シェイクスピアの『真夏の夜の夢』にみるユーモアのセンスとは?
●『真夏の夜の夢』は、シェイクスピアの代表的ロマンス喜劇
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シェイクスピアのロマンス喜劇は、ユーモアのセンスであふれている。特にこの作品には、シェイクスピア喜劇のエッセンスが詰まっている。それは、人間の移ろいやすい心を笑い飛ばしてわれわれを愉快にさせる仕掛けである。
●ロマンス喜劇『真夏の夜の夢』のあらすじ
舞台はギリシャのアテネ。大公のシーシアスの宮殿。シーシアスは婚約者のヒポリタともども、結婚式が待ちきれない。そこに美人で若い娘ハーミアが父の決めた婚約者ディミートリアスではなく、自分の選んだライサンダーとの結婚を申し出る。
アテネの法律では、父親の決めた相手と結婚しなければ、厳しい罰を受けなければならない。そこで恋人ライサンダーとハーミアは、駆け落ちをする。それをハーミアの友人で、ディミートリアスにぞっこんのヘレナに伝える。
ヘレナは、ディミートリアスの気をひきたくて、その事を彼に告げてしまう。
駆け落ちの途中、ライサンダー、ハーミア、ディミートリアス、ヘレナの4人が魔法にかけられてしまう。そこでは妖精の王オーベロンと、女王タイターニアが夫婦喧嘩をしている。オーベロンが妖精パックに命じたのは、アテネの服を着た若者が寝ている間にほれ薬を目の上にたらすというもの。
その男が起きたら、最初に目にする者に恋してしまうという薬。ところがパックは間違った男の目にほれ薬をたらしてしまう。結果として、これまでディミートリアスを追い求めていたヘレナを、二人の男たちが恋い焦がれて追いかけることに。
ハーミアは、ポカンとしたままこれまで自分に恋していたディミートリアスと、自分の恋人ライサンダーがヘレナを追いかける姿を見る。そして、パックがオーベロンの指示で、オーベロンの妻タイターニアの目にもほれ薬を塗り、タイターニアは、魔法で“馬の頭”にされてしまった職人に恋い焦がれる。
最後は、ディミートリアスもハーミアへの熱が冷め、以前に約束を交わしていたヘレナとの結婚を申し出、ライサンダーとハーミアも結婚できることになる。大公の結婚式の日に一緒にこの二組も結婚できることになり、ハッピーエンドを迎える。
●シェイクスピアのユーモアのセンスは、シチュエーション・コメディの原点?
このように恋い焦がれて追う側と、追われる側が逆転してしまったり、プライドの高い妖精の女王が、およそ恋の対象には程遠い“馬の頭”になった職人にぞっこんになります。こうしたシチュエーション(状況)の面白さがシェイクスピアの笑いの原点です。
それはまた、現代のテレビのコメディー番組、特にシチュエーション・コメディの原点ともいえるでしょう。シェイクスピアはこの劇で、移ろいやすいわれわれの恋心を、悲観するのではなく、笑い飛ばしています。どのようなことが起こっても、それをすべて肯定してしまう底抜けな明るさがあるのです。
(文:深山敏郎/(株)ミヤマコンサルティンググループ/コミュニケーションズ・スペシャリスト)
●著者プロフィール
著書:「できるリーダーはなぜ『リア王』にはまるのか」~100冊のビジネス書よりシェイクスピア~ 青春出版社刊。コミュニケーション改善の請負人として、高級ホテル、外食チェーン、外車ディーラー、IT企業など、20年で延べ4万人あまりを直接指導。夢は、英国でシェイクスピア芝居を英語で上演すること。
http://www.miyamacg.com/
お問合せ先:info@miyamacg.com
※この記事は2014年03月07日に公開されたものです