「先だって」が表す2つの意味とは? 正しい読み方を解説
よく目にする「先だって」という言葉。正しい意味や読み方を知っていますか? 今回は、「先だって」が表す2つの意味と使い方を解説。ビジネスなどで恥をかかないよう、間違いやすい表現をチェックしておきましょう。
「先だって」という言葉をビジネスシーンで耳にしたことがある方が多いのではないでしょうか。「先だって」自体は敬語ではありませんが、かしこまった印象の表現なので、ビジネスなど幅広いシーンで使いやすい言葉です。
ただし、「先だって」は文脈や読み方によって意味が変わるため、正しい使い方をしっかりと理解しておく必要があります。
この記事では、「先だって」の意味や正しい読み方、ビジネスシーンでの使い方などを例文と共に解説します。
「先だって」の意味
「先だって」という言葉には、以下のように2つの意味があります。
さきだっ‐て【先達て/先立って】
[副]《「さきだちて」の音変化》
1 さきごろ。先日。
「わたしが—去る所へ参ったが」〈滑・浮世風呂・四〉
2 他よりさきに出かけて。前もって。
「数馬の小姓坂田一角は—やしきへ帰れば」〈伎・水木辰之助〉(『デジタル大辞泉』小学館)
1つ目の意味は、「先日」のように、過去のことを表す時に使われます。
2つ目の意味は、「あらかじめ」や「他より先に」、「前もって」のように、ある事柄の前に何かを行うことを表す時に使われます。
「先だって」の読み方
「先だって」の読み方は「せんだって」「さきだって」の2通り。一般的に読み方によって意味が変わるため、文脈に合わせて判断する必要があります。
「せんだって」と読む場合は、「さきごろ」「先日」のように過去のことを表すのが一般的です。一方「さきだって」と読む場合は「あらかじめ」「他より先に」という意味を指す場合が多いでしょう。
同じ「先だって」という言葉なので、意味が混合されがち。誤った読み方をして相手に誤解を与えないように注意しましょう。
「先だって」の正しい使い方(例文つき)
「先だって」の意味は前述の通り、過去のことを表す「先日」と、ある事柄の前に何かを行うことを表す「前もって」といった意味があります。
それぞれの使い方について、具体的な例文を紹介します。
「先日」の意味での使い方
「先日」という意味で利用する場合、過去のことを表すため「先だって(先日)はお世話になりました」と過去形の文章になることが一般的です。
「先だって(先日)はお世話になります」というような使い方は不自然になるので注意しましょう。
例文
・先だっての件では、大変お世話になりました。
・先だっては弊社の○○が大変ご迷惑をお掛けしました。
・先だってはお忙しい中お越しくださいましてありがとうございました。
・先だっての件で質問させていただきたいことがございます。
「前もって」の意味での使い方
「前もって」という意味で使う場合は、「○○(事柄)に先だって」のように「先だって」の前に事柄を置くと自然な言い回しになります。
例文
・会議に先だって、資料を作ってくれますか?
・遅刻しないように、先だって出発時刻を決めておきましょう。
・先だって用意しておいた道具は役に立たなかった。
・来週の本番に先だって、予行練習を行いましょう。
・来月の映画公開に先だって、試写会が開かれます。
「先だって」のビジネスシーンでの使い方
「先だって」という言葉はかしこまったシーンで使える丁寧な言葉のため、目上の人との会話やビジネスシーンで多く使われます。
話し言葉だけでなく、メールなどの書き言葉としても使われるため、ビジネスシーンでの使い方についても理解しておきましょう。
「先だって」は敬語と組み合わせて使える
「先だって」自体は敬語ではないため、敬語と一緒に使うことができます。
「先だって」自体かしこまった表現ではありますが、後ろに敬語を使用するとより丁寧な印象を与えられるでしょう。
例えば「先だってはご連絡をいただき誠にありがとうございます」のように、敬語を用いた過去のことへのお礼を表す時に「先だって」を使うと丁寧な印象になります。
「先日」の意味の時は後に「は」「の」をつける
「先ごろ」や「先日」という過去を表す意味で「先だって」を使用する場合は、下記の例文のように後ろに「は」や「の」をつけて使うことも覚えておきましょう。
例文
・先だっては、お足元の悪い中お越しくださりありがとうございました。
・先だっての講演では大変貴重なお話をありがとうございました。
上記の例文中の「先だって」を「先日」と言い換えてみても、文章が正しく成り立つことが分かると思います。
「前もって」の意味の時は前に「に」をつける
「あらかじめ」や「他より先に」、「前もって」といった意味で使用する場合は、下記のように「~に先だって」という形で使用します。
例文
・明日の会議に先だって、資料を送っていただけると幸いです。
・来月からスタートする新規プロジェクトに先だって、ご質問などありましたらお願いいたします。
上記のように「○○(ある事柄)に先だって」と使うと、スムーズに意味が通ります。
場合によっては「○○に先だち」や「○○に先だちまして」と使用する場合もあるので覚えておきましょう。
メールや手紙で「先だって」を使う場合
書き言葉で使用する場合も、基本的な使い方は同じです。取引先や目上の人にメールや手紙で使用する場合は、敬語と組み合わせて使うと良いでしょう。
例文
・先だっての会議の議事録をお送りいただけますか?
・先だっての○○の件について、お返事をお待ちしております。
「先だって」の類語
「先だって」はここまで紹介してきたように、「先日」や「前もって」といった2つの意味で使われることがあります。
そのため、どちらの意味で使うかによって下記のように類語も異なります。
・「先ごろ」、「先日」の意味を表す場合
以前に、先ほど、この前、この間、先の、その折、近頃、ほんの少し前、先に、前に
・「前もって」の意味を表す場合
先駆けて、先んじて、早々に、事前に、いの一番に、前に、あらかじめ(予め)、予て
使用する類語によってはニュアンスや意味が異なるので、言い換える場合には注意しましょう。
それぞれの類語を一部ピックアップして、詳しい意味と使い方、「先だって」との違いについて紹介します。
「先ごろ」、「先日」の意味を表す場合の類語
まずは、「先ごろ」、「先日」の意味を指す場合の類語について見てみましょう。
類語1.以前に(いぜんに)
「以前」は、今より前の時点、現在から見て近い過去を指す場合に使います。「先日」も同じように近い過去について表すため、同じようなニュアンスで使える言葉です。
例文
・A社の○○様には以前ごあいさつしたことがあります。
類語2.先ほど(さきほど)
「先ほど」も話し言葉などでよく使われる表現です。少し前、いましがたなどと言い換えることもできます。
例文
・先ほどB社の○○様からお電話がありました。
「前もって」の意味を表す場合の類語
続いて、「前もって」の意味を表す場合の類語を紹介します。
類語1.先駆けて(さきがけて)
「先駆けて」も、「先だって」の意味のうち「前もって」に近い意味の類語です。
例文
・他店に先駆けて、当店では電子マネー決済を導入します。
類語2.先んじて(さきんじて)
「先んじて」は、「(人や物事)に先行して」という意味があり、「前もって」の意味での言い換えに使えます。
例文
・イベントの開催に先んじて、詳細をご連絡させていただきます。
「先だって」を使う慣用句
「先だって」の慣用句としては「先だって中」と「先だって来」の2つがあります。
慣用句では「先だって」とは意味が異なるため、使う場合にはしっかりと意味を理解した上で使いましょう。
「先だって中」(せんだってじゅう)
「先だって中」は「せんだってちゅう」と読み、「この間中」、「この間ずっと」といった長い期間を表す慣用句です。
例文
・先だって中、開発が思うように進まない。
・先だって中、A社にはお世話になりっぱなしです。
・先だって中、雪が降り続けている。
「先だって来」(さきだってらい)
「先だって来」は、「この間から」という意味を表します。
例文
・先だって来、何回も電話をかけているのにつながらない。
・先だって来、社長は出張で不在です。
「先だって」の英語表現
「先だって」の意味と近い英語は「先日」と「前もって」でそれぞれ下記のようなものがあります。
先日の意味
・recently
・before
・a while ago
・some time ago
・the other day
前もっての意味
・in advance
・prior to
「先だって」をそのまま英訳するのは難しいため、用途に分けて英訳を探してみましょう。
「先日」、「以前に」、「最近」、「この前」、「あらかじめ」など、自分が利用する文章の意味に合わせた英語を使うとより自然な英訳が見つかるはずです。
ニュアンスによって「recently(つい最近)」、「the other day(この前)」、「in advance(あらかじめ)」などを使い分けると「先だって」に合う英語が見つかります。
例文
・I recently graduated from University.
(私は先だって大学を卒業しました)
・Thanks for your kindness the other day.
(先だってはお世話になりました)
・Make your vacation reservations as far in advance.
(旅行に先だって予約をしてください)
「先だって」には2つの意味があるので注意して使おう!
今回の内容をまとめると以下の通りです。
・「先だって」は「さきだって」「せんだって」と読む
・「先日」という意味と、「前もって」という2つの意味がある
・「先だって」自体は敬語ではないので、敬語と組み合わせることができる
・「先だって中」、「先だって来」という慣用句では意味が変わる
・英語表現では「recently(この前)」や「in advance(あらかじめ)」などがある
「先だって」は丁寧な表現のため、普段の会話からビジネスシーンなどさまざまな場面で使いやすい言葉です。
ただし、「先日」や「前もって」という2種類の意味があるので、文脈によって意味が変わる点には注意が必要です。
しっかりと理解した上でうまく使いこなしましょう。
(sinnosuke)
※画像はイメージです