古典的条件付けとは? オペラント条件付けとの違いや日常例
「古典的条件付け」という言葉を知っていますか? 心理学では「自然に起こる無条件反応を、ある特定の刺激に反応するよう生成すること」を意味します。今回は心理カウンセラーの小日向るり子さんに、古典的条件付けの意味や活用方法を解説してもらいます。
「古典的条件付け」という用語を聞いたことがありますか?
「パブロフの犬」というフレーズなら聞いたことがあるという方もいるかもしれませんね。
今回は、古典的条件付けの意味や概念を解説し、さらにこの心理を私たちがどう日常生活で応用すれば効果的か、また応用の際の注意点までを紹介します。
心理学用語「古典的条件づけ」とは?
まずは、古典的条件付けとは何か見ていきましょう。
意味は「無条件反応を、特定の刺激に反応するよう生成すること」
古典的動機付けとは、「自然に生じる無条件反応を、もともとは関係がなかった特定の刺激に反応するように生成する手続き」(『教養としての心理学101』デルタプラス)のことです。
パブロフの犬を用いた実験とは?
古典的動機付けで有名なのが、ロシアの生理学者であるパブロフが行った犬の実験です。
犬は食べ物を見ると無条件に唾液が出ますが、パブロフはこの無条件に生じる反応を利用し、食べ物を与える前にベルを鳴らすことを繰り返し行いました。すると、犬はベルを鳴らすだけで唾液を出すようになったのです。
私たちの生活でも、梅干しやレモンを見るだけで唾液が出るという反応がありますが、これも古典的動機付けの1つです。
オペラント条件付けとの違いは「自発的な行動か否か」
「古典的動機付け」と対で語られることの多い、「オペラント動機付け」。
古典的動機付けとの違いは、それが自発的な行動であるか否かということです。
前述した実験例のように、古典的条件付けの「食べ物を見る→唾液が出る」というのは生得的に備わっているものに対する無条件反応です。
オペラント条件づけは「学習により起こす行動」
一方のオペラント動機付けは、例えばネズミに「レバーを押す→エサが出てくる」と学習させることで、生得的には備わっていない行動変容をもたらし、自発的に行動させるものとなります。

「オペラント動機付け」の概念、日常で応用するコツを紹介します。
古典的条件付けの活用例とポイント
古典的動機付けは私たちの日常でも応用できます。
要は、パブロフの犬でいうところの「食べ物を見せる(条件刺激)」と「唾液が出る(条件反応)」の間に、「ベルの音(別の刺激)」を習慣として取り入れれば良いということです。
例えば、夜眠りにつく前にラベンダーの香りをかぐことを続けていくと、ラベンダーの香りがすると、夜でなくてもリラックスできるようになります。
香りには芳香療法といって、体や心のバランスを整える効能がありますので個人的におすすめします。もちろん、香りでなくても特定の音楽や飲み物など自分の好きなもの、続けやすいもので構いません。
なお、味覚に対する条件付けは、音や光といった他の条件付けに比べて強力です。これも知識として覚えておくと良いでしょう。
古典的条件付けを活用する上での注意点
古典的条件付けは日常生活にも有効活用ができることが分かったかと思います。
ここでは、活用する上での注意事項を2つ紹介します。
「消去」があり得ることを知っておくこと
「消去」をパブロフの犬で説明すると、ベルの音で唾液を出すようになった犬に、今度はベルの音を鳴らしてもエサを与えないことを繰り返すと、犬は音を聞いても唾液を出さなくなる、という現象です。
例えば、「休憩が終わってもう一仕事、という時にコーヒーを飲む」と条件刺激を付けたとします。しかし、そうでない時にも飲み続けていると、コーヒーを飲んでも気持ちの区切りにはならなくなってしまいます。
「消去」によって反応が起こらなくなっても、少しの休息期間を挟んで再び条件刺激を与えると回復します。そのため、コーヒーを飲みすぎて気持ちの切り替えにならなくなった場合は、飲むのを控える期間をつくるなど、定期的に習慣を見直していくと良いでしょう。
「嫌悪条件付け」にならないようにすること
古典的条件付けがベースとなっている「嫌悪条件付け」というものがあります。これは、パブロフの犬でいうところの「ベルの音」が嫌悪の反応につながるということです。
例えば、ある物を食べた後に体調を崩してしまったという経験をすると、その食べ物を見ただけで気分が悪くなるようになってしまった、といったことが嫌悪条件付けにあたります。
そのため、体調があまり良くない時に、甘いもの好きだからといってスイーツバイキングに行く、お酒が好きだからと飲みに行く、など体に負荷をかけることは避けましょう。せっかくの好きなものに嫌悪が生じるようになるのは悲しいことですから。
古典的条件付けを日々のメリハリに活用しよう!
いかがでしたか?
「古典的条件付け」を心理学の用語と捉えると難しく感じてしまいますが、それがどういったものか理解すると、日常生活にも活用できるようなものであると分かりますよね。
メリハリをつける手段が思いつかない、という方は、まず朝起きたらどんなに眠くても「カーテンを開ける」ということから始めてみるのもいいかもしれません。
1日の始まりに条件刺激を入れることで、生活にメリハリがついてくると思いますよ。
(小日向るり子)
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