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「痛み入ります」はどう使う? 意味や使い方・類語を解説

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「痛み入ります」という言葉を聞いたことはありませんか? 相手の好意などに対して大変深く恐縮し、心に染みるほど感謝しているという意味です。今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、「痛み入ります」を使う際のポイントや例文、言い換え表現を教えてもらいました。

「痛み入ります」という言葉は、日常ではあまりなじみがないかもしれません。

しかし、テレビ朝日系で放映された人気ドラマシリーズ『家政夫のミタゾノ』を観ていた人は、記憶にあることでしょう。主役の松岡昌宏さんが演じるミタゾノさんの決めゼリフでしたね。

今回は「痛み入ります」の意味や、どんな使い方ができるのか、一緒に学びましょう。

「痛み入ります」の意味

まずは辞書で「痛み入る」を調べると、次のように書かれています。

いたみいる【痛み入る】
相手の親切・好意にひどく恐れ入る。恐縮する。
感謝の言葉としても用いる。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

例文として「わざわざのお越し痛み入ります」ともあります。

以上のことから「痛み入る」とは相手の親切や好意に対して大変深く恐縮し、心に染みるほど感謝しているという意味です。

また、「痛み入ります」という言葉は、その深い感謝の気持ちを表すものです。

「痛み入ります」を使う上で知っておきたいポイント

ここでは、「痛み入ります」という言葉を使う上で知っておきたいポイントを紹介します。

「痛み入ります」と「恐れ入ります」の違い

ビジネスシーンでもよく聞く「恐れ入ります」という言葉にも、「相手の親切や好意に対して恐縮する」という意味がありますね。

「痛み入ります(痛み入る)」は、さらに恐縮の度合いが大きく、深く感謝している時に使います。

つまり、「恐れ入ります(恐れ入る)」の意味に「深い感謝」のニュアンスを加えたのが、「痛み入ります」だといえます。

「痛み入ります」は、相手の心遣いに「申し訳ないほどありがたい」と痛切に感じ入り、恐縮しながらも感謝の気持ちを深く表現したいような、ここぞ、という場面で使いましょう。

「痛み入ります」は目上の人に使える

ビジネスシーンで「痛み入ります」は、誰に対して、どのような場面で使えるのでしょうか? 

まず、こちらが非常に恐縮する立場にある相手は、上司や取引先など目上の人であると考えられます。

また、場面としては、そのような相手から、心が痛いほど恐縮するような配慮や気遣いを受けた時です。

例えば、普段は直接話せない立場の役職者などから人前で褒められたり、完全に自分の落ち度である失敗を上司にフォローしてもらったりした時です。

助言、奨励、力添え、サポートなど、さまざまな配慮や便宜を図ってもらった場面が思い浮かびますね。

「痛み入ります」を使う時の注意点

ここまで述べたように「痛み入ります」を使うのは、心が痛いほど感謝している場合です。

例えば、いつもおなじみの取引先の人からおやつなどの差し入れをもらった時に「痛み入ります」と使うのは、ちょっと大げさです。

また、納期や値段の交渉など日常的な商談で「痛み入りますが、端数の額を値引きしていただくわけにはいきませんか?」などの使い方も、極端です。

「恐れ入りますが」「恐縮ですが」で十分対応できる場合には、わざわざ「痛み入ります」を使う必要はありません。

大げさになってしまわないよう、使う場面には気を付けましょう。

「痛み入ります」をどういう場面で使えるのか?(例文付き)

実際に「痛み入ります」を使った例文を、5つのビジネスシーンとともに、以下に掲げます。

目上の人から想像以上の評価を受けた時

先ほど例で挙げた通り、目上の人から大勢の人の前で褒められたり、想像以上の評価を受けたりした時に使います。

例文

・社長から直々にお褒めいただき、痛み入ります。

取引先や上司に自分の失敗をフォローしてもらった時

完全に自分の落ち度であるところを取引先の人がかばってくれたり、上司がフォローしてくれて大事に至らなかったりした時に使います。

例文

・(かばってくれた上司に対して)今回のお心遣い、誠に痛み入ります。二度と同じ失敗を繰り返すことのないよう、肝に銘じます。

上司から直々に温かい助言を受けた時

上司から部下にアドバイスをするのはよくあることでしょうが、それが表面的なものではなく、本当に自分のことを思って言ってくれたのだと感じた時は、心底うれしいですね。

そんな時には、心を込めて感謝を伝えると良いでしょう。

例文

・本日は、貴重なご助言をいただき、痛み入ります。これからも精一杯、励みますので、ご指導のほどよろしくお願いします。

上司の力添えで仕事がうまくいった時

上司など目上の人の推薦やサポートにより、仕事がうまくいった時などに使います。

例文

・先日は、お力添え痛み入ります。○○様をご紹介してくださったおかげで、進行中の案件がスムーズに進み、感謝しております。

「痛み入ります」の言い換え表現

最後に、「痛み入ります」と似たような意味合いを持つ表現を以下に紹介します。

「身に余る光栄です」

過分な配慮をしてもらったり、条件のいい話を持ち掛けられたり、受賞など想像以上の評価を受けたりした時に「自分にはもったいないほどだ」という意味で使います。

例文

・Y社に部長として迎えてくださるお話、身に余る光栄です。

「頭が下がる思いでいっぱいです」

「頭を下げる」のではなく、然に頭が下がるようなありがたい対応をしてくれた相手に対して使う、素直な表現です。「頭が下がる思いです」でも良いでしょう。

例文

・先日は、私の失敗を課長にフォローしていただき、頭が下がる思いでいっぱいです。

「恐悦至極に存じます」

「恐悦」とは「相手の好意や配慮をもったいなく思って喜ぶこと」で、「至極」とは「この上なく」という意味です。

古風な表現ですが、意味としては「痛み入ります」に非常に近いものがあります。また、目上の人の慶事を祝う時にも使うことができます。

例文

・お忙しい○○様にわざわざ予定を合わせていただけるとは、恐悦至極に存じます。

「甚大なるご配慮に心から感謝いたします」

「痛み入ります」同様、感謝の程度が非常に大きい場合に使いますが、配慮の大きさに焦点を当てているため、「ちょっと余計だったかな」という懸念を相手に抱かせる心配もありません。

例文

・このたびは当該プロジェクトへの予算についても、将来性を鑑みての甚大なるご配慮に心から感謝いたします。

お礼の仕方にセンスが表れる。適切かつタイムリーにと心得て

「痛み入ります」は、深い感謝の気持ちを表す言葉であることを紹介しました。

お礼の仕方には、ビジネスセンスが表れます。

さりげなくタイムリーに謝辞を述べられると、相手はとても気持ち良く感じます。

逆に、いつのことだか相手が忘れてしまうほど時機を逸すると、「こういう人はチャンスを逃すのだろうな」と思われてしまいかねません。

お礼はタイムリーに、そしてオーバーになりすぎないよう、その場や状況に適した言葉を選びたいですね。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

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