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ビジネスで「幸甚」はどう使う? 意味や使い方・類語を解説

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「幸甚」という言葉を知っていますか? 「幸甚です」「幸甚に存じます」「幸甚でございます」など、ビジネスシーンで目にする機会もあるかと思います。今回はそんな「幸甚」の意味や使い方を、ライティングコーチの前田めぐるさんに解説してもらいました。

「幸甚に存じます」「幸甚でございます」など、ビジネスシーンでよく使われる「幸甚」という言葉は、「この上なく幸せであること」を意味しています。

やや堅い印象もありますが、どんな時に使っていますか?

今回は、「幸甚」の意味や使い方を紹介していきます。

「幸甚」とは?

「幸甚」は「こうじん」と読みます。

まずは一文字ずつ、意味を調べてみましょう。

「幸甚」の意味は「非常に幸せ」

【幸】コウ・さいわ(い)・さち・しあわ(せ)・さきわ(う)
(1)運がよい。思いがけないしあわせ。さいわい。さち。
(2)かわいがる。いつくしむ。
(3)天子のおでまし。みゆき。

【甚】シン・ジン・ソ・はなは(だ)・はなは(だしい)
(1)ひじょうに。はなはだ。はなはだしい。
(2)なに。どんな。疑問の意味を表す。
(『例解新漢和辞典』三省堂)

「幸甚」の場合の「幸」は、(1)の「幸い。思いがけない幸せ」を表します。

「非常に、甚だ」という意味の「甚」と合わせた「幸甚」は、「非常に幸せ。とても幸せ」という意味です。

次に、熟語の「幸甚」を引いてみましょう。

こうじん【幸甚】
何よりの幸せ。多く、手紙に用いる。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

以上のことから、「幸甚」とは「この上なく幸せであること。何よりも幸せであること」を示したい時に使う言葉です。

「幸いです」よりも幸せの度合いが大きい「幸甚」

何かを依頼をする際に「〜していただけると幸甚です」と書くことがありますが、「それを引き受けてもらうと、この上なく幸せである」という意味を表しているわけですね。

「〜していただけると幸いです」という書き方もよくあります。

「幸甚です」は「幸いです」よりも幸せの度合いが大きいことを表すことから、さらに重要な依頼の際に使います。

「幸甚です」は主に社外や目上の人に使う言葉

「幸甚」の意味が分かったところで、次にビジネスシーンでの使い方を考察します。

「幸甚」に丁寧語の「です」を加えた「幸甚です」は、「この上なく幸せです」という意味です。

国語的には誰に対しても使えますが、改まった印象を与える言葉なので、そう頻繁に使うものではありません。主に、ビジネス文書や重要なビジネスメール、公式な場でのあいさつで使うのがいいでしょう。

主に取引先など社外の人に対して、あるいは上司、目上の人に対して「幸甚です」と使います。

さらに丁寧に伝えたい場合には「幸甚でございます」「幸甚に存じます」と書くと良いでしょう。

また、漢語である「幸甚」は堅苦しい印象を与えてしまうこともあるので、ちょっとしたお願いなどで使うには、少々大げさでもあります。

改まった依頼ではない時や、相手が同僚や部下、親しい間柄の上司である時は、「幸いです」「うれしいです」「ありがたいです」などの方が良いでしょう。

「幸甚です」はどんな時に使えるのか?(例文付き)

「幸甚です」と伝える相手が分かったところで、どのような場面で使えるか考えてみましょう。

ツールとしては、主に手紙や文書などで使います。また、謝辞を述べたり、改まった依頼をしたりする時のメールやメッセージでも使います。

口頭ではほとんど使いませんが、公式な場でのあいさつを述べる際にも、使えるでしょう。

「幸甚です」と手紙やメールに書く時、「私はこんなに幸せですよ。最高に幸せですよ」と自分の幸せをただ自慢したくて使うわけではもちろんありませんよね。

「〜していただけたら幸甚です」「〜していただき、幸甚です」というように、何らかの依頼や謝礼を伝えたくて使うわけです。

何かをしてもらった相手への感謝の気持ちを伝えたい。あるいは、「その依頼を受け入れてもらえるなら本当に自分は運がいい、ぜひ引き受けてもらいたい」というような場面に、「幸甚」という言葉が選ばれているのです。

そんな「幸甚」の使い方と例文を、4つのビジネスシーンとともに以下に挙げます。

大切なことを依頼する時

重要な案件を依頼する時や、その相手にこそぜひ引き受けてほしいことを依頼する時に使うと良いでしょう。

例文

・もしも、御社にお引き受けいただけるなら幸甚に存じます。

大切な相手に何かを申し出る時

取引先に対して、ぜひとも貢献したい、それができれば幸せであるという意欲を示したい時に使います。

例文

・今回のような有意義な仕事に関わらせていただけることは、弊社としても幸甚の至りです。

感謝の気持ちを伝える時

賞や贈り物を受け取った時、改まった席に招かれた時など、何らかの恩恵を受けた相手に対して感謝を述べる際に使います。

例文

・本日は、素晴らしい場にお招きいただき、幸甚でございます。

贈り物をする時

目上の相手に贈り物をする際に「それを受け取ってもらえたらうれしい」という意味で使います。

例文

・お気に召していただけましたら、幸甚です。

「幸甚」の言い換え表現

ビジネスシーンでは、「幸甚」のように、何らかの依頼をする場合や、心からの感謝を示す場合に使われる表現がいくつかあります。

似たような意味合いを持つ言葉を、言い換えの表現と共に紹介します。

「この上ない幸せです」

「幸甚です」と同じ意味ですが、柔らかい表現のため、手紙やメールだけでなく、口頭でも使えます。

また、目上・目下に関わらず、社内外の誰に対しても使うことができます。

例文

・今回のプロジェクトをみなさんと共にできることは、チーフとしてこの上ない幸せです。

「これに勝る幸せはございません」

こちらも「幸甚です」と同じ意味ですが、分かりやすい表現なので、口頭でも使えます。

目上の人に対しては「ございません」、それ以外は「ありません」と結ぶのが良いでしょう。

例文

・部長に仲人をお願いできるのでしたら、これに勝る幸せはございません。

「至福です」

「この上ない幸福」の意。福々しく、最高に満ち足りた気持ちを表現できます。

誰に対しても、手紙でも口頭でも使えます。

例文

・上田先生にこの家の設計をお願いできるなら、私たち2人にとってまさに至福です。

「ありがたく存じます」

「幸甚です」同様、恩恵を受けた相手に対して感謝を述べる時はもちろん、依頼をする時にも使えます。

口語なので「幸甚」のように堅苦しくなく、広く使える表現です。

例文

・この度は、遠路はるばるお越しいただき、誠にありがたく存じます。

「幸いです」

「幸甚です」よりも日常的な表現です。

お誘いや依頼、お礼など述べる際に、幅広く、誰に対しても使えます。丁寧に伝えたい時は「幸いでございます」が良いでしょう。

例文

・ぜひお目にかかれましたら、幸いです。

「うれしいです」

「幸甚です」よりも日常的で、「幸いです」よりも親しみやすい表現です。

同僚や目下の相手に対して使います。目上の人に対しては「うれしく存じます」と書くと丁寧です。

例文

・先日伺っていた資料の件、メールの添付で私宛に送りいただけたらうれしいです。

最大限の幸せを表現して依頼する「幸甚」という言葉

いかがでしたか?

依頼の文書で「幸甚です」と書く際は「引き受けていただければ、この上なく幸せです」という意味で使います。

「この上ない幸せ」はそう何度もあることではないので、日常的な依頼や仕事のやり取りで「幸甚です」を多用すると、重みが半減してしまいますね。

仕事のできる人は、たいてい依頼上手です。言い換え表現で挙げた言葉も使いながら、依頼スキルを高めましょう。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

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