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「女性手帳」の配布に賛否両論……専門家はどう見てる?

最近話題になっている「女性手帳」(仮称)。政府から若い女性に向けて配布が検討され、女性の体のメカニズムや妊娠・出産に関する知識を盛り込んだ内容が予定されています。この手帳には、当事者である女性たちからは好意的な意見だけでなく、否定的な意見も多数寄せられていることは、マイナビウーマンでも報じてきました。

好意的な意見としては、「まわりの先輩方にも不妊治療をしている人が多いので、早い時期から考えることは大切だと思う」(33歳/コンサル/経営・コンサルタント系)、「30代になってから、出産がいつまでもできるわけではないことや卵子の老化を知る女性が多いと聞くので、女性手帳に賛成。今まで、教育の機会が少なすぎたと思う」(28歳/団体・公益法人・官公庁/事務系専門職)といった、知るきっかけとしての手帳を前向きにとらえる声が。

一方で、「女性が子供を産むことを強制されているように感じる」(33歳/その他/事務系専門職)、「その前に、やることがたくさんあるはずだと感じている」(22歳/プラント/事務系専門職)、「手帳を貰うだけで具体的な支援や補助などがきちんと見えてこない。一時的な支援でなく、より育てやすくする環境整備の方を進めるべきだと思う」(25歳/商社・卸/事務系専門職)といった声も。女性手帳の位置づけに不安を感じたり、その他制度や環境整備を先に進めるべきとする意見が寄せられました。

賛否両論ある「女性手帳」ですが、専門家はどう見ているのでしょうか? NPO法人 日本ライフデザインカウンセラー(JLCA)の事務局長として、未婚化や晩婚化問題に取り組んでいる原口博光氏に聞きました。

「女性手帳が、女性のための健康管理という観点のものならばいいのですが、結婚を押しつけるような内容ならば、少々問題があるのではないでしょうか。10年近く結婚や少子化問題に携わっていますが、関わった人の中には“結婚しない”と決めている人もいます。女性手帳が、彼女たちに結婚を強制することにならないよう、配慮してほしいです」

結婚の形は人それぞれ。そこを前提にしておかないと、不快に感じる人も出てくるでしょう。そして手帳には「30代半ばまでの出産が望ましい」という、出産適齢期に関する記載がされるようですが。

「実体験なのですが、私の妻は不妊治療を受けずに46歳で第一子を出産しました。生物学的な年齢の限界があるのは仕方がありませんが、私の妻のような例があるのに『“妊娠が望ましいのは◯◯歳”と書かれていたから出産をあきらめる』という判断をされてしまう事態が増えるのは避けたいですよね。国の政策となると、どうしても医学的な内容に偏ってしまう傾向があります。そういう面では適齢期の記載は強すぎる表現だと思います」

妊娠する年齢には個人差がありますから、その辺りの表現やどんなことを伝えるべきかといったことには、まだまだ議論の余地がありそうですね。手帳がきっかけとなって、逆に出産を諦めてしまう人が出たら、元も子もありません……。

「とはいえ、この女性手帳があれば、結婚後の仕事や育児の両立はどうするかなど、人生計画を立てやすくなります。またパートナーの男性もこの手帳を読んで、“女性の体”を知ることができますから、こういうアイテムが推奨されること自体はいいことです。中には、女性の体に対してまちがった知識を持っている男性もいますから、男性向けの『手帳』をつくることも検討するべきです」

なるほど、人生設計を考えるきっかけだったり、パートナーと知識を共有するための女性手帳なら役に立ちそう。配布はまだ先ですが、利用者のためになる一冊になることを願っています。

★原口博光
東京大学法学部卒業後、経産省にてブライダル業界や結婚相談業界の進行に携わりつつ、少子化政策を担当。現在はNPO法人(JLCA)の事務局長として、未婚化や晩婚化問題に尽力的に取り組んでいる。NPO法人日本ライフデザインカウンセラー協会(JLCA)

(大貫未来/清談社)

※『マイナビウーマン』にて2013年5月にWebアンケート。有効回答数265件(マイナビウーマン会員:22歳~34歳の働く女性)

※この記事は2013年05月15日に公開されたものです

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