お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

「リテラシー」の意味や正しい使い方を分かりやすく解説

小坂井さと子

「リテラシーが低い、高い」といった言葉を耳にすることはありませんか? そもそも「リテラシー」とはどういう意味なのか、また、正しい使い方について語彙に詳しいライターの小坂井さんに解説してもらいました。

最近「リテラシー」という言葉を耳にする機会が増えてきました。何となく雰囲気は分かっても「どういう意味ですか?」と聞かれると、しどろもどろになることはありませんか?

最近では「情報リテラシー」や「メディアリテラシー」と複合語になるケースも増えていますが、本来の意味をしっかり押さえておけば、派生語が出てきても大丈夫です。

本記事では「リテラシー」という言葉が誕生した背景までさかのぼって、分かりやすく説明します。


「リテラシー」の本来の意味

リテラシーとは「読み書きする能力」「理解する能力」「活用能力」を指します。

リテラシー
読み書きの能力。識字。転じて、ある分野に関する知識・能力。(『広辞苑 第7版』)

リテラシーの語源は、英語のliteracyから来ています。

literacy
(1)リテラシー、識字能力、読み書きの能力、言語運用能力
(2)教養がある(教育を受けている)こと、教養
(3)(特定の分野・問題に関する)知識、能力(『ランダムハウス英和大辞典 第2版)

日本で使われている「リテラシー」という言葉も、英語のliteracyの意味と、ほぼ同じであることが分かります。

しかし、私たちが耳にするリテラシーは、「読み書きする能力」よりも、「特定分野の知識や能力」という意味で使われていることが多いようです。一見異なる意味のようにも思える「読み書きする能力」と「特定分野の能力」、どうして1つの言葉に意味の違いがあるのか、理由を見ていきましょう。

「literacy」という言葉が持つ歴史

昔、字が読める人が少なかった時代に「読み書きできること」は特別な能力でした。その頃に生まれた「リテラシー」という言葉は、特別な能力を高く評価する言葉でした。

時代が下り、読んだり書いたりすることは、仕事をする上で欠かせない能力になりました。そこで「読み書きできること」は「識字率」という、文化のバロメーターともなりました。

さらに時代が新しくなって、識字率も高くなると、「読み書きできること」は当たり前になり、誰もあまり問題にしなくなりました。読み書きという当たり前の能力よりも、コンピューターを使いこなしたり、あふれる情報の中から大切な情報を選び出したりする能力の方が重要視されるようになったのです。

そこから、本来は「読み書きできること」を意味するリテラシーが、コンピューターを扱える「コンピューターリテラシー」のように、特定の分野に関する知識や能力があることを指すようになったのです。

「リテラシー」の使い方

現在では「リテラシー」は単独で使われるより「〇〇リテラシー」という複合語で使われる方が多くなっています。

その中でもよく使われる「ITリテラシー」「情報リテラシー」「メディアリテラシー」「金融リテラシー」の4つのリテラシーに焦点を絞って見ていきましょう。

ITリテラシーの意味と使い方

ITリテラシーは、ICTリテラシー、コンピューターリテラシー、インターネット(ネット)リテラシーなど、たくさんの派生語を持つ言葉です。

ITリテラシー

ITリテラシーとは、Information Technology(情報技術)に関する能力、つまりコンピューターとネットワークを利用した技術を使いこなせる能力の事を指します。

例文

・中小企業は社員の一人ひとりがITリテラシーを高める必要がある。

ICTリテラシー

ICTリテラシーという言葉もあります。ICTはInformation and Communication Technology(情報通信技術)という意味で、実際にはITとほぼ同じ意味で使われています。ICTリテラシーもコンピューターとネットワークを利用した技術を使いこなせる能力という意味で使われます。

例文

・プログラミング教育の狙いは、子どもたちにICTリテラシーを身に付けさせることにある。

コンピューターリテラシー

コンピューターリテラシーという場合は、ITリテラシーの中で、コンピューターに焦点を当てて、コンピューターを使いこなす能力という意味で使われます。コンピューターを使って問題を解決する能力がコンピューターリテラシーです。

例文

・70代という年齢にしては、驚くほど高いコンピューターリテラシーを備えている。

インターネット(ネット)リテラシー

インターネットを使いこなす能力という意味で、インターネットリテラシーという言葉もあります。

この場合の「使いこなす」とは、インターネットに接続する技術やネットワークを構築する技術のことではありません。インターネット上の情報を正しく理解した上で、情報を適切に利用、情報発信する能力を指します。

特に危機管理に関する知識を持って、インターネット上でトラブルを起こしたり、巻き込まれたりしない能力を指す場合もあります。

例文

・ネットの情報を鵜呑みにしないことが、ネットリテラシーの第1歩だ。

情報リテラシー の意味と使い方

情報リテラシーは、課題を解決するために、パソコンやモバイル機器、インターネット、本などのオフラインも含めて情報を入手し、その情報を活用する能力を指します。

例文

情報リテラシーの高い人材を求めている。

メディアリテラシーの意味と使い方

メディアとは情報伝達手段のことです。インターネットだけでなく、本や新聞、テレビやラジオなど、私たちを取り巻く社会にはさまざまなメディアがあります。

メディアリテラシーとは、さまざまなメディアにアクセスして、主体的に情報を入手・理解する能力。またその理解を元に今度は自分から発信することを意味します。

例文

・学校教育でも、メディアリテラシーを育成することに重点が置かれている。

金融リテラシーの意味と使い方

金融リテラシーとは、主にお金の貸し借りや管理に関する知識・情報を理解し、判断する能力を指します。

具体的には家計を適切に管理したり、自分や家族の将来のために資金計画を立てたり、金融商品について理解し、実際に運用したりすることです。また、詐欺にあわないように情報を持つことも金融リテラシーを身に付けることに当てはまります。

例文

・将来設計を考えると、金融リテラシーの必要性が高まっている。

「リテラシー」の類義語・対義語・関連語

リテラシーがどういったものか把握できたところで、さらにリテラシーの類語、対義語、関連語を知り、リテラシーという言葉の理解を深めましょう。

リテラシーの類義語

リテラシーを「読み書きする能力」という意味で捉えた場合の類語には、「識字能力」という言葉が相当します。

また、リテラシーを「〇〇する能力」という意味で捉えた場合の類語には、以下のようなものがあります。

判断力

判断力とは理解した上で、正しい判断ができることを指します。

応用力

応用力とは持っている知識を新しいことに応用する力です。

活用能力

活用能力とは知識を持ち、その知識を使って主体的に何かをできる能力を指します。

識別能力

識別能力とは物事を見分ける能力を意味します。

取捨選択能力

取捨選択能力とは大切なものと不要なものを見分け、不要なものを捨てる能力をいいます。

リテラシーの対義語

英語の「literacy」の対義語は「illiteracy(イリテラシー)」です。基本的には「読み書きすることができない」ことを指します。そこから派生して、英語では「computer illiteracy」 や「media illiteracy」という用法があります。

しかし日本では「ITイリテラシー」という言い方はあまり一般的ではありません。イリテラシーの代わりに「ITリテラシーの欠如」「金融リテラシーの不足」のように否定語を伴って表現します。

リテラシーの関連語「デジタルディバイド」

ITリテラシーや情報リテラシーの関連語として、「デジタルディバイド」があります。

デジタルディバイドとは、情報格差のことです。住んでいる場所や環境、社会的条件やITリテラシーの有無によって、情報格差が生まれます。

この情報格差は、経済格差や社会格差などさまざまな格差の原因になり、社会的孤立を生み出すことが昨今問題になっています。

デジタルディバイドを解消するために、誰でも、どのような環境でもオンラインにアクセス可能で、必要な情報を得られるように、ITリテラシーを高める取り組みが行われています。

これから日常語になるかも?  〇〇リテラシー

他にもリテラシーには以下のような種類があります。今後、私たちの日常でも耳にする機会が増えるかもしれませんのでチェックしてみてください。

デジタルリテラシー(Digital literacy)

デジタルリテラシーとは、WEBサイトやSNS、スマートフォンなどのデジタル技術を通じて、コミュニケーションを行ったり、情報にアクセスしたりする能力です。

環境リテラシー(Environmental literacy)

環境に対する意識を高め、環境問題を理解し、解決するために主体的に取り組む能力を指しています。

ヘルスリテラシー(Health literacy)

健康や医療に関する情報を理解し、活用する能力です。多くの情報の中から正しいものや、自分に必要なものを取捨選択することの必要性が込められている言葉です。

マルチメディアリテラシー(Multimedia literacy)

動画や音声、画像、バーチャルリアリティーなど、文字以外の幅広いメディアを操作し、活用する能力を指します。

科学リテラシー(Scientific literacy)

科学を理論として理解するにとどまらず、科学的な知識や思考法を身の回りの自然現象や日常生活、環境問題にも活用する能力です。

科学技術リテラシー(Technological literacy)

科学技術に対する理解を深め、考え方や行動に活用する能力です。

言葉の意味の変遷は時代を映し出す鏡

「リテラシー」という言葉は、元々は「読み書きの能力」を指す言葉として生まれました。しかし、移り変わる時代の影響を受け、今日では「〇〇リテラシー」というと、〇〇を使いこなす能力という意味で使用されることがほとんどです。

「〇〇リテラシー」の「〇〇」には、今の私たちにとって身に付けておくべき、大切な能力が入ります。英語圏ではすでに「環境リテラシー」「ヘルスリテラシー」などの言葉も広まっているようです。

さまざまなリテラシーの意味を知ることで、時流についてもつかみやすくなるかもしれません。

 

(小坂井さと子)

※画像はイメージです

SHARE