塩梅とは? 意味や語源・使い方を解説
塩梅とは「あんばい」と読みます。本記事では塩梅の意味や使い方、「按排・按配・案配」との違い、類語・英語表現について解説します。
「塩梅」という言葉が料理とは関係のない文章の中で使われるのを見て、どうして「塩」や「梅」が出てくるのだろう、と不思議に思ったことはありませんか?
また、高齢の方が「最近はどんな塩梅ですか?」や「いい塩梅ですね」と話すのを耳にしたことがある人もいるかもしれません。
「塩梅」を日常的に使うのは比較的年代が上の人、という印象もありますが、新聞・雑誌や小説では時々出てくる言葉です。
本記事では「塩梅」の意味や読み方、使い方、類義語や英語表現について説明します。
塩梅の読み方・意味を知ろう
最初に塩梅の読み方や意味を整理します。
読み方は「あんばい」
「あんばい」と読みます。「塩」の音読みは「エン」で、「アン」という読み方は一般的ではありません。「塩梅」は数少ない例外の読み方です。
塩梅の意味
「塩梅」の意味を辞書で見ておきましょう。
あんばい【塩梅】
1. 料理の味加減。「―をまちがえて、食べられたものではない」2. 物事のぐあい・ようす。「いい―にメンバーがそろっている」
3. 身体のぐあい・ようす。「―が悪いので仕事を休む」
4. (按排・按配)物事のぐあい・ようす・程合いを考えて、程よく並べととのえたり処理したりすること
(出典:『デジタル大辞泉』小学館)
辞書を見ても「塩梅」は味だけでなく、幅広い物事の様子を表す言葉であることが分かります。
「塩梅」の語源・由来
「塩梅」は古くから使われてきた言葉です。「塩梅」の由来や語源にさかのぼってみましょう。
塩と梅酢など調味料を意味していた
私たちの毎日の食事は、さまざまな調味料で味付けされていますが、このように調味料の種類が豊富になったのは、つい最近のことです。
大昔から調味料として大切にされてきたのは塩です。食材に塩を振ることで水分が抜け、食材のうまみが凝縮されておいしくなるからです。
もう1つ、中国や日本で古くから使われてきた調味料に梅酢があります。梅は中国原産の樹木で、梅の実を塩に漬けた時に出る果汁は酸味が強く、「梅酢」と呼ばれ調味料として使われてきました。
調味料といえば「塩」と「梅酢」だった時代に、料理の味加減を整えることを「塩梅(えんばい)を見る」、味加減の良いことを「塩梅(えんばい)が良い」というようになりました。
それが現代に引き継がれ、具合や様子を見る時に塩梅が使われているのです。
雅楽の奏法からきたという説も
調味料の説のほか、古来の楽器に由来があるという一説も。
雅楽に使う小型の縦笛の篳篥(ひちりき)には、「塩梅(えんばい)」という奏法があります。
同じ指使いのまま、息を吹き込む強さや唇の加減で、繊細な高音を表現する奏法です。この奏法がうまくいった時に「塩梅が良い」と言われたところからきているという説もあります。
【例文あり】塩梅の使い方
塩梅は広く使える言葉で、以下を表す時に使うことができます。
・味加減
・物事の具合や空模様
・健康状態
・うまく調整すること
「いい塩梅」「塩梅が悪い」「塩梅が大事」と使う
基本的には「いい塩梅」「塩梅が悪い」など名詞的な使い方をします。その他、「塩梅する」のように動詞的に用いることもあります。
各々の詳しい使い方については下記です。
(1)味加減について表現する時
「料理の味加減」という意味で「塩梅」を使うことができます。
例文
・この煮物はちょうどいい塩梅に仕上がっていますね
(2)物事の具合について表現する時
料理ばかりでなく、幅広い物事の具合や調子、様子をいう時にも使うことができます。特に、空模様や気候のことを話題にする場合でよく使われる表現です。
例文
・実験はいい塩梅に進んでいる
・舞台照明の塩梅に気を配る
・お天気の塩梅が良くないようなので、傘をお持ちになってください
・暖かくなっていい塩梅になりましたね
(3)健康状態について表現する時
「塩梅」で体の具合を伝えることもできます。
例文
・おばあちゃん、最近はどんな塩梅?
・足の塩梅がだいぶ良くなってきたから、また散歩に行こうと思っている
(4)うまく調整することを指して表現する時
仕事の段取りを整えたり、調整したり、材料を整えたりする時に使うこともあります。
按排・按配・案配を使うこともある
物事を整える際には塩梅の他に同じ意味合いの「按排」「按配」「案配」などの漢字を使うこともあります。
例文
・材料を塩梅して、作業に入ろう
・みんなの都合を聞いて、スケジュールを塩梅してもらえないか
塩梅の類語
塩梅の類義語に「加減」「調子」があります。いずれもコンディションや調子を指す言葉です。各々の詳しい意味と使い方を見てみましょう。
加減
塩梅に調和やバランスというニュアンスがあるのに対し、「加減」は理想とする状態が想定され、その状態と比べてどうかというニュアンスを持つ言葉です。
体調の具合をいう時は「体の」や「体調の」という言葉を使わず、「加減」だけで使います。
また、「塩加減」「味の加減」など、味を表現するときにも使うことができます。
例文
・お加減はいかがですか?
・塩加減がちょうどいい
調子
健康や機械のコンディションを表現する時に使われることが多いのが「調子」です。
例文
・このところ体の調子が良くない
・マシンの調子がいい
塩梅の英語表現
「塩梅」は日本語らしい表現ですが、英語で表現することもできます。ただ、味覚の意味での塩梅と、調子の意味での塩梅は異なる表現なので注意してください。
味加減を意味する場合
味や風味を意味するtasteやflavorにpleasantなどを組み合わせることで「いい塩梅」と表現できます。
例文
・キュウリのピクルスがいい塩梅になっている
(The cucumber is pickled with a pleasant flavor.)
体の調子を意味する場合
「塩梅がいい」という時はfeel good、「塩梅が悪い」という時はfeel illやbe sickなどを使います。
例文
・祖父の塩梅があまりよくない
(My grandfather isn’t feeling very well.)
車や機械の調子を意味する場合
この場合はconditionにgoodを合わせて使うことができます。
例文
・この車はいい塩梅に整備されている
(This car has been maintained in good condition.)
また、「塩梅よく動いている」のように、状態よりも動きに焦点を当てて表現したい場合には、behaveという動詞を使うことができます。
・最近、私の書いたプログラムがいい塩梅で動いています
(The program I wrote has been behaving good recently.)
「どんな具合か」を意味する場合
「どんな塩梅か」と状態を聞くときは、howを使って相手の様子をうかがうと良いでしょう。
例文
・この間の試験はどんな塩梅でしたか?
(How did you make out in the last exam?)
古風な言い回しを知って幅広い年代とコミュニケーションしよう
塩梅という言葉には、類義語の「加減」や「調子」にはない、全体のバランスや調和のニュアンスが含まれています。
「どんな塩梅ですか?」「いい塩梅ですね」という言葉には、「調子はどうですか?」と比べ、独特の温かみを感じられますよね。
年配の人と話をする機会があれば、「塩梅はいかがですか?」「このところいい塩梅の日が続きますね」など使ってみてください。
(小坂井さと子)
※画像はイメージです