新人女子に興味津々の彼。男ってみんな若い子が好きなの?
課長は「よくやった。ありがとう」と言ってくれて、
わたしはすべてが終わったことが少し寂しくて、
人のいないところで、ちょっとだけ涙した。
それから金曜の夜遅く、わたしは一応連絡した後、
盛幸の家に、ビールを持って押しかける。
「研修がうまくいかなかった時、
八つ当たりしちゃったかも……ごめんね」
「いいよ。おれも仕事うまくいかなくて、
機嫌の悪い時はあるから、おたがいさまだろ」
シャワーを浴びたばかりの盛幸は、
髪の毛をガシガシ拭きながら、そう言った。
バスタオルの隙間から見える目は笑っている。
「でもほら、わたしは八つ当たりされると、
倍ぐらい言い返すじゃない?」
「じゃあこれからは、その『倍の言い返し』
やめればいいよ」
「ヤだ、そんな八つ当たりのされっぱなし!」
そう言うとわたしたちは、ふたりして大笑いした。
どうして盛幸は、こんなにやさしいのだろう?
その理由がぜんぜんわからないまま、
心の支えになってくれる彼に感謝しながら、
冷蔵庫を開け、冷えた缶ビールをとって渡した。
(終わり)
※この記事は2013年04月04日に公開されたものです