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内発的動機づけとは? 具体例&モチベーションを高める方法

大塚統子(心理カウンセラー)

内発的動機づけとは、自分や子ども・部下などのモチベーションを高める心理学のテクニック。今回は、心理カウンセラーの大塚統子さんが内発的動機づけの具体例やメリットを解説。仕事や勉強のやる気が出ない時、ぜひ参考にしてみてください。

「部下のモチベーションを引き出すには?」「子どもがやる気になるには?」などと考えたことはありませんか? どうしたら自分から積極的に「やりたい!」という気持ちになるのでしょう。

モチベーションを高めるのに重要なのは、人材育成や教育の場面などでも話題になる「内発的動機づけ」です。今回は、内発的動機づけの意味と具体例を紹介します。

内発的動機づけとは?

内発的動機づけとは、自分の内面にある心理的な欲求にかられて行動する意欲を持つことです。

「興味があるから」「楽しいから」「好きだから」などの自発的な理由で、行動そのものに喜びや満足を感じて取り組もうとするものです。

英訳すると「intrinsic motivation」と表記します。

外発的動機づけは、外部からの評価・報酬・賞罰などに影響されるもの。例えば、「お金を稼ぐために働く」「叱られないために勉強する」など、行動の目的が外から与えられる要因に影響されます。

なお、内発的動機づけと外発的動機づけは対立するものではありません。自己決定の度合いが高くなるほど内発的動機づけになっていくものです。

内発的動機づけを行うメリット

内発的動機づけからの行動は、「誰かにやらされている」「やらなければならない」というものではなく、「自分がしたいからする」ものです。そのため、幸福感や満足感を得られるメリットがあります。

また、「自分がしたいからする」行動は、持続させやすい特徴があります。さらには、自分で問題解決をしようとするなど、自己成長につながっていきます。

内発的動機づけを行うデメリット

内発的動機づけになるかどうかは、本人の興味・関心に左右されるというのが最大のデメリットです。

個人差があるため、集団に対していっせいに内発的動機づけをするのは難しい場合があります。

内発的動機づけの関連用語「アンダーマイニング効果」とは?

内発的動機づけの関連用語に「アンダーマイニング効果」というものがあります。

これは、達成感や満足感を得るために行っていたものが、報酬を得た結果「報酬をもらうこと」が目的になってしまうこと。

例えば、趣味でハンドメイドをやっていた人が、作品を商品として販売するようになったとします。すると、最初は楽しいからやっていたハンドメイドが、お金を稼ぐためだけの手段となってしまうような現象です。

最初は内発的動機づけで始めたものに報酬が加わった結果、最終的に外発的動機づけだけが残ってしまう、この現象をアンダーマイニング効果と呼びます。

参考記事はこちら▼

アンダーマイニング効果について詳しく解説しています。

内発的動機づけはどのように行うの?

内発的動機づけができれば、自分や他人のモチベーションを自然に上げることができます。

では、内発的動機づけはどのように行うのが効果的なのでしょうか。

「マズローの欲求5段階説」を基に行う

アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した「マズローの欲求5段階説」という、人間の動機づけに関する理論があります。

人間の欲求には生理的欲求・安全欲求・社会的欲求・承認欲求・自己実現欲求の5段階があり、このうち生理的~社会的欲求までを外発的動機、承認・自己実現欲求を内発的動機と位置づけられています。

内発的動機づけ

マズローの欲求5段階説

つまり、内発的動機づけには、承認と自己実現の欲求にアプローチしていくことが大切なのです。

また、アメリカの心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンの「自己決定理論」では、内発的動機づけに「自律性」「有能感」「関係性」の3つの心理的欲求を満たすことが大事とされています。

自律性は自らの選択で主体的に行動したい欲求、有能感は「能力を発揮できている」「役に立つ」と感じることへの欲求、関係性は尊重・信頼し合える他者とのつながりの欲求を指しています。

これらの心理学の理論をふまえて、内発的動機づけの具体例を紹介していきます。

参考記事はこちら▼

マズローの欲求5段階説についてさらに詳しく解説しています。

内発的動機づけの活用方法&具体例3つ

ではここからは、内発的動機づけは具体的にどのように行うのか、具体例を見ていきましょう。

【ビジネス】部下への内発的動機づけ

指示通りに仕事をするだけでは、内発的動機づけはしにくいものです。例えば、業務内容の大まかな方向性を決めたら、どのように進行するかは部下に任せるなど、部下の意志で決定できる余地があると、自ら考えて行動する意欲が湧きやすくなります。

また、「その仕事をすることにどのような意味があるのか」「なぜその仕事をする必要があるのか」を丁寧に説明し、部下が「自分の仕事で社会や会社に貢献できている」と思えるとモチベーションにつながりやすいでしょう。

例えば、車の部品を作る仕事なら、「車を使う家族の幸せを支えている」や、「人々の生活に必要な物品を届ける一翼を担っている」など。良い意味づけができると、やりがいが生まれるかもしれません。

それから、職場のメンバー同士がお互いを褒め合ったり、感謝し合ったりするような機会をつくってみましょう。承認のコミュニケーションをすることで、「このメンバーと頑張りたい」「この人に協力したい」といった意欲を引き出しやすくなります。

【教育】子どもへの内発的動機づけ

子どもが好奇心を持ったものを尊重し、すぐに答えを与えるのではなく、「なぜだろう?」「どうしてだろう?」と一緒に考える機会を与えるようにします。「自分で気づく」「自分で発見する」喜びを体験することで、主体的に考える力が身につくのです。

また、テストの点数などの結果以外にも、「今回頑張れたこと」「できるようになったこと」を見出せるような働きかけをします。例えば、「前回書けなかった漢字が書けるようになった」、「以前はできなかった分数の計算ができるようになった」など。

周囲の大人が、子どもの成長や変化を積極的に伝えていくと、子どもが自己承認できるようになり、チャレンジする意欲を持ちやすくなるでしょう。

それから、能力に応じて少し頑張れば達成できる目標を設定し、成功体験を積み重ねることも有効です。「できた!」という達成感は、「次もやってみよう!」という意欲につながります。

【日常生活】自分への内発的動機づけ

「誰かに言われたからやっている」と思うとモチベーションは上がりにくいもの。「自分がそれをする積極的な理由があるとしたら?」と考えてみましょう。特に、その行動の先で自分が得られるポジティブな気持ちに注目してみましょう。

例えば、上司に怒られながら会議の準備をしていたとします。それ自体は楽しくないかもしれません。

けれども、「この会議が成功したらたくさんの人が笑顔になる」と想像できたら、うれしい気持ちになるでしょう。「私はたくさんの人を笑顔にしたいから、この仕事をやっている」と思えたら、モチベーションの持ち方が変わってくるものです。

また、自分の「好き」や「楽しい」の気持ちに素直になったり、「なりたい自分になる」ことを目指したりするのもやる気を出すコツです。

例えば、好きなことに打ち込める自分でいたいなら、「好きなアーティストのライブに行く」「食べたい料理を作る」など、何でも良いので実際に好きなことをしてみましょう。好きなことをできている自分でいられると、やる気が湧きやすくなりますよ。

内発的動機づけには主体性が大切

自分が好きでしていることには、モチベーションを持続しやすいものです。内発的動機づけには、損得や目的ではなく、それを「したい!」という気持ちが重要です。

「したい」と思う理由には、「好き」「楽しい」などと共に、「自分が選んでいる」「自分が決めている」「自分は役に立っている」「自分は頑張れている」などの自覚も大切。

主体性を持つことで、モチベーションを高めていきましょう。

(大塚統子)

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※画像はイメージです

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