【時候の挨拶】2月に使える挨拶言葉は? 書き方や文例を紹介
仕事で案内状などの文面を作成する時、プライベートでかしこまった手紙を書く時など、どう書き始めたらいいか悩みませんか? そこで便利なのが「時候の挨拶」。今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、1月の時候の挨拶を教えてもらいました。
2月は、春立つ季節。「立春」の日は、旧暦では年の始めとされていました。
「元旦に1年の計画を立てたのに、三日坊主で終わってしまった」という方は、立春で仕切り直しても良いでしょう。
寒の戻りを繰り返しつつ、日一日と春に近づいていく月。大切な方へ書く便りは、冬から春へと向かい、明るく弾む気持ちを届けてくれることでしょう。
時候の挨拶とは?
時候の挨拶とは、季節や月の気候・行事を踏まえた挨拶で、手紙やメールの初めの部分に書く言葉や文章を指します。
「立春の候」のように、「熟語などの一語」+「候」という形もあれば、「春とはいえ肌寒い日が続きますが」のように、文として書く形もあります。
ビジネスシーンやプライベートでは、書面や手紙での連絡、改まったメールの冒頭部分において使われます。
2月の「時候の挨拶」
2月の手紙に使える時候の挨拶を紹介します。
公文書やビジネスレターなどでは「〜の候」で始めることが多いですね。「候」の代わりに使える言葉として、「頃・節・季節・みぎり」などがあります。
なお、「みぎり」とは、「時、折、時節」という意味です。漢字では「砌」ですが、あまりなじみがないため、ひらがなで表記する方が良いでしょう。
・「大寒(だいかん)の候」大寒(2022年の大寒は1月20日)から立春(りっしゅん。2022年の立春は2月4日)前日まで
・「寒中(かんちゅう)の候」小寒(しょうかん。2022年の小寒は1月5日)から立春前日まで
・「晩冬(ばんとう)の候」立春まで
・「残冬(ざんとう)の候」立春まで
・「立春(りっしゅん)の候」立春から雨水(うすい。2022年の雨水は2月19日)前日まで
・「残寒(ざんかん)の候」立春以降
・「予寒(よかん)の候」立春以降
・「春寒(しゅんかん)の候」立春以降
・「向春(こうしゅん)の候」立春以降
・「浅春(せんしゅん)の候」立春以降
・「梅花(ばいか)の候」2月下旬
上記の時期は、あくまで目安です。
本格的な寒さが続く2月。雪の降る地域も多い頃ですが、暦の上では2月4日に立春を迎えます。
「春とはいえ余寒厳しく」といった表現がメディアでもよく聞かれることでしょう。
ただし、文字として残ってしまう手紙では、できればほっとする気持ちや、春へ向かう明るさを届けたいもの。
「寒さの中にも春の便りが……」「雪の中にも、木々の芽が……」というような「寒さ+春の予感」という流れにすると、相手にも暖かさや希望を感じてもらえます。
特に、氷が溶けて水になるという意味の「雨水」(2022年は2月19日)の頃は、草木が芽吹き始めます。三寒四温を幾度か繰り返しながら、寒い日よりも暖かな日が少しずつ増えていくのですね。
ただ、「雨水の候」という表現は正しいのですが、「雨水」が「あまみず」と読み間違えられやすいことから、最近ではあまり使われなくなっているようです。
雨水の他にも、「立春」「梅の香」「春一番」など春らしい言葉はたくさんあります。どれにしようかと工夫するのもまた手紙の楽しみだといえるでしょう。
例文
・三寒四温の日々、ご健勝のこととお喜び申し上げます。
・立春とは名のみの寒さですが、日々ご活躍のご様子、まぶしく拝見しております。
・梅花の香りに本格的な春の訪れがいよいよ待たれる頃でございます。
・寒さの中にも、木々の芽が春支度。新しい季節が待ち遠しいですね。
・春まだ浅しとはいえ、先日はほのかな梅の香が漂ってまいりました。
2月の「結びの挨拶」(例文付き)
続いては、2月にふさわしい結びの挨拶を紹介します。
「結びの挨拶」とは、本文で用件などを述べた後、結語(「敬白」「敬具」「かしこ」など)の前に添えるものです。
「末筆ながら、○○さまのご健康とご活躍を願っております」のように、相手の健康や繁栄を願ったり、「○○さまによろしくお伝えください」などのように、伝言を依頼したりする役割があります。
例文
・雪解け間近、暖かくなったらおいしいお店へご一緒したいですね
・まだまだ寒の戻りもございますが、花の便りを楽しみにいたしましょう。
・先日は春一番が吹きました。季節の変わり目、ご自愛くださいませ。
・一雨ごとに寒さが緩んでまいりますね。ご家族皆さまのご健康を願っております。
・春寒の折、ご多忙とは存じますが、お互い健やかに過ごしましょう。
2月の時候の挨拶「シーン別の例文」
時候の挨拶を組み入れた例文を、ポイントともに以下に紹介します。
今回は、「来店お礼状」と「開店のお知らせ」です。
来店お礼状
昨今は、来店されたお客さまへのお礼をSNSで送ることも多いでしょう。手紙を出すことも少なくなっています。
しかし、だからこそ、そのちょっとした一手間でお店への愛着につながることもあります。
特に、早いほど印象鮮やかに感じてもらえる来店お礼状は、当日から翌々日までの間に送りましょう。来店されたばかりなので、「いかがお過ごしでしょうか」というご機嫌伺いの言葉も不要。すぐにお礼の言葉から始められるので、シンプルかつ効果的です。
例文
拝啓 本日はご来店いただき、誠にありがとうございました。
ふと「そういえば、○○さまが初めてお運びくださったのは節分の頃だった」と思い出していた時で、本当にうれしいサプライズでございました。
髪の調子はいかがでしょうか? ちょうど良いサンプルがございましたが、お渡しし忘れておりましたので同封いたします。お試しくださいませ。
ご多忙のことと存じますが、ご無理のないようお過ごしください。
今後ともお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。
敬 具
開店のお知らせ
お店や営業所などのオープンでは、事前に開店や開業のお知らせを送ります。
一般的な挨拶に加え、特徴や思いをシンプルに加えると良いでしょう。あまり自画自賛するようなものよりも、貢献性を中心に誠実なメッセージを届けるようにします。
日時や場所、プレゼントのお知らせなど必要事項は、挨拶文の後に分けて書きましょう。
例文
拝啓 向春の候ますますご隆昌のこととお慶び申し上げます。
平素は私ども株式会社○○に格別のご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。
さて、このたび弊社では左記の通り念願の支店をオープンする運びとなりました。
日本の伝統をモダンにアレンジした生活雑貨が中心のお店でございます。
梅香のごとく、皆さまの暮らしにほのかな彩りを届けられたらと願っております。もし、お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りくださいませ。
まずは書中を持ちまして、開店のお知らせを申し上げます。
敬 具
記(この後に必要事項)
時候の挨拶をビジネスレターで使う場合の書き方と注意点
最後に、基本的な手紙の形式と注意点を紹介します。
手紙の形式
手紙の形式に必ずしも決まりはありません。個性的な手紙が喜ばれることも多いものです。
ただし、面と向かって会う時とは違い、特にビジネスシーンでは失礼にならないようにと考えることが多いため、慣習的な順序に沿った手紙の形式があります。
大きく分けると「前文・本文・末文・後付け・副文」の順です。
「前文」:頭語
「頭語」とは手紙の冒頭に用いる言葉で、後述する「結語」と対応するものを用います。
頭語には、次のようなものがあります。
【一般的な頭語】
拝啓・拝呈・啓上・啓白・呈上・拝進
【特に丁重な頭語】
謹啓・粛啓・恭啓・謹呈・敬呈
【返信する場合の頭語】
拝復・復啓・敬復・拝披
【返信が来ないうち再送する場合の頭語】
再啓・再呈・追啓・再白・再陳
【急ぎの場合の頭語】
急啓・急呈・急白・急陳・火急
【時候の挨拶を省略する場合の頭語】
前略・略啓・略陳・草啓・冠省・前省・略省・寸啓
「前文」:時候や安否の挨拶
頭語の後に1文字分空けて、前段で紹介したような「時候の挨拶」を書きます。
事務的な文章では時候の挨拶を省き、「時下ますますご清栄のこことお慶び申し上げます」などと書くこともできます。
安否の挨拶は必須ではありませんが、書く場合には、時候の挨拶の後に続けます。
まず相手の安否に触れてから、次に自分の安否や近況について「私どもは元気に過ごしております」などと述べます。
また病気見舞いや相手側に不幸があった時には、自分側の安否や近況は述べないようにします。
「本文」:起辞
「前文」である時候の挨拶の後に、改行をし、1文字下げて書きます。
起辞とは、書き出しから用件に移る際の接続詞で、「さて・ところで・早速ながら・このたびは・今般」などがあります。
返信の際には「ついては・つきましては」などを使います。
「本文」:用件
起辞に続いて、用件を書きます。
移転・転任・結婚・転職・退任・お礼など、さまざまな用件があります。気配りをしつつも、誤解や不明のことが生じないよう、具体的に書きましょう。
「末文」:結びの挨拶
「本文」の用件の後に、改行をし、1文字下げて書きます。
基本的には相手の健康や繁栄を願う言葉を書きます。さらに、伝言を添える場合もあります。
「末文」:結語
結びの挨拶と同じ行の最下部か、改行した次行の下方へ配置します。
「頭語」と対応させる言葉を用います。具体的には、次のようなものがあります。
【一般的な結語・返信や再送する場合の結語】
敬具・拝具・拝白・敬白・拝答
【特に丁重な結語】
敬白・謹白・謹具・再拝・謹言・頓首
【急ぎの場合・時候の挨拶を省略した場合の結語】
早々・怱々・不一・不二・不備・不尽
「後付け」:日付
「末文」の後に改行し、2~3字下げて年月日を書きます。
「後付け」:署名
日付の次行の下方に、差出人名を(自筆で)書きます。
「後付け」:宛名・敬称
署名の次行の上方に、相手の氏名を書き、「様」「先生」などの敬称を添えます。
宛名が連名の際は、敬称はそれぞれに付けます。なお、「御中」は会社や団体に用います。
「副文」
副文とは、書き漏れたことや付け加えたいことを短く添える文章のこと。「追伸・追白・尚々」などと書き出します。
ただし、副文には「重ねて申し上げる」というニュアンスがあるため、お悔やみ状や目上の人への手紙では使用しないのがマナーです。
時候の挨拶についての注意点
お詫び状や見舞状など、急な手紙では頭語や時候の挨拶を省き、以下のようにすぐ本文に入ります。
お詫び状(例文)
・先般はご迷惑をお掛けし、大変申し訳なく思っております。
災害の見舞い状(例文)
・このたびの台風○○号による浸水、被害が大きく心配しております。状況はいかがでしょうか。
病気の見舞状(例文)
*・このたびはご入院されたとのこと、驚いております*。
病気見舞いでは「たびたび」「四」などの忌み言葉に気を付けましょう。
また、長期の入院で文通のようにやりとりしている手紙では、季節の言葉も入れて良いでしょう。
季節を先取りする日本の文化
きものの柄が季節を先取りしていることは、きもの好きの間ではよく知られています。
自然界の梅が咲くのは1〜3月ですが、写実的な梅柄のきものを着るのは、新年から立春までがおすすめとされています(図案化されたパターン的な柄の場合は、通年着られます)。
季節は、先取りすることで楽しめるもの。2月の手紙でよく「春とは名のみ」と言いながらも、「春」という言葉を使うところに、日本人らしい自然との付き合い方が見え隠れしているように感じられます。
(前田めぐる)
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