動物の不思議「ゾウは重低音で10km先の仲間と会話」「キリンは1.5mの高さから赤ちゃんを産み落とす」
動物園の人気者ゾウやキリンは、愛らしい表情とのんびりした動きが心を癒してくれる存在だが、実態は不思議がいっぱいの動物だ。
ゾウは人間が聞こえない重低音で10km先の仲間と会話し、キリンは1.5mの高さから赤ちゃんを産み落とす。野生の世界は、小説よりも奇なのだ。
おしゃべり好きなゾウ
長い鼻と大きな耳、ゴツゴツした巨体と対照的に小さい目が和みを感じさせるゾウは、人間よりもはるかに優れたコミュニケーション方法を持つ。低周波を使って10km以上も離れた仲間と会話するのだ。
人間が聞こえる音の高さは20~20,000Hzが標準的で、100Hz以下を低周波音、20Hz以下は超低周波音と呼ばれる。
88鍵のピアノの一番低い音が27.5Hzのラだから、一般的に聞こえる低音の限界に近い。対してゾウは10~100Hz、特に10Hz前後の超低周波音を使って仲間とコミュニケーションする。
サルや鳥のように鳴き声で危険を知らせる動物が多いなか、ゾウは挨拶や自分の行動など、100種類以上の言葉を持つというから驚きだ。
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低周波は人間にとって聞こえないばかりか、健康被害を引き起こすこともある。いらいら、圧迫感、頭痛、耳なり、吐き気などが典型症状で、被害をもたらす音の大きさをdb(デシベル)で表すと、
・120db … 非常に強く感じる
・100db … 感じ始める、睡眠への影響が現れはじめる
・92db … 苦情かどうかの参照値
なのに対し、ゾウは苦情すれすれの85~90dbの大音量を放つ。
1m先の自動車のクラクションが約110dbなので、90dbは2台後ろのクルマ(9m先)のクラクションに匹敵する。遠いほど音は急激に小さくなるので10km先なら大丈夫だろうが、至近距離なら不眠になりかねないので夜間の会話は控えて欲しい。
我が道をゆくキリン
つぶらな瞳と長い首がちびっ子達に人気のキリンは、優しい顔立ちとは裏腹に気性が荒い。
長さ1.8mの長足を生かした走りは時速50kmに達し、前足のキックでライオンをも撃退する、見ている子供たちが泣き出すぐらいにどう猛な動物なのだ。
キリンは歩き方に特徴があり、四足歩行では左前+右後のように対角線上の足を同時に繰り出すのが定番なのに対し、左前後→右前後と交互に動かす側対歩(そくたいほ)をおこなう。
側対歩では一歩繰り出すたびに左右どちらかが宙に浮きバランスが悪い。緊張した人間が、左手+左足を同時に繰り出すようなもので、早く走るのにも不向きなのだが、なぜかキリンはこの非合理的な方法をとり続けている。
ちなみに江戸時代の武士も左手+左足の側対歩で走ったとされるが、これは腰につけた刀が振れないための工夫で、キリンの謎には何の関係もない。
キリンの妊娠期間はおよそ450日。激しく揺れるお母さんの胎内で15か月も過ごす赤ちゃんは、きっと船酔いにも強いはずだ。出産も過激で、母キリンは立ったまま赤ちゃんを産み落とす。
1.5mほどの高さからクッションもない地面に赤ちゃんを産み落すスパルタ出産なのだ。野性を生き抜くための試練と言われれば反論の余地はないが、せめてしゃがんだらどうですか、と言いたい。
こんにちは赤ちゃん、わたしがママよ。
不思議の塊とも言えるキリンの天敵は、意外にも肉食動物だけでない。長い首が災いして落雷事故が多いのだ。頭を下げれば良いのだが、残念ながらまだこの方法を知らないようだ。ただし長時間頭を下げていると別の危険が襲ってくる。
高い頭にも血が届くよう超・高血圧なのが災いし、頭に血が行き過ぎてしまうからだ。
キリンの血圧は最高260mmHgとも言われ、人間ならとっくに病院行きの状態で、水を飲むために頭を下げても負担がかかる。ちなみに名前の由来は伝説の動物・麒麟(きりん)。不思議さなら伝説に負けずとも劣らないキリンにぴったりの名前だ。
まとめ
日本ではゾウもキリンも特定動物、つまり都道府県知事または政令市の長の許可がないと飼えない。
逆にいえば、許可が下りれば飼育可能だから、興味のある方は一緒に暮らしてみるのも良いだろう。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2013年06月30日に公開されたものです