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【編集長インタビュー】女性は選択肢が多いから悩む。新雑誌『PRESIDENT WOMAN』が目指すもの

11月7日(金)に発刊する新雑誌『PRESIDENT WOMAN』。市販で一番売れているビジネス総合誌『PRESIDENT』が働く女性のためのビジネス教養誌を発売します。新雑誌のコンセプトは? また、働く女性たちに向けて伝えたいこととは? 今回マイナビウーマン編集部が、今井道子編集長と、編集部の横田良子さんに伺いました。

 

■出版不況と言われる中で、社長が下した決断

――楽しみにしている女性も多いと思いますが、雑誌不況と言われる時代です。今このタイミングで新しい雑誌を出そうと決断された理由を教えてください。

今井編集長(以下、今井) 私たちは『PRESIDENT』編集部に長年所属していたのですが、4~5年前頃から取材先で「PRESIDENTの女性版があったら読みたい」「どうしてないのですか?」という声を聞くようになりました。

そう言われてみると確かに、人口は減っているけれど働く女性は増えているし今後も増えていく。大きなマーケットができあがるのではないかと。それで、2年半ほど前に横田と2人で「企画書をつくってみようか」と話したのがスタートです。それから他の女性社員も誘って、昼休みや土日を使って資料を作って、各部署の責任者が集まる席でプレゼンをしました。でも、やっぱり今の出版業界は縮小傾向。当然のことながら「リスクがある」「止めた方がいいのでは」という声がたくさん出たんですね。

そういった声が出尽くした頃に、社長が「反対意見があるのはわかった。それでも彼女たちにやらせたい」と言ってくださったんです。心の中でいっぱい泣きました。昔、あるビール会社に取材に行ったとき、男性社員の方たちが「僕たちは社長を男にするために働いているんです」っておっしゃったんですが、私たちも「社長を男にするために女の私たちが頑張ろう」という意欲がわいてきたんです。

今井編集長と編集部 横田さん
■働く女性にとって「心の杖」となる雑誌に

――最初のきっかけから2年半。その間、世の中も少し変わりました。紙面づくりで重視したポイントを教えてください。

今井 準備をすすめているうちに政権が変わって、安倍首相が「女性が働く日本」という方針を打ち出しました。社会が変わる大きなうねりを感じました。誌面づくりの際に考えていたのは、働く女性にとっての「心の杖」となる雑誌になりたいということです。悩んだり迷ったり、つらいと感じることは毎日起こるかもしれないけれど、そういうときに開きたくなる雑誌でありたいという想いを吹き込みました。

たとえば、女性マネージャーと一般の方500人ずつにアンケートした結果、仕事や生活の満足度を比べたら、実は役職が上がれば上がるほど満足度が高いことがわかりました。これを意外に思う人もいるかもしれません。女性の中には管理職になることを躊躇する人も多いですから。でも、管理職になったら家族が応援してくれるようになったとか、仕事がやりやすくなったとか、話を聞いてみるとそんな声もあるんです。働き続けると思ってもみない果実があるんだよ、今まで見えなかった風景があるかも、そんな事実も伝えたいと思っています。

横田さん 女性は仕事だけでなくプライベートでも悩みが多いと思うので、夫婦関係や妊活、お金についての特集もあります。お金の特集は「PRESIDENT」でも人気の特集で、これを女性向けに置き換えました。「PRESIDENT」をつくっているときは主に文章を読んでもらえるように工夫していましたが、「PRESIDENT WOMAN」準備のためにいろんな女性誌を眺めていると、図解が入っていたり、写真を効果的に使ったり、情報をわかりやすく伝えるためにすごく工夫してつくられていることがわかりました。そして、私たちの世界観にあったデザイナーさんに出会うことができ、どの写真家さんにお願いするか一緒に考え、イラストや図解、写真をどう使うかを相談しながら進めました。

編集部 横田さん

 

■女性は選択肢が多い その選択肢がすべて働き方につながるから悩む

――ターゲットについて教えてください。

今井 コアな読者層は30代女性を想定しています。今回、たくさんの人にお会いしましたが、そこで長い人生の中で一番悩むのが30代だと感じたからです。働き始めて10年ぐらいたって、一番経験を積むべき時期ですが、女性はこの時期に結婚、出産、育児が重なり、仕事とプライベートで悩みます。悩みの多い世代だから、一番求められているのではと感じました。

女性は選択肢がたくさんあるから悩みます。働くかどうか、結婚するかどうか、出産するかどうか、2人目を産むかどうか……。働いていると、その選択肢はすべて働き方に関わってきます。選択するとき、悩みますよね。そんなときに、「こう考えたら気持ちが少し楽になるよ」と伝えられるといいなと思っています。また、どんな場合であっても仕事を続けるためには周囲のサポートや理解がないと続けられません。ですから、誌面には「ご主人の教育法」というような内容も入れています。

■大企業も中小企業も、女性登用を本気で考えている

――安倍政権は女性活躍を掲げて動いていますが、現状はまだ働く女性に厳しい状況にあるとも感じています。女性の労働環境に関しては、どう感じていますか?

今井 政府は「202030(2020年までに女性管理職の比率を30%まで引き上げる)」という目標を掲げました。そこで現状を知るために、国内にある大企業185社にアンケートをお願いし、129社から回答をいただきました。「女性の役員や管理職は何人いるか」「女性管理職の数に関する今後の目標」といった内容です。詳しくはぜひ誌面をご覧いただきたいのですが、企業が本気で女性の社員を育てようとしているということが伝わってくると私は感じました。日本の社会も変わろうとしているのだと思います。

また、大企業も頑張っていると思いますが、中小企業の方が進んでいることも多いと思います。経営トップと社員との間が近いのでコミュニケーションが取りやすいですし、人数が少ないので優秀な人は必ず戻ってきてもらわなければ困るということで、「なるべく早く戻ってきてほしい」と社員に伝える会社もあるようです。

今井編集長
■「女性一人ひとりがパイオニアだと気づいて」

――政府が動く一方で、働く女性側も変わる必要があると思います。できることとして何があると考えられますか?

今井 取材して感じたのは、女性を取り巻く環境が変化していく社会で、一人ひとりがパイオニアなのだと気づいてほしいということですね。

働きやすい環境になるように頑張っている女性たちがいます。たとえば、女性の官僚の方々。これまで官僚の方たちは、ほとんど徹夜で国会での答弁を作成していました。そこで、女性官僚たちが、「これから女性官僚の3割に達する20代の女性たちが子育て期に入ると限界が来る。」と立ち上がり、「霞ヶ関の働き方を変える10の提言」を作成しました。その結果、前日の18時までに質問項目が通告されることになり、働き方が変わったとのことです。

勇気ある行動だと思います。女性官僚の提言に国会が動かされた結果、男性官僚も早く帰れるようになったとのことです。少子化ジャーナリスト白河桃子さんの記事ですので、ぜひご購読いただければと思っています。
これはひとつの例ですが、日本の社会がずっと続けてきた慣習、それを変えれば女性も男性ももっと楽に働けるかもしれません。早く家に帰って子どもと遊べたり、地域で別の活動ができたり。男性は長時間労働から帰ったら寝るだけという方が多いのかもしれませんが、働き方が変われば社会が変わります。働き方を変えられること、変える必要性に気付き始めているのは、それを突きつけられる女性なのだと思います。社会や自分が変わるために一人ひとりができることがあると思うので、ぜひ自分たちがパイオニアの世代であるということを噛みしめて、毎日活動をしていただけたらいいのではないかと思います。

――マイナビウーマンの読者は20代後半から30代の女性読者がメインです。彼女たちに向けてメッセージをお願いします。

今井 『PRESIDENT WOMAN』を準備する中で、一生懸命働いている大勢の女性たちに出会いました。名もなき実力者たちが大勢いるということです。つらいこともあるけれど、働く喜びを見つけている人も多くて、そうすると「もっとこういう風に働きたい」「いい仕事がしたい」という意欲につながります。だから、働く喜びを見つけましょう。そのお手伝いをこれから『PRESIDENT WOMAN』がしますよ、とお伝えしたいですね。

――今井編集長、横田さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

今井編集長と編集部 横田さん

 

 (構成・文:プレスラボ 小川たまか、 聞き手:編集部 川島)

※この記事は2014年11月06日に公開されたものです

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