TPP参加で、遺伝子組み換え食品は増えるのか?「世界の大豆の約8割は遺伝子組み換え」

しょう油や豆腐に見かける「遺伝子組み換えでない」の表示。逆に「遺伝子組み換えです」と書かれていたら、ちょっと考えてしまう人も多いだろう。
【夫婦げんかの回数も遺伝子が決める「5-HTTLPRという遺伝子」―米研究】
本来は植物にはない性質を持たせる遺伝子組み換えは、害虫を殺すなど強い作用を持つため、安全性の国際基準が設けられている。TPP参加後は増えるなんて言われているが、現在も輸入量の70~80%は遺伝子組み換え作物で、気づかないだけで大量に流通しているのだ。
害虫をやっつける植物!
味はもちろんのこと、農作物に求められるのは収穫量と強さだ。そのため古くから品種改良がおこなわれ、例えば、
・病気に強い品種
・収穫量が多い品種
を交配(こうはい)させ、両方の長所を取り入れようと工夫がなされてきた。もちろん、必ず成功する保証はなく、成長するまで結果もわからないので、多大な時間と労力が必要となる。ブランド米で知られるコシヒカリも交配から生まれ、倒れやすい/病気になりやすいデメリットがあるものの、おいしさが優先され多くの農家で栽培されるようになった。
対する遺伝子組み換え(GM)は、植物の遺伝子を取り出し加工してから戻す、本来は持ち合わせていない遺伝子を強制的に埋め込む方法で、確実におこなえ、結果もある程度予測できるのが特徴だ。現存するものでは、
1.特定の成分を多く含む(栄養価を高める)
2.除草剤に強い
3.害虫を駆除する
が多く、特筆すべきは3.で、その作物を食べた害虫が死んでしまう成分を持つようになるのだ。
これはBtタンパク質と呼ばれる、虫にとっては有害な成分を利用した方法で、順に、
・遺伝子組み換えで、作物がBtタンパク質を作れるようになる
・害虫が、その作物を食べる
・Btタンパク質が消化管の細胞を破壊し、害虫が死んでしまう
仕組みだ。殺虫剤のようなイメージだが、人間はBtタンパク質を吸収することがなく、また胃酸で分解してしまうため影響を受けない。加えて、GM作物を世に出すためには、日本では専門調査会の審査、厚生労働省の許可が必要となるので、必要以上に不安を感じる必要はないだろう。
元祖・大豆は、希少食品?
TPPに参加すると、GM作物が増えるのか? 答えはNoで、焦点となる関税撤廃を理由に、爆発的に増えるとは考えにくい。
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)の資料によると、2013年の世界の作付面積、GM作物の割合は、
・トウモロコシ … 180万ヘクタール / 32%
・ダイズ … 110万へクタール / 79%
・ナタネ … 40万ヘクタール / 24%
ほどで、日本食に欠かせないダイズのほとんどが、すでにGM作物になっている。「遺伝子組み換えでない」大豆が激レアになるのも時間の問題だ。
さらに、
●輸入率
・トウモロコシ … ほぼ100%
・ダイズ(全体) … 92%
・ダイズ(食用) … 75%
●関税
・ダイズ … 無税
・トウモロコシ … 無税
を加味すると、もともと無税なので関税が撤廃されても輸入量が増える理由にはならない。それ以前に、大豆製品の約60~72%(理論値)はGM作物なので、今後TPPに参加してもしなくても、すでに何らかの形で口にしていると考えるべきだろう。
まとめ
・遺伝子組み換えで、除草剤に強い植物が誕生している
・害虫だけに作用する、Btタンパク質を作る作物もある
・世界の大豆の、約8割は遺伝子組み換え
・もともと無税の大豆は、関税が撤廃されても輸入量が増える理由にならない
味噌や豆腐に代表される大豆は、和食の「かなめ」と言えるだろう。
GM作物かどうかよりも、国産大豆がなくなってしまうほうが心配だ。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年06月21日に公開されたものです