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処女膜とは。初体験の痛みを和らげる5つの方法

宋美玄(産婦人科医・医学博士)

初めてセックスをするとき、出血をしたり痛みを感じたりする人は多いかもかもしれません。その理由は処女膜が関係しているそう。産婦人科医・医学博士の宋美玄先生に処女膜とは一体何なのか、初体験の痛みを和らげる方法について伺ってみました。

初めてのセックスの際、「処女膜が傷ついて血が出た」という経験がある人もいることでしょう。

その一方で、初めてでも血が出なかった人もいれば、初めてでないのに血が出てしまう人もいます。さらに初めてのセックスは痛かったという人もいれば、痛くなかったという人も。

これらの違いには処女膜の存在が大きく関わっています。なぜ人によって、痛みや出血があったりなかったりするのでしょうか。そして、初めてのセックスでの痛みを和らげるためには、どうしたらよいのでしょうか。

処女膜とは? どこにある?

まずは初めてのセックスにおける痛みや出血の原因となることの多い、処女膜について知っておきましょう。

処女膜とは腟の入口から5~10mm程度のところにある、ひだのことです[*1]。「膜」と呼ばれるので、食品にかけるラップフィルムのように、腟の入り口全部を処女膜が覆っているようなイメージを持つかもしれませんが、実際はそうではありません。

上のイラストのように、処女膜が覆っているのは腟の一部だけ。中央部には孔(あな)が開いていて、生理(月経)の経血やおりものなどを排出します。セックスの際のペニスも、この処女膜の中央部の孔を通って挿入されていきます。

処女膜の役割

処女膜の役割については「腟を細菌感染から守るため」「腟に水が入らないようにするため」などといわれることがありますが、正確なところはわかっていません

強いて言えば、子宮や膀胱などの本来、骨盤内にあるべき臓器が下がって腟外に飛び出してしまう骨盤臓器脱(子宮脱)がおこった際には処女膜をたしかめることがあります。処女膜の位置を基準にして、骨盤内の臓器がどれくらい下がっているかを確認するからです。

処女じゃないのに処女膜がある?

ところで名前に「処女」という単語が入っていますが、実は処女だけにあるわけではありません。処女であろうとなかろうと、女性の体には一生、処女膜が存在しています。

また、一部が裂けたり、脱落したりしたとしても処女膜痕(こん)として、一部分が残っているため、処女膜があった位置はわかるようになっています。

なお、「処女かどうかは医師が処女膜を確認すればわかる」といった都市伝説がまことしやかにささやかれることがありますが、それはまったくのデマです。医師が見ても、誰が見ても、処女膜だけでその人が処女かどうかを見分けることはできません

処女膜を自分で見ることはできる?

処女膜は自分の目で確認することもできます。清潔な手で自分の小陰唇を左右に開き、腟の入り口付近を鏡に映してみましょう。処女膜のひだが確認できるはずです。

性器を見ることに恥ずかしさを覚える人もいるでしょうが、自らの性器の状態を自分で確認することは、とても大切なことです。

処女膜が完全に閉じていたらどうなる?

先ほどもお伝えしたように処女膜には通常、中央に孔が開いていて、そこから生理の経血やおりものなどの分泌物が排出されるようになっています。しかし中には、あるはずの孔がなく、処女膜が完全に閉鎖している場合があります。この状態は処女膜閉鎖症と呼ばれ、治療が必要な状態です。

処女膜が完全に閉鎖していると、生理が始まっても経血を排出することができません。生理がくるたびに経血が子宮や腟内に溜まっていくことになり、それが下腹部に痛みをもたらします。また、経血が溜まった状態が続くことでお腹の内部に経血が逆流し、子宮内膜症を発症しやすくなるともいわれています。

処女膜閉鎖症は無月経や不妊の原因にもなり、「まだ初経が来ていないが月に一度、生理痛のような痛みがある」と産婦人科に相談に行くと、じつは処女膜が完全に閉鎖し、子宮内に経血が溜まっていたというケースもあるのです。心当たりのある人は、ぜひ産婦人科を受診してください。

初体験の時、なぜ痛みを感じるのか

さて、処女膜の役割や概要について理解したところで、いよいよ本題です。初めてのセックスでは痛みを感じたり、出血したりするという話をよく聞きます。このとき、処女膜が痛みや出血の原因となっていることが多々あります。なぜ痛みを感じるのでしょうか?

処女膜の孔の大きさや膜の伸び縮み方に個人差があるから

セックスの際、ペニスは処女膜中央部の孔を通って挿入されます。処女膜には伸び縮みする性質がありますが、どれくらい伸びるのかには個人差があります。また、処女膜の厚さも孔の形や大きさも、人によってさまざまです。こうした違いにより、セックスで痛みを感じる人と、そうでない人との差が生じます。

処女膜が伸びやすければ、勃起したペニスの太さも受け入れることができますが、処女膜が比較的厚くしっかりしている場合などは、ペニスが挿入された衝撃で処女膜が裂けて痛みを感じたり、出血したりすることがあるのです。

出血しない人もいる

「初めてのセックスは痛いもの、出血するもの」という俗説がありますが、上記のように痛みや出血があるかどうかは人それぞれです。初めてのセックスでも血が出ない人は少なくありません。「処女ならば必ずセックスで血が出る」というのは間違った考えです。

なお、初セックスでの出血は、主に処女膜の裂けた部分からおこりますが、そのほかにも慣れないセックスで腟が傷つき、腟の内壁から出血することもあります。

小指すら入らない処女膜強靱症

多くの人は初セックスの際、痛みや多少の出血があってもペニスを受け入れることができますが、中には処女膜がとても硬く、ペニスどころか小指すら入らないような人もいます。処女膜が完全に閉鎖しているわけではないけれど、経血やおりもの以外を通さないくらい強靱(きょうじん)である場合は、処女膜強靱症と呼ばれます。

処女膜強靱症がセックスの妨げとなっている場合は処女膜切開といって、処女膜に切れ目を入れ、伸びやすくする治療を行います。これは保険適用の手術となっていて、数千円の自己負担で治療を受けることが可能です。

自分で処女膜をさわってみたとき、腟の入り口につかえるような感じがあり、小指すらも挿入できないという場合、処女膜強靱症である可能性が考えられます。処女膜強靱症に当てはまる人はそれほど多くはないようですが、気になることがあれば婦人科に相談してみましょう。

タンポンで処女膜は破れない?

「セックスで処女膜が裂けるなら、生理のときにタンポンを使っても同じことが起こるのでは?」と考える人もいるでしょう。考え方としてはもっともで、タンポンによって処女膜が傷つくことがまったくないわけではありません。

ですが個人差はあるものの、処女膜の孔は、タンポンくらいの細さであれば通り抜けられる大きさになっています。タンポンで傷ついたり出血したりすることは少ないといえるので、使うのを怖がらなくても大丈夫です。

ちなみに処女膜はセックス以外でも、たとえばスポーツなどで下腹部に力を入れることで裂けてしまうこともあるといわれています。初めてのセックスの前に処女膜が破れているかどうかについて、考える必要はありません。

初体験の時、痛みを和らげるには

「初めてのセックスの際に痛みがあるかどうかは人それぞれ」といっても、痛みがあるのであれば、できれば和らげておきたいと思うでしょう。初体験の痛みを和らげるにはどうすればよいのでしょうか。

(1)少しずつ太いものを挿入できるように試してみる

新しい洋服はまだ生地がかたく、少し窮屈に感じられることがありますよね。しかし何度も身につけているうち、徐々になじんで、やわらかくなっていきます。それと同じように、まだ何も受け入れたことのない腟や処女膜はかたく、窮屈な状態にあります。そこにいきなりペニスを挿入しようというのですから、痛みも生じるでしょう。

ですから、いきなり太いものを挿入しようとせず、まずは指や小さめのバイブレーターなどを入れてみることから始めて、ちょっとずつ処女膜を伸びやすくしていくと、痛みが軽減されやすくなります。

細いものからスタートして、徐々に太いものを試しつつ、ペニスを受け入れられる準備をしておきましょう。

(2)相手を信頼し、リラックスする

初めてのセックスは緊張によって体もこわばってしまいがちです。とてもプライベートな場所である性器を、自分以外の人に触られることには恥ずかしさがあり、緊張してしまうのは当然です。

腟の周辺は骨盤底筋群という筋肉で支えられており、それらの筋肉が緊張によって硬直することで、挿入時の痛みが強くなることもあります。緊張をほどき、リラックスした状態でペニスを受け入れるようにすることで、痛みを多少でも和らげることができるでしょう。

(3)挿入は腟がしっかりと濡れてから

性的な刺激を受けて十分に性的興奮がおこると、性器周辺の血流が増し、腟粘膜からは体液(潤滑液)が分泌されて、いわゆる濡れた状態になります。こうなると腟内も充血して弾力が増し、ペニスを受け入れやすくなって、痛みが比較的出にくい状態になります。前戯に時間をかけ、腟がしっかりとうるおってから挿入にうつりましょう。

なお、腟の潤滑液は水分不足で脱水に近い状態になっていると、うまく分泌されないことがあります。セックス前にはしっかりと、水分補給を忘れずにしておきましょう。

(4)潤滑ゼリーを使う

物理的にうるおいを足せばすべてが解決するわけではありませんが、うるおいがあることでスムーズな挿入が促され、初めてのセックス特有の痛みも和らぐことがあります。それには潤滑ゼリーを使うのもひとつの方法です。

「初めてなのにゼリーを使うなんて恥ずかしい」と感じるかもしれませんが、濡れずに痛みが増すよりも、安心してセックスに臨めるほうがよいはず。実際に使うかどうかは別にしても、お守りがわりに準備しておいてはどうでしょうか。

痛みや出血はあってもなくても恥ずかしくない

初めてのセックスであっても、痛みや出血があるかどうかは人それぞれです。それよりも、セックスを楽しめることのほうが、ずっと大切です。

痛みも出血も、あってもなくても恥ずかしいことではありません。そこばかりに気を取られず、大切な人と迎える初めてのときを、リラックスして楽しんでくださいね。

(文・構成:山本尚恵、監修:宋美玄先生)

※画像はイメージです

参考文献

[*1] 「セックス・セラピー入門 性機能不全のカウンセリングから治療まで」日本性科学会/金原出版 p29

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