として30万円です。
――計50万円ということですか?
剣持さん はい。これは民事事案のケースですが、刑事事案ではもう少しお値段が上がります。いずれも鑑定結果(検査回答)が依頼者の期待する結果ではなかった場合、裁判資料にはならない訳ですので、まずは「検査回答」までの費用で大丈夫です。
――「指紋鑑定」についてはどうでしょうか?
剣持さん まずは問題の対象物から有効な指紋が検出されるかが重要になります。
●指紋鑑定
いろんな物品が持ち込まれるのですが、その物品から指紋を検出し、この検出された指紋とAさんの指紋が合致するかどうかを鑑定します。「ワープロ文字の怪文書」の作成者や発信者特定が事例としては多いですが、やはり問題の物品や書類等から有効な指紋が検出されるのかどうか、が重要なポイントですね。
ドラマの犯罪現場などでは、非常に鮮明な指紋が検出されたりしますが、実際の鑑定では指紋の一部分や不鮮明な指紋しか残っていないこともありますからね。
――どのくらいのお金が掛かりますか?
剣持さん 指紋を検出する対象物の材質や点数などによって違うのですが、基本料金が8万円、薬品代が3-5万円ぐらいです。
――「交通事故鑑定」については? これは難しそうな気がしますが。
剣持さん これは非常にノウハウと経験を必要とする鑑定です。
●交通事故鑑定
起こった交通事故を、客観的な資料や各種データに基づいて再構成します。警察、保険屋さんの意見、また事故当事者の証言も参考にしますが、それらに引っ張られないようにして、客観的に「本当は何が起こったのか」を再現するのです。
具体的には、クルマの破損状況、ブレーキ痕や周辺環境等から、本当はこのクルマは何キロ出していたのかといったことを調べたり、細かいことを積み上げて事故の全容を明らかにします。
――それは難しいでしょうね。調べた結果、思わぬ真実が明らかになった、みたいなこともありますか?
剣持さん はい。私たちの鑑定結果で全容が明らかになり、裁判結果が逆転したケースが「判例タイムズ」に掲載されたりしています。
――この鑑定を依頼するといくらくらいですか?
剣持さん 事故の複雑さや検証方法、検証時間などに左右されるのですが……。まずは関係資料の検証と現地見分による予備鑑定で事故の全体像と事故原因の概要を判定します。そこまでの作業で30-50万円です。
その予備鑑定の結果が裁判等に有効であると依頼者(弁護士さんが多い)が判断した場合、そこから裁判所に提出する鑑定書を作成します。その費用が50万円前後になります。
――なるほど。やはり難しい作業な分だけ値段が張るわけですね。「画像解析」についてはどうでしょうか。そもそも「画像解析」とはどんな依頼ですか?
剣持さん 最近増加傾向にある鑑定分野です。
●画像解析
店舗だけでなく、自宅に防犯カメラを設置する人も増えてきました。その防犯カメラの映像に写っている人や物を特定したい、といった依頼です。
難しいのは、その防犯カメラで物理的に記録されている映像以上に鮮明にしたり識別することはできません。ドラマや映画などでは、パソコン上で簡単に映像が鮮明になったりしますが、あれはうそですからね。
ですので、米粒くらいに映っている人物をハッキリ分かるように鮮明化できますか?のようなご相談がありますが、ドラマなどで「チーッ」ときれいしたりするので、皆さん「できるんでしょ?」とおっしゃるわけですが……物理的に無理なんですね(笑)。
――なるほど。どうするのですか。
剣持さん 弊社では、防犯カメラに不鮮明な状態で映っている人物と、Aさんの写真から、顔認証技術や身体的特徴の比較を行って、同一人がどうかを判定することになります。他には、交通事故の瞬間が記録されたドライブレコーダーの映像から、相手のクルマが何キロ出していたのかという鑑定依頼もあります。
――そんなこともできるのですね。
剣持さん はい。防犯カメラとドライブレコーダー搭載車が非常に増えているので、この種の解析技術はとても求められています。映像の解像度の問題などもあって、なかなか大変なのですが。
――画像解析をお願いした場合に掛かるお金はどのくらいでしょうか?
剣持さん 映像の量や状態にもよりますが、15-50万円ぐらいですね。
――最後に「成分分析」ですが、これはどんなことを行うのですか?
剣持さん これにもさまざまなケースがあります。
●成分分析
例えば、火災現場から灯油の成分などが検出されるのかどうか。これは放火の疑いの有無を判定するために行います。この他に、駐車場に停めてあるクルマに何か白い塗料が付いており、その駐車場の横でマンションの外壁工事を行っていたような場合、工事で使用した塗料がクルマに付いたのではないか、その責任を明らかにしたい。
このような場合には、クルマに付いた塗料と、工事に使用されていた塗料の成分を比較する「成分分析」を行います。
――なるほど。
剣持さん まだあります。クルマのトラブルでよくありますが、駐車場で隣り合うクルマで、ドアを開けた時に隣のクルマを傷つけてしまう事故。いわゆる「ドアパンチ」事故。こういう場合にも、クルマの塗料の分析で事実関係を明らかにします。
――この成分分析にはいくら掛かりますか?
剣持さん ケース毎に異なってしまいますが、15万円ぐらいからお受けしております。
「何ができるか・できないか」は要相談!
――本当にいろんなことができるのですね。一般の人は、民間の会社に依頼してこういったことができるとは思っていないでしょうね。
剣持さん そうかもしれませんね。
――依頼する場合にはどうしたらいいでしょうか?
剣持さん そうですね。科学鑑定で解決できることはたくさんあります。あきらめずに鑑定や調査をしたいことがあったらぜひご相談ください。できること、できないこと、また掛かる費用などをご説明いたしますので。本当にお気軽にご相談いただけたらと思います。
――ありがとうございました。
⇒『法科学鑑定研究所 株式会社』の公式サイト
http://www.e-kantei.org/
(高橋モータース@dcp)
※この記事は2014年12月29日に公開されたものです