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本当に明るい星はどれ?~実視等級と絶対等級~

夜空に輝く無数の星たち。そんな星の明るさを示す数値を「等級」と言います。

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俗に言う1等星や2等星といった呼び方がそれに当たりますが、一般的によく使われている見た目の明るさを示す値が「実視(じっし)等級」、そしてその星の本当の明るさを示す値が「絶対等級」です。どちらも値が小さくなるほど明るい星を指します。

実視等級とは

実視等級という考え方が生まれた歴史は古く、紀元前の古代ギリシアにまでさかのぼります。

紀元前150年頃、古代ギリシアの天文学者「ヒッパルコス」は、特に目立つ明るい星を1等星、肉眼でやっと見えるほど暗い星を6等星と定め、その間を段階ごとに2~5等星に分けました。まだ明るさを測定する装置などは存在しない時代ですから、これらはすべて感覚に基づいて決められていたわけです。

実視等級の定義

その後、望遠鏡の技術が発達するにつれて、6等星よりも暗い星が観測できるようになり、それらは7等星、8等星…といった感じに分けられていきました。

やがて19世紀に入ると、イギリスの天文学者「ジョン・ハーシェル」は、それまでの1等星と6等星の明るさの差がおよそ100倍であることを発見しました。

それをもとに、同じくイギリスの天文学者「ノーマン・ポグソン」がこの定式化を試み、1等級の違いはおよそ2.5倍の明るさの違い(2.5の5乗≒100)であるという関係性を定義、数式化することに成功しました。

これにより、1.2等星や3.85等星といった感じで小数点レベルまで細かく分類することが可能になったと同時に、7等星以下の暗い星や1等星以上の明るい星(マイナスの等級など)についても明確に決めることができるようになりました。

実視等級の基準となる星は?

このようにして1等級の違いを数式化できました。ただ、それには基準となる星を決める必要があります。

最初は、「ヒッパルコスが選んだ20個の星の平均の明るさを1等星とする」としていましたが、平均という表現がわかりにくいため、その後「北極星を2.0等星とする」という定義に変更されました。しかし、北極星が明るさの変わる変光星であることがわかると、これも基準としては使えなくなってしまいました。

現在では、基準となる複数の星を決め、そこから得られた明るさをもとに等級を決めています。

絶対等級とは

実視等級が見た目の明るさを示すのに対して、絶対等級は文字通り、その星の絶対的な明るさを示しています。

でも、ここで言う絶対的な明るさとは何を指すのでしょう。
例えば、地球から見ると太陽はものすごく明るい星ですが、それは近くにあるからです。逆に、太陽より遠い場所に、太陽より明るい星だって、きっとあるはずです。

実際、太陽と北極星を同じ位置に並べたとすると、北極星の方がはるかに明るく輝くことが分かっています。北極星がとても遠いところにある星のため、地球から見るとそれほど明るく感じないだけです。

この真の実力(=絶対的な明るさ)を表す数値こそが絶対等級なのです。

絶対等級の定義

絶対等級では、すべての星を公平な条件で見ないといけないため、同じ場所に置いたと仮定してその明るさを示します。そして、その場所というのは、地球から約32.6光年離れた場所を指します。

なぜ32.6光年という中途半端な距離を使うのかについては、またの機会にご説明したいと思いますが、ここに置くと、太陽は4.8等級(実視等級:-26.7等級)、北極星は-3.64等級(実視等級:1.97等級)、おおいぬ座のシリウスは1.45等級(実視等級:-1.46等級)となります。

つまり、実視等級では明るい順に並べると「太陽>シリウス>北極星」となりますが、絶対等級で見ると「北極星>シリウス>太陽」の順となります。

地球に住むわれわれにとっては、偉大な存在である太陽ですが、広い宇宙の中で見ると、それほど目立つような明るい星ではなかったということですね。

まとめ

普段よく聞く1等星や2等星という言葉は「実視等級」を示し、その星の本当の明るさを示す値が「絶対等級」でした。

地球から見ると暗くて目立たない星も、同じ位置に並べて公平に見てみると実はものすごい実力を持っていた…なんてことがありうるというわけですね。

(文/TERA)

TERA。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2013年08月27日に公開されたものです

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