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「若輩者」の意味と読み方は? 使い方や類語を解説(例文つき)

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「若輩者ですが」は新人のあいさつなどでよく聞きますが、正確な意味を知っていますか? また、何歳まで使える言葉なのでしょうか? 今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、「若輩者」の意味や類義語、言い換え表現を例文と併せて解説してもらいます。

「若輩者ですが」は新人のあいさつなどでよく聞きますが、正確な意味を知っていますか? また、何歳まで使える言葉なのでしょうか? 今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、「若輩者」の意味や類義語、言い換え表現を例文と併せて解説してもらいます。

「若輩者ですが」は、結婚式や宴会などでよく聞く定番のあいさつフレーズです。聞き慣れている言葉なので、何となく簡単に使えそうな気がしますね。

しかし「誰に対して使えるのか?」「他人を紹介する時に使えるのか?」と問われたら、あいまいなところが意外と多いのではないでしょうか。

この機会に、使い方をマスターしましょう。

「若輩者」の意味

まずは、「若輩者」の意味について説明します。

「若輩者」の意味

「若輩者」を辞書で引くと、次のように書かれています。

じゃくはいもの【弱輩者・若輩者】
経験が浅く未熟な者。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

辞書によれば「若輩者」という言葉は、経験が浅く、未熟な人のことを意味するものです。自分をへりくだっていう時や、他人を軽蔑していう時にも使います。

また、「者」をつけない「若輩」だけでも「人、者」という意味が含まれています。

じゃくはい【弱輩・若輩】
年が若い者。また、経験が浅くて未熟な者。
▼自分を謙遜して、また他人を軽蔑していう。
(『明鏡国語辞典 第3版』大修館書店)

以上のことから、「若輩者」とは、年齢的に若い人や、その道で未熟な人のことを自身が謙遜して使う言葉です。

他人に使うこともできますが、軽蔑している意味になり、注意が必要です。「若輩」も同様の意味です。

また、漢字の使い方として「弱輩者」でも間違いではありませんが、「若輩者」と表す方が一般的です。

「若輩者」はどんな時に使えるのか?(例文つき)

 

「若輩者」という言葉は、ビジネスでは「自分の年齢や実力に見合わない大きな役を任された」という場面で使われることがほとんどです。

いくつか、紹介しましょう。

大役を任されてあいさつする時

自分の年齢やスキルに見合わない大きな任務を与えられた時は、「若輩者」を使うことができます。

場面としては、プロジェクト開始の際、社員大勢やスタッフにあいさつする場面などが考えられます。

年齢的に上のメンバーが多い場合は特に「ご迷惑をお掛けすることがあるかと存じますが」と加えると、謙虚な姿勢を感じさせます。

例文

・新プロジェクトのリーダーを仰せつかり、身の引き締まる思いです。若輩者でご迷惑をお掛けすることがあるかと存じますが、皆さんのご協力をよろしくお願いいたします。

イベントの司会を務める時

イベントや会合など、大勢の人が集まる席には、来場者も多種多様です。

自分より年齢や役職が上の人もたくさん見受けられるような場面では、「若輩者ですが」がよく使われます。

例文

・本日、当会の司会を務めます○○でございます。若輩者ではございますが、最後までよろしくお願い申し上げます。

乾杯の音頭をとる時

乾杯の音頭はたいてい年長者が行います。しかし、場を盛り上げるタイプの人や、主役と深い関わりがある人は、年齢が若くても指名を受けることがよくあります。

そんな場面では、目上の人に対しての「若輩者ゆえ」とともに「誠に僭越ではございますが」を加えてあいさつすると良いでしょう。

例文

・ただいまご指名を受けました○○と申します。若輩者ゆえ、誠に僭越ではございますが、乾杯の音頭をとらせていただきます。

結婚式の披露宴で新郎新婦があいさつをする時

結婚式の披露宴には、新郎新婦の親戚や上司など、年齢的に上の人も参列することが多いため、「若輩者の2人ですが」などとあいさつするのが定番です。

例文

若輩者の2人ではございますが、これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

「若輩者」を使う上での注意点

「若輩者」を使う場合は、次のような点に注意して使いましょう。

「未熟者」の基準は場面や業界によって変わる

未熟であるかどうかの基準は、使われる場面や業界などにより変わります。

「社会人としては若輩者」と使う場合は、業界にもよりますが、社会人になって数年が目安でしょう。

一方、何らかの認定を受けて初めて一人前とされる伝統工芸などの世界では、40歳でも、50歳でも使えることがあるでしょう。

つまり「未熟者」という意味で「若輩者」を使う時は、その業界によって「一人前」とはどれほどのレベルか、という基準で判断すると良いでしょう。

年下の相手に対して「若輩者ですが」と自己紹介しない

ある会合で集まったメンバーを見渡すと、全員自分より若いような気がする……しかし、仕事のスキルとしては皆ベテランのようだ。

そんな時に「若輩者ですが」とあいさつしても良いでしょうか?

答えは「ノー」です。

「若輩者」という言葉は、確かに「未熟者」という意味です。

メンバーが皆、若いのにベテランで、自分は年長者でも駆け出し……というケースで、自分を謙遜して使いたくなることはあるかもしれませんが、少々違和感があります。

そのような時には「年齢は上ですが腕は未熟なので、お手柔らかにお願いします」「ベテランの皆さんから見れば、この道では駆け出しです」など、ストレートなあいさつの方が好感を持たれるでしょう。

一般的には還暦を過ぎてからは使わない

「若輩者」という言葉を「未熟者」という意味で使う場合、本来年齢制限はありません。

例えば、会長など地位の高い高齢の人が集まる会合で、全員が自分より年齢が上である場合、60歳を過ぎても使うことはできるでしょう。

ただし、本人が「未熟者」というつもりで使っても、相手は「年が若い」という意味に受け取ることは十分にあり得ます。

そのため、一般的に還暦を過ぎてからは使わない言葉だと考えられます。

取引先に対して部下のことを「若輩者ですが」と紹介しない

上司が部下を取引先や他部署に紹介する時に「若輩者ですが、鍛えてやってください」と決まり文句のように使うことが以前はあったようです。

しかし「若輩者」という言葉は、自分を謙遜していう言葉です。

冒頭でも挙げたように『明鏡国語辞典 第3版』では「若輩者」とは「自分を謙遜して、また他人を軽蔑していう」と書かれています。

むしろ、「期待の新星です。私たちもサポートしますので、安心してご依頼ください」などと紹介する方が、取引先からの信頼も深まり、部下本人もやる気になってくれるでしょう。

「若輩者」の類語と言い換え(例文つき)

「若輩者」と似たような意味を持つ類義語を紹介します。

「駆け出し」

 

物事を始めたばかりで未熟な人のこと。「駈け出し」とも書きます。

年齢に関係なく使うことができます。キャリアのある先輩が、新人を紹介する時にも使えます。

例文

・デザイナーと言われましても、まだほんの駆け出しです。

「新米」

物事に不慣れで未熟な人のこと。「新前(しんまえ)」も同じ意味です。

キャリアが浅い場合によく使われるので、年齢に関係なく、40歳でも50歳でも「新米教師」や「新米公務員」という表現は可能です。

例文

・脱サラでの起業ですから、経営者としては新米です。

「卵」

まだ一人前になっていない人。未熟者のこと。

「医者の卵」「弁護士の卵」など、その道で勉強中の人が使います。第三者が「彼は医者の卵だ」と使うこともできます。

例文

・私は現在、音大に通っており、音楽家のです。

「青二才(あおにさい)」

歳が若く、経験の乏しい人のこと。「二才」とは「二才魚」に由来します。

「若輩者」同様、自分を謙遜する時、他人をさげすむ時、両方で使われます。

古い小説やドラマなどで聞くことがある「青二才め!」は、激しい侮蔑を示す言葉です。

例文

・私のような青二才には、本当にありがたいお言葉です。

「浅学非才の身(せんがくひさいのみ)」

学問が浅く、才能が乏しいこと。自分でへりくだっていう言葉です。「非才」は「菲才」とも書きます。年齢に関係なく使えます。

例文

浅学非才の身、せっかくのご縁に感謝いたしつつ、誠心誠意務めてまいります。

言い換え表現を使いこなして、無理のないコミュニケーションを

会合に出席するとあいさつなどでよく聞くものの、いざ自分が使う場面を想定すると、タイミングや場面が意外と難しいのが「若輩者」という言葉です。

迷った場合には、無理に使わず、類義語などによる言い換え表現を工夫しましょう。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

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