お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

【時候の挨拶】5月に使える挨拶言葉は? 書き方や例文を紹介

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

仕事で案内状などの文面を作成する時、プライベートでかしこまった手紙を書く時など、どう書き始めたらいいか悩みませんか? そこで便利なのが「時候の挨拶」。今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、5月の時候の挨拶を教えてもらいました。

気まぐれだった春の空がようやく落ち着き、木々の緑がみずみずしく風薫る5月です。

春から社会人になった人、転職した人、新しい部署になった人。ひと月経って、新しい環境に慣れてきた頃ではないでしょうか。

5月の空に泳ぐ鯉のぼりのように、伸びやかなメッセージを伝えたいですね。

時候の挨拶とは?

時候の挨拶とは、季節や月の気候・行事を踏まえた挨拶で、手紙やメールの初めの部分に書く言葉や文章を指します。

「○○の候」のように、「熟語などの一語」+「候」という形もあれば、「春とはいえ肌寒い日が続きますが」のように、文として書く形もあります。

ビジネスシーンやプライベートでは、書面や手紙での連絡、改まったメールの冒頭部分において使われます。

5月の「時候の挨拶」

5月の手紙に使える時候の挨拶を紹介します。

「〜の候」の他にも「〜のみぎり」という言葉もあります。「みぎり」とは、「時、折、時節」という意味です。

・「惜春(せきしゅん)の候」5月初旬

・「暮春(ぼしゅん)の候」5月初旬

・「立夏(りっか)の頃」5月5日頃

・「新緑の候」5月初旬・中旬

・「若葉の季節」5月全般

・「風薫る」5月全般

・「薄暑(はくしょ)の候」5月5日頃〜20日頃

・「初夏の候」5月全般〜6月初旬

上記の時期は、あくまで目安です。

例文

新緑の候、貴店におかれましては益々ご隆昌(りゅうしょう)のこととお慶び申し上げます。

風薫る5月、皆さまにはお健やかにお過ごしのことと存じます。

初夏の風が心地良く、旅心誘われるこの頃です。

5月の「結びの言葉」(例文付き)

続いては、5月にふさわしい結びの言葉を紹介します。

「結びの挨拶」とは、本文で用件などを述べた後、結語(「敬白」「敬具」「かしこ」など)の前に添えるものです。

「末筆ながら、○○さまのご健康とご活躍を願っております」のように、相手の健康や繁栄を願ったり、「○○さまによろしくお伝えください」などのように、伝言を依頼したりする役割があります。

例文

新茶のおいしい季節、またお茶でもご一緒できることを楽しみにしております。

・これから暑さに向かいますね。ご自愛くださいますようお願いいたします。

若葉のようにお元気なお母さまにもよろしくお伝えください。

5月の時候の挨拶「シーン別の例文」

時候の挨拶を組み入れた例文を、ビジネス・プライベートそれぞれの場面で、ポイントともに以下に紹介します。

5月に使える例文

ここでは、ビジネスシーンでも作成する機会が多い、案内状とお礼状の例文を紹介します。

案内状(例文)

拝啓 立夏の頃、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
平素はお世話になりありがとうございます。

 さて、このたび下記の通り、「○○」を開催いたします。

(~開催の意図や準備の様子など記す~)

 ご多用のことと存じますが、風薫る季節を感じにぜひお出かけくださいますよう、ご案内申し上げます。

敬具


「○○」
日時:○○
場所:○○

以上

お礼状(例文)

拝啓 新緑の候、先般は、ご多忙のところ「○○」にご来場賜り、誠にありがとうございました。

(~好評だった様子やうれしかった気持ち、これからの意欲や展望を述べる~)

 どうか今後ともご厚誼を賜りますよう心よりお願い申し上げますとともに、ますますのご活躍を願っております。
 書中にて失礼ではございますが、お礼まで申し上げます。

敬具

開催後すぐに出す来場のお礼状では、お礼のメッセージで書き出した方が、ストレートに伝わります。

新装オープンの挨拶状

ビジネスの挨拶状には、開店・開業、支店開設、新装、移転、組織変更、担当者変更など、さまざまなものがあります。

4~5月は特に就職、転職、人事異動や組織体制の変更などで人の動きが顕著な月です。

挨拶の言葉を中心に、日頃の感謝や誠意が十分伝わるものにしましょう。

ここでは具体的な例として、新装開店(リニューアルオープン)の案内状の例文を紹介します。

例文

謹啓 若葉の頃、貴社益々ご隆昌の段、お慶び申し上げます。

 さて、このたび弊社では、かねてより改装中でご迷惑をお掛けしておりました1階ショップのリニューアルが無事完成いたしました。
 つきましては、非接触システムを取り入れた未来型店舗を真っ先にご覧いただきたく、下記の通り、プレオープンデイのご招待を申し上げます。

 ご多用とは存じますが、ぜひお出かけくださいませ。スタッフ一同心よりお待ちいたしております。

 最後になりましたが、貴社のご発展を心より祈念いたしますとともに、なお一層のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

敬白


日時:令和○年5月○日 (○曜日)午前(午後)○時〜○時
会場: 株式会社○○ 1F
○○県○○市○○町○○丁目○○番地
電話:○○−○○○○−○○○○
※当日は、入退店自由です。お気軽な服装でご都合の良い時間にお越しください。

以上

時候の挨拶の後、まず改装中に迷惑を掛けたことに触れ、新店への期待感を訴求しましょう。

日時や場所などの事務的な内容は、挨拶文と分けて、分かりやすく明示します。

なおその際、ネット上の地図画像を許諾なしに印刷することは、地図情報提供者の利用規約に違反することがあるので気を付けましょう。

贈り物の礼状

贈り物のお礼状は、受け取ったらなるべく早く送りましょう。

また、あまり形式にこだわりすぎても、よそよそしく感じられます。書き出しや結びをマスターしたら、あとは率直に書く方が気持ちも伝わるというものです。

例文

拝啓 夏も近づく八十八夜、お健やかにお過ごしのことと存じます。

 このたびは、新茶をお贈りいただき誠にありがとうございます。箱を開けたとたん、茶の香りがぱあっと広がり、宇治の景色が見えるように感じました。家族で楽しみに頂戴します。
 こちらはまだ肌寒い日もあるほどで、日本列島は南北に長いのだと改めて感じております。
 時節柄、○○さまもお大事にお過ごしくださいませ。書中にて失礼ながら、お礼まで申し上げます。

敬具

時候の挨拶をビジネスレターで使う場合の書き方と注意点

最後に、基本的な手紙の形式と注意点を紹介します。

手紙の形式

手紙の形式に必ずしも決まりはありません。個性的な手紙が喜ばれることも多いものです。

ただし、面と向かって会う時とは違い、特にビジネスシーンでは失礼にならないようにと考えることが多いため、慣習的な順序に沿った手紙の形式があります。

大きく分けると「前文・本文・末文・後付け・副文」の順です。

「前文」:頭語

「頭語」とは手紙の冒頭に用いる言葉で、後述する「結語」と対応するものを用います。

頭語には、次のようなものがあります。

【一般的な頭語】
拝啓・拝呈・啓上・啓白・呈上・拝進

【特に丁重な頭語】
謹啓・粛啓・恭啓・謹呈・敬呈

【返信する場合の頭語】
拝復・復啓・敬復・拝披

【返信が来ないうち再送する場合の頭語】
再啓・再呈・追啓・再白・再陳

【急ぎの場合の頭語】
急啓・急呈・急白・急陳・火急

【時候の挨拶を省略する場合の頭語】
前略・略啓・略陳・草啓・冠省・前省・略省・寸啓

「前文」:時候や安否の挨拶

頭語の後に1文字分空けて、前段で紹介したような「時候の挨拶」を書きます。

事務的な文章では時候の挨拶を省き、「時下ますますご清栄のこことお慶び申し上げます」などと書くこともできます。

安否の挨拶は必須ではありませんが、書く場合には、時候の挨拶の後に続けます。

まず相手の安否に触れてから、次に自分の安否や近況について「私どもは元気に過ごしております」などと述べます。

また病気見舞いや相手側に不幸があった時には、自分側の安否や近況は述べないようにします。

「本文」:起辞

「前文」である時候の挨拶の後に、改行をし、1文字下げて書きます。

起辞とは、書き出しから用件に移る際の接続詞で、「さて・ところで・早速ながら・このたびは・今般」などがあります。

返信の際には「ついては・つきましては」などを使います。

「本文」:用件

起辞に続いて、用件を書きます。

移転・転任・結婚・転職・退任・お礼など、さまざまな用件があります。気配りをしつつも、誤解や不明のことが生じないよう、具体的に書きましょう。

「末文」:結びの挨拶

「本文」の用件の後に、改行をし、1文字下げて書きます。

基本的には相手の健康や繁栄を願う言葉を書きます。さらに、伝言を添える場合もあります。

「末文」:結語

結びの挨拶と同じ行の最下部か、改行した次行の下方へ配置します。

「頭語」と対応させる言葉を用います。具体的には、次のようなものがあります。

【一般的な結語・返信や再送する場合の結語】
敬具・拝具・拝白・敬白・拝答

【特に丁重な結語】
敬白・謹白・謹具・再拝・謹言・頓首

【急ぎの場合・時候の挨拶を省略した場合の結語】
早々・怱々・不一・不二・不備・不尽

「後付け」:日付

「末文」の後に改行し、2~3字下げて年月日を書きます。

「後付け」:署名

日付の次行の下方に、差出人名を(自筆で)書きます。

「後付け」:宛名・敬称

署名の次行の上方に、相手の氏名を書き、「様」「先生」などの敬称を添えます。

宛名が連名の際は、敬称はそれぞれに付けます。なお、「御中」は会社や団体に用います。

「副文」

副文とは、書き漏れたことや付け加えたいことを短く添える文章のこと。「追伸・追白・尚々」などと書き出します。

ただし、副文には「重ねて申し上げる」というニュアンスがあるため、お悔やみ状や目上の人への手紙では使用しないのがマナーです。

時候の挨拶についての注意点

お詫び状や見舞状など、急な手紙では頭語や時候の挨拶を省き、以下のようにすぐ本文に入ります。

お詫び状(例文)

・先般はご迷惑をお掛けし、大変申し訳なく思っております。

災害の見舞い状(例文)

・このたびの台風○○号による浸水、被害が大きく心配しております。状況はいかがでしょうか。

病気の見舞状(例文)

・このたびはご入院されたとのこと、驚いております。

病気見舞いでは「たびたび」「四」などの忌み言葉に気を付けましょう。

また、長期の入院で文通のようにやりとりしている手紙では、季節の言葉も入れて良いでしょう。

季節の言葉がもたらす共感

季節の言葉とは不思議なものです。

例えば、「風薫る」。この3文字を聞くと、多くの方は瞬時に5月の新緑を吹き渡る爽風をイメージすることでしょう。

映える画像がなくても、閉じたまぶたの奥に浮かび上がる鮮やかな景色。それは、SNSや手紙といったツール、地域や環境の違いをも超える、日本人としての共感そのものだといえるでしょう。

(前田めぐる)

関連する記事もあわせてチェック!

時候の挨拶とは。ビジネスメールや手紙での基本の使い方と例文

ビジネスメールでも使える「体調を気遣う言葉」例文

ビジネスメールの締め・結びの言葉【例文集】

※画像はイメージです

SHARE