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【File14】修羅場すぎる三者面談を経験した恋

#イタい恋ログ

ヨダエリ(コラムニスト)

今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回はヨダエリさんのイタい恋。

彼との出会いはネット。まだマッチングアプリなどという言葉は存在せず、男女が出会えるサイトが「出会い系」と呼ばれ、危険視されていた時代です。

確かに危ないサイトもありました。が、一方で、男女問わず面白い人に出会える真っ当なサイトもあり、彼と出会ったサイトもそのひとつでした。

当時、ネットは今ほど普及しておらず、新しいものに興味がある人や違う世界の人とコミュニケーションを取りたい人などが自発的に手間とお金をかけて楽しんでいました。

ゆえに、出会う相手も好奇心や探究心の強い人が多く、職業に関しても、ドラマの脚本家、音楽雑誌の編集長、眼鏡デザイナーなど、日常ではあまり出会えない職業の人に遭遇することも多かったのです。

彼は、某広告代理店の、いわゆるクリエイティブ職の人でした。当時の自分には、「広告業界=口のうまさがものをいう世界」というイメージがあり(今思うとステレオタイプすぎる決めつけ)、初めて会った時にそれをサラッと口にした途端、彼の表情が変わりました。

結果、初対面なのに朝までコース。カラオケで延々議論をふっかけられました。なので「次はないだろうな……」と思っていたら、帰り際に改札で「またね!」と笑顔で手を振られ、頭がハテナマークだらけに。え、嫌われたんじゃないの??

嫌われたと思いきや、たまに会う関係に

その後、彼からはたまにメールが来て、返信して、たまに食事に誘われ、たまに会う、という関係が続きました。彼の仕事終わりが遅く、待ち合わせは大抵深夜。女ひとりだと怖いので、何時に会えるかハッキリしないときは連絡が来るまで漫画喫茶で時間をつぶしたこともありました(青春……)。

ちなみに、最初から恋愛感情があったわけではありません。たぶん意識し始めたのは、私が当時悩んでいた母との確執を流れでつい話し、泣いてしまってから。

人は誰かに心の内側を見せられたときより、見せたときの方が相手に執着するのか……。初めて、そんなことを思いました。

そうこうしているうちに時は経ち、一度、距離を置いたんですよね。告白したら(したんかいっ)、「今は誰とも付き合いたくない」と言われて。今思えば、付き合う気はないが去られたくもない男が使う、典型的なつなぎとめ台詞なんですが。

ただ実際、付き合っている相手はいなかったのかもしれません。割り切った関係の相手はいても。少なくとも当時は。

久々に再会。そこに訪れたのは……⁉

それから数カ月~1年が経ち、やりとりが復活(ありがち)。

彼と離れている間、門戸開放していろいろな男性と会ってみたものの、恋のファイルは上書きされず(ありがち)。もう会えば良いじゃん! 気が済むまで頑張れば良いじゃん! という境地に達したのでしょう。

記憶が曖昧ゆえ、ひとごとのような書き方ですが、久々の再会場所が和食店の個室だったことは覚えています。と、書きながら、ふと思いました。これ、個室じゃなかったらどうなってたんだ……。

というのも、「久しぶり」と、お互い少し照れながら視線をかわす、ときめきタイムが訪れた数分後、そこは恐怖の三者面談の場となったからです。

ふすまがスッと開き、女性が登場。開口一番、「彼と一緒に暮らしてます」。

……そこから先は覚えていません。

いや嘘です、覚えてます。彼女はニット帽をかぶっていて、私より確か10歳くらい年上で(彼よりも年上)、彼の携帯を見て今日私と会うことを知り、ここに来たと。いつもの浮気とは違う気がしたと。来るまで本当にドキドキしたと。そう言っていました。

さらに、彼女は彼と付き合う前に婚約破棄したことがあると。その理由は婚約者が自分の友人とベッドにいた現場を目撃してしまったからだと。今度こそ幸せになりたいのだと。

聞いてないのに全部説明してくれる彼女の話で状況はつかめたものの、心がついていかない私。それでも、彼女がとにかく必死で、絶対に彼は渡さないという気概に溢れていることだけは分かりました。

同棲している彼女がいながら、たぶんちょいちょい浮気をし、かつて自分に告白した女(私)と内緒で会おうとしていた彼。そんな彼であっても、彼女は絶対に別れたくないんだ、と。

一方彼は、彼女に本気でイラついていました。「お前、帰れよ」と怖い顔で言うので、「いや、そんな言い方」と、たしなめる私。いや、なんで私が?? と思いながら。

「帰れよ」「帰らない」。睨む彼。ひるまない彼女。

数時間に及ぶ攻防戦を繰り広げ、気付けば閉店時間。終電は終わっていたので、タクシーで私は自宅に、彼と彼女は同じ家に帰っていきました。

帰宅後、私が朝まで体育座りだったのは言うまでもありません。

イタい恋から得た教訓「告白して付き合えなかった男性と、その後幸せになれる確率は0.001%」

数日後、彼と電話で話をしました。「これからどうするの?」そう聞くと、彼は言いました。

「どうすれば別れられると思う?」

プツッ、と私の中で何かが折れました。そして悟りました。もうやめよう。時間の無駄だ、と。

「さようなら」

私は電話を切りました。

彼のことは好きでした。でも、自分とは合わない。私はニット帽の彼女のように無条件には彼を愛せない。

たぶん彼にとっても、私は本能的にそばにいてほしくなる相手ではなかった。何があってもそばにいてくれそうな、安心できる相手ではなかった。たまに刺激をもらうくらいがちょうど良かった。だから付き合わなかった。

告白がOKされないのには意味がある。そしてそれはほとんどの場合、覆らない。

ただ、男女逆パターン、つまり男性が告白して女性が断った場合は粘り勝ちがあり得ることも、その後の経験で学びました。

……なんてことを語れるようになったのも、いくら好きでも恋愛観が合わない相手とは無理だと分かったのも、自分だけを見てくれる相手のありがたみを感じられるようになったのも、イタい恋をやりきったおかげ。こんな恋にしがみついてちゃダメなのに、と悩んでいる皆さん、本気で向き合った恋は無駄にならないですよ!!

(文・ヨダエリ、イラスト・菜々子)

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