「ご苦労様です」はどう使う? 「お疲れ様です」との違いや使い方・類語を解説
「ご苦労様です」は、相手の労をねぎらう時によく使われる言葉です。しかし、目上の人に対して使うべき表現ではないということを知っていますか? 今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、「ご苦労様です」の使い方や「お疲れ様です」との使い分けなどについて解説してもらいました。
「ご苦労様です」は、相手の労をねぎらう意味で使う言葉です。言われたら当然うれしいもの。
しかし、あいさつの言葉は、時に相手との関係性によって印象が変わるのが難しいところです。
この機会に、意味の違いや場面ごとの使い方をマスターしましょう。
今回は「ご苦労様です」の意味や使い方、「お疲れ様です」との違いについても解説します。
「ご苦労様です」の意味
まず、「ご苦労様です」の意味を調べてみましょう。
ごくろう【御苦労】
他人の苦労を敬っていう語。
また、他人の骨折りをねぎらっていう語。
他人の無駄な骨折りをあざけってもいう。ごくろうさま【御苦労様】
「ごくろう」を丁寧にいう語。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
他の辞書でも調べました。
ごくろう【御苦労】
他人の骨折りを感謝する意を表す語。
(1)ふつう、目上の者が目下の者に言う場合に用いる。
(2)冷やかし、嘲笑の意をこめて用いられることもある。
(『現代国語例解辞典』小学館)
以上のことから、「御苦労」は、「苦労」に「御(ご)」を付けて、他人の苦労に感謝し、ねぎらう気持ちを表す丁寧な言葉です。
さらに、「ご苦労様」とすれば、目上の人から目下の人に対して労を丁寧にねぎらうことができます。
「ご苦労様です」と「お疲れ様です」の違いや注意点
ここでは、「ご苦労様」と似た言葉である「お疲れ様」の意味や両者の違い、注意点を解説します。
「お疲れ様」の意味は?
違いを探る前に、まずは「お疲れ様」にどんな意味があるか調べてみましょう。
おつかれさま【御疲れ様】
相手の労をねぎらう意の挨拶語。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
「お疲れ様」もまた、相手をいたわる時に使うあいさつの言葉である、ということが分かります。
それでは、「ご苦労様」とはどう違うのでしょうか?
両者の違いは「目下・目上の両方に使えるかどうか」
「ご苦労様」も「お疲れ様」も相手の労をねぎらう時に使う点で、意味は同じです。ビジネスシーンでもよく使われますね。
特に「お疲れ様」は、社内におけるあいさつとして使用頻度が高い人も多いはず。朝のあいさつでは「おはようございます」ですが、それ以降は「お疲れ様です」が定番ですね。
「お疲れ様です」については、社内では目上の人に対してはもちろん、目下の人にも使って差し支えありません。
一方、前述したように「ご苦労様」は、目上の人が目下の人をねぎらう時に使える言葉です。そのため、社内で使う時は「お疲れ様です」のようにあいさつ語として多用できるかというと、そうではありません。
「ご苦労」という言葉は、あくまで目上の人が目下の人に掛ける言葉なので、それに「様」を付けて「ご苦労様」と丁寧な表現にしたとしても、目上の人に使うのは失礼にあたるため、避けた方がいいでしょう。
つまり、「ご苦労様」も「お疲れ様」も相手をねぎらう意味では同じですが、「お疲れ様」が目上・目下の両方に使えるのに対して、「ご苦労様」は目下から目上の人に対しては使えない、というのが両者の違いです。
社外の人には「お世話になっております」が基本
前段で、悩んだら「お疲れ様です」を使う方が無難だと書きましたが、ビジネスシーンで使う際には気を付けたいポイントがあります。
それは、「目上・目下」の上下関係に加えて、「社内か社外か」という、もう1つの関係性が加わるということ。
「お疲れ様です」は、社内では目上の人にも目下の人にも使えますが、そのまま社外でもあいさつ語として使えるかというと、やはり注意が必要です。
例えば、仕事で訪問した得意先の受付で「お疲れ様です」とは言いません。「お世話になっております」が一般的です。
また、案内状をもらって参加した得意先のイベントでも「お疲れ様です」とは言いません。「お招きいただきありがとうございます」の方が良いでしょう。また、前日会食などを共にしたのであれば「昨日はありがとうございました」と真っ先にお礼を述べるでしょう。
まとめると、社外の人に対するあいさつの場合には、「お疲れ様です」よりも「お世話になっております」を基本とし、場面に応じた感謝の気持ちを添えることをおすすめします。
「ご苦労様です」と「お疲れ様です」を使った例文
ここでは「ご苦労様です」と「お疲れ様です」を使った例文を、それぞれ紹介します。
「ご苦労様です」を使った例文
繰り返しますが、「ご苦労様です」を使うのは、目上から目下に対して、感謝し労をねぎらう時です。
例文
・皆さん、大変なことが多かった1年ですが、無事に乗り越えることができました。本当にご苦労様でした。(社長から社員へ、感謝の言葉を述べる時)
・この間の企画、とてもよくできていたよ。ご苦労だったね。(上司から部下へ、仕事の頑張りを褒める時)
・いつもご苦労様です。ありがとうございます。(商品やサービスを届けてくれる業者の人をねぎらう時)
「お疲れ様です」を使った例文
そして、「お疲れ様です」を使うのは、目上・目下関わらず、感謝し労をねぎらう時です。
例文
・今日も暑かったでしょう。お疲れ様です。(午前中の営業回りから帰った同僚へのあいさつで)
・部長、お疲れ様でございます。(出張中の上司が社内に連絡を入れた時)
・お疲れ様です。今日は大変勉強になりました。ありがとうございました。(仕事を手伝ってくれた先輩が先に帰る時)
「ご苦労様」「お疲れ様」に一言添えた例文
あいさつの言葉は、もともと感謝の思いやねぎらいの気持ちがこもったものです。
「ご苦労様です」「お疲れ様です」の一言だけでも心を込めて口にすれば、しっかり伝わることでしょう。
その上で、季節やその場のタイミング、関係性など考慮した一言を加えるのもおすすめです。
一言プラスした表現を、以下に紹介します。言い回しなど、参考にしてみてください。
例文
・今日も寒いですね。ご苦労様です。
・ご苦労様です。再配達、ありがとうございました。
・長年、お疲れ様でございました。お世話になりました。どうぞお体にお気を付けて。
・お疲れ様です。ご無理のないようにお過ごしください。
気持ちの伝わる言葉選びを
近年における「お疲れ様です」「ご苦労様です」について、意味と使い分けを解説しましたが、いかがでしたか?
言葉のマナーは、時代と共に変化します。
今では辞書にも「目上から目下へ」と書かれている「ご苦労様」ですが、かつては「お疲れ様です」よりも丁寧で、目上の人にも使える言葉だったという説もあります。となれば、その時代を知る年代の中には、目下の人から「お疲れ様です」と言われることを不快に思う人もいるかもしれないわけですね。
双方のズレを防ぐためには「本日もありがとうございました。お先に失礼いたします」など、ねぎらいよりも感謝を表現するのも1つの方法です。
一番大切なことはやはり、相手への思いやりや気持ちがあるかどうかです。これを機に、気持ちの伝わる言葉選びを心掛けてみてはどうでしょう?
(前田めぐる)
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