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「本末転倒」とは? 意味や「元も子もない」との違いを解説

Sai

「本末転倒」の意味、正しく理解できていますか? 日常生活でよく聞く表現ですが、実は間違った使い方をしている人が多い言葉です。今回はビジネス系ライターのSaiさんに「本末転倒」の意味や使い方、「元も子もない」などとの違いを解説してもらいます。

日常会話の中でもよく聞く「本末転倒」という言葉。実際に使ったことがある人は多いと思いますが、「元も子もない」などの表現と意味を取り違えている人も少なくありません。

今回は、「本末転倒」の意味や使い方、混同しやすい言葉との使い分けのポイントなどを詳しく解説。また、類語や英語表現なども併せてご紹介します。

「本末転倒」の意味や読み方は?

まずは、「本末転倒」の意味や読み方を詳しく確認してみましょう。

意味は「根本的なことを取り違えること」

「本末転倒」は「ほんまつてんとう」と読み、意味は以下の通りです。

ほんまつ-てんとう【本末転倒】

物事の根本的なことと、そうでないこととを取り違えること。

▽「本末」は根本的なことと枝葉のこと。「転倒」はひっくり返すこと。「転」は「顛」とも書く。

(『デジタル大辞泉』小学館)

つまり、「根本的なことを取り違えること」や「肝心なことを疎かにしてつまらないことに熱中してしまうこと」と定義することができます。

例えば、売り上げを上げるために訴求力のある半額キャンペーンを行ったのに、価格を安くしすぎた結果、利益が下がったというような状況は、根本的なことを取り違えており、まさに「本末転倒」な状態だといえるでしょう。

鎌倉時代に寺院の立場が逆転したことが由来

「本末転倒」という言葉の由来は、鎌倉時代に仏教の本山の寺院と末端の寺院の立場がひっくり返ったこととされています。

元々仏教は天皇や貴族のためのものであり、本山の寺院は皇族によって立場や力を維持していました。しかし、庶民の間に仏教が広く浸透していったことにより、末端の寺院が本山の寺院より力をつけてしまったのです。

このように、2つの寺院の立場が逆転したことが転じて、「本末転倒」という言葉が使われるようになりました。

「本末転倒」の使い方と例文

日常生活で「本末転倒」を使う場合は、「本末転倒な話だ」のように名詞として使うパターンと、「本末転倒する」のように動詞的に使うパターンの2種類に分けられます。

正しく使用するためにも、例文で詳しく確認しておきましょう。

名詞として使う場合の例文

・学費を払うためにアルバイトばかりして勉強を怠るのは、本末転倒だと思う

・語学を学ぶために留学したのに、日本人ばかりと一緒にいるのは本末転倒な話だ

・せっかく丁寧に作業をしても、納期に間に合わないのであれば本末転倒

・生活費のために寝る間も惜しんで仕事をした結果、入院して医療費がかさむなんて、本末転倒も甚だしい

動詞的に使う場合の例文

・「家族のため」といって休日を返上して働くなんて、本末転倒している

・健康のために始めた運動でけがをしてしまうとは、本末転倒している

「本末転倒」と意味を混同しやすい言葉

仕事中や日常生活など、さまざまなシーンで使える「本末転倒」。使い勝手の良い言葉ですが、似ている言葉である「元も子もない」や「主客転倒」と混同して使っている人も少なくありません。

間違った使い方をしないためにも、2つの言葉の意味と「本末転倒」との違いを確認しておきましょう。

「元も子もない」と「本末転倒」の違い

「元も子もない」は、「本末転倒」と似たような使い方をすることが多く、使い分けが難しい言葉です。

しかし「元も子もない」は、「当初の目的だけではなく、失う必要のないものまで失われること」という意味であり、「優先順位を履き違える」という意味の「本末転倒」とはややニュアンスが異なります。

例えば、売り上げを伸ばすべく原価を下げ、質の悪いものを売った結果、評判が悪くなったのであれば「本末転倒」ですが、原価を下げ売り上げが伸びなくなった結果、会社が倒産してしまったのであれば、「元も子もない」と表現する方が適切です。

このように、「元も子もない」は「全てを失う」とか「何もかも失う」というニュアンスが強い言葉であることを覚えておくと、「本末転倒」との使い分けがしやすくなるでしょう。

「主客転倒」と「本末転倒」の違い

「物事の立場や軽重が逆になること」という意味の「主客転倒(しゅかくてんとう)」。「本末転倒」とニュアンスが似ているため、混同してしまう人も多いでしょう。

しかし、「本末転倒」が「大事なものよりささいな物事の方を優先している」という状態を指しているのに対し、「主客転倒」は「大事なものとそうでないものが逆になっている」という状態を表しています。

「物事の立場がひっくり返っている」という意味の「主客転倒」の方がより限定的な場面で使う言葉なので、2つの言葉が持つニュアンスの違いをしっかりと覚えておきましょう。

「本末転倒」の類語

「本末転倒」には、状況や場面によって言い換えができる類語がいくつかあります。知っておくと日常生活などで役に立つ場合があるかもしれませんので、代表的なものを確認しておきましょう。

(1)冠履転倒(かんりてんとう)

「冠履転倒」は、「上下の順序が逆になっていること」という意味の四字熟語です。「冠履」とはかんむりとくつのことであり、地位や立場の順序・秩序が乱れていることを表す時に使います。

日常生活で使うというよりは、明治や大正時代などに活躍した作家の文学作品などに登場することが多い言葉です。

(2)釈根灌枝(しゃくこんかんし)

「釈根灌枝」とは、「物事の本質的でない部分にこだわり、根本を忘れること」を意味する四字熟語です。

水を木の根にやらないで枝に注ぎかけることに由来する言葉で、「ささいなことにこだわり物事の基本を忘れている」という状態を表す時に使用します。

「本末転倒」の英語表現

海外支社や海外の友人などとやり取りをする機会が多いと、英語で「本末転倒」を表したいと思うこともあるでしょう。

「本末転倒」は「優先順位を取り違える」という意味のため、「priority(優先)」という単語を使って表現することもできますが、「put the cart before the horse」という言い回しを使って表す方法もあります。

「put the cart before the horse」は、直訳すると「馬の前に馬車をつける」という意味で、順番を取り違えていることから「本末転倒」という意味で使えるとされています。

それぞれを使った例文を紹介しますので、用法を確認しておきましょう。

例文

・You misplace your priorities about your work.

(あなたの仕事のやり方は本末転倒だ。)

・It’s like putting the cart before the horse that students talk with people who are from same country even though they came here to study English.

(英語を学びに来たにも関わらず生徒たちが同じ国出身の人たちと会話しているのは、本末転倒な話だ)

・The manager is seemed like putting the cart before the horse about the new project.

(マネージャーが新しいプロジェクトに関してやっていることはまるで本末転倒だ)

意味や「元も子もない」などとの違いを理解しよう

日常生活やメディアなどで頻繁に見聞きする「本末転倒」。さまざまなシーンで使える言葉ですが、正しく使用できているか不安な人は多いでしょう。

しかし、「本末転倒」の意味や使い方、「元も子もない」などと使い分ける方法を一度理解してしまえば、正確に使うことはそれほど難しくありません。

「本末転倒」の類語や英語表現なども併せて確認し、自信を持って使えるようになりましょう。

(Sai)

※画像はイメージです

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