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「拝聴する」の意味とは? 正しい使い方を例文で解説

ビジネスなどでよく耳にする「拝聴する」という言葉。「聞く」と普通に表現するのと、どのような違いがあるのでしょうか? 今回は、語彙解説に詳しいライターの笹美さんが、「拝聴する」の正しい意味と使い方を解説します。

「拝聴(はいちょう) 」とは、「聞く」の謙譲語表現です。
ビジネスなどかしこまったシーンで耳にすることは多いと思いますが、間違った敬語表現で使っている人も少なくありません。

今回は「拝聴する」の意味から使い方や間違った表現などについて解説していきます。

「拝聴する」の意味

「拝聴する」の正しい意味を、まずは辞書で調べてみましょう。

拝聴(はいちょう)

[名](スル)聴くことの意の謙譲語。つつしんで聞くこと。「御高説を拝聴する」

(『デジタル大辞泉』)

「拝聴」は「聞く」の謙譲語で、話をする相手に対して敬意を払う際に使用します。

「拝」という漢字には、「頭を深く下げる」「礼をする」の意味があり、相手に対する感謝の気持ちがこもっています。

「聴」という漢字には、「じっくりと聞き入れる」「耳をすまして聞き取る」の意味があります。「聞く」が自然に耳に入る意味なのに対し、「聴く」は積極的に情報を取りにいくニュアンスがあります。

この2つの漢字を組み合わせた「拝聴する」という言葉は、目上の人の話をありがたく聞くという姿勢や気持ちを示しているのです。

「拝聴する」の正しい使い方(例文つき)

「拝聴する」という言葉は、どのように使用するのが正しいのでしょうか? 例文と併せて、正しい使い方を見ていきましょう。

目上の人の話を聞く時

「拝聴する」は、主に取引先や目上の人など、自分よりも立場が上の人の話を聞く時に使われます。

例文

・数多くの事例を拝聴し大変参考になりました、ありがとうございます。

・この度は丁寧なアドバイスを拝聴する機会をいただき、感謝申し上げます。

・この商品に関するご意見を拝聴したく、お願い申し上げます。

権威ある人へ敬意を払いたい時

音楽や講演を聴く際に「拝聴する」という言葉を用いる場合は、音楽家や教授に敬意を払う目的があります。

例文

・プロのピアニストの演奏を間近で拝聴し、感動しました。

・この度は、興味深いテーマのセミナーを拝聴できる貴重な機会であったと思います。

・先日の報告会では貴重なお話を拝聴することができましたこと、感謝しております。

「拝聴する」を使用する際の注意点

「拝聴する」という言葉には、間違った使い方もあります。よくある間違いを例に挙げて、注意点を解説します。

(1)他人には使えない

先述した通り「拝聴する」という言葉は、へりくだった言い方で相手に敬意を示す敬語表現です。自分の動作をへりくだって表現する時に使われるため、他人には使うことができません。

他人の聞く動作を表現する際には、尊敬語か丁寧語を使用します。

例えば、「○○部長の意見を拝聴しましたか?」など、他人の行動に「拝聴」を使うのは誤りです。正しくは、「○○部長の意見をお聞きになりましたか?」となります。

またビジネスシーンであっても、部下や同僚など自分と同じ立場や自分より低い立場の人にも使用しないのが一般的です。

(2)二重敬語で使用しない

二重敬語とは、同じ種類の敬語を重ねて使用すること。二重敬語はくどい表現という印象を与え、「正しい言葉遣いができないのかな」と認識されるかもしれないので、注意しましょう。

また、過剰に敬語を重ねた表現になるので、「馬鹿にされているのでは?」という感想を抱かれる可能性もあります。

「拝聴する」で間違えがちな二重敬語は、「ご拝聴」「拝聴いたします」「拝聴させていただく」などです。よくある間違いを覚えて、使用しないように注意しましょう。以下、詳しく解説します。

ご拝聴する

「ご拝聴する」は二重敬語です。

「拝聴」という言葉がすでに謙譲語にあたるため、前に「ご」をつけてしまうと二重敬語になってしまうのです。

拝聴いたします

「拝聴いたします」もよく使用してしまいがちな二重敬語です。「いたします」は「する」の謙譲語なので、「拝聴いたします」も二重敬語になるのです。

つい「先日、拝聴いたしました。」などと使用してしまいがちですが、注意しましょう。

拝聴させていただく

「拝聴させていただく」も丁寧な表現に感じられますが、二重敬語にあたります。「させていただく」は「してもらう」の謙譲語表現なので、二重敬語となってしまいます。

「させていただく」は、連発するとくどい印象になる表現なので注意しましょう。

「拝聴する」の類語や言い換え表現

「拝聴する」の類語や、言い換え表現には以下のようなものがあります。

伺う

「拝聴する」の類語としてよくビジネスシーンで使われているのが「伺う(うかがう)」です。

「伺う」も「聞く」の謙譲語で、自分がへりくだることで相手を尊敬している気持ちを含んだ使い方となります。

例文

先日、海外出張があったと伺いました。

承る

「承る(うけたまわる)」も「拝聴する」の類語にあたります。

「聞く」という言葉を敬語に直すと「承る」になりますが、「担当する」「誰かから伝え聞く」意味を含んだ言葉として、目上の人に対して使う場面が多いです。

例文

田中様のアドバイスを承ることができ、大変実りある時間となりました。

傾聴する

「傾聴(けいちょう)する」は、聞くという行為に集中する意味合いが強く含まれています。

「傾」には、集中する・気持ちをその一点に傾けるという意味があり、「耳を傾けて熱心に話を聞く」行為を示す言葉です。

敬語表現ではないものの、熱心に聞き入った様子を伝えることができる表現です。比較的、立場の近い相手を対象に使用することになります。

例文

先日の発表会では田中さんのプレゼンテーションを傾聴していました。

謹聴する

「拝聴(きんちょう)する」は、より格式の高いビジネスシーンで使われることがある「拝聴する」の類似語です。

「謹」には、つつましやかだ、集中しているという意味合いがあり、静かな緊張感を持って謹んで聞くニュアンスを含んでいます。

例文

先日はチーム一同、田中会長の講演を謹聴しました。

「拝聴する」の英語表現

英語には一般の言葉を敬語に直すという考え方自体がありません。したがって「拝聴する」の英語表現では、基本的に「聞く」という意味の単語を使います。

「拝聴する」には一般的には「listen」を使うことが多いです。「聞く」意味を持つ別の英単語で「hear」もありますが、「音が聞こえてくる」という受動的なニュアンスなので、「拝聴する」の英語表現としては「listen」が適しているでしょう。

「拝聴する」の英語例文

英語には敬語の概念はないものの、表現次第で「相手を敬って聞いている」表現は可能です。いくつか例文を紹介します。

例文

・I enjoyed your keynote speech.
(私はあなたの基調講演を拝聴しました)

・It was an honor to be able to hear your talk.
(お話を拝聴できて、とても光栄でした)

・I was glad to listen to your lecture.
(あなたの講義を聞けて良かったです)

「拝聴する」を正しく使おう

「聞く」に敬う気持ちを込めた「拝聴する」は、相手の話を配慮深く聞く様子を表現できる言葉です。

友人同士の日常会話ではほとんど使わない表現なので、ぜひ正しい使い方を知り、目上の人に対して、丁寧な言葉遣いができるようにしましょう。

(笹美)

※画像はイメージです

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