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【心理学を応用】仕事で役立つ交渉力を身に付ける方法

高見綾(心理カウンセラー)

交渉力がなく、いつも自分の主張が通らないなんてことありませんか? 今回は、交渉力を鍛える方法と、実際に使える交渉術を心理カウンセラーの高見綾さんに教えてもらいます。

取引先のお客様や社内の調整など、交渉する機会は意外とあるものです。しかし、交渉力に自信がないと感じている人は多いのではないでしょうか。苦手意識があると、堂々と振舞うことができず、相手に言いくるめられてしまうことも少なくありません。

そこで今回は、仕事で役立つ交渉力を身に付ける方法を詳しく解説します。交渉力を鍛えて、お互いにWIN-WINの関係を作っていきましょう。

交渉力とは?

交渉力とは、「利害関係のある相手と、お互いが納得いくような答えを見つけるために話し合う力」をいいます。

例えば価格交渉では、売る側は高く売りたいですが、買う側は安く買いたいと思っていますよね。双方の言い分がある中で、価格の妥当性や、その商品を買うメリットなどを総合的に考えていく必要があります。

もし交渉力がなければ、自分の主張が通らず、相手の条件を一方的に飲むことになってしまいかねません。それでは仕事が立ち行かなくなってしまいます。

とはいえ、もし自分の主張が通った場合であっても、必ずしも成功とはいえないのが交渉の難しいところ。もし相手が、納得いかない状態のまま結論が出ていたとしたら、信頼関係が崩れ、長い目で見た時にマイナスとなりかねません。どちらかが勝った、負けた、となるのではなく、お互いに利益があるように話し合う視点が必要です。

交渉力は、社外だけではなく社内の調整をするために必要となることも。ビジネスは人間関係をベースにしているため、感情がもつれてしまうとうまくいかなくなります。相手を否定することなく、客観的な情報を提示することで納得させ、信頼関係を作っていくことがポイントです。

交渉力がある人に見られる共通点

では、そんな「交渉力」がある人には、どのような共通点があるのでしょうか? 確認しましょう。

(1)根回しができる

交渉力がある人は、根回しを怠りません。

例えば、社内で重要なテーマを話し合う時には、キーパーソンとなる人や自分の意見と対立しそうな人に対しては事前に話を通しておくなどして、スムーズに事が運ぶように工夫しています。

(2)準備に時間をかける

交渉力のある人は、事前にストーリーを考えています。相手はどう反応するのか、どんな反論があるのかをあらかじめ想定し、疑問や質問にきちんと答えられるように入念な準備を行います。

(3)自分の意見をはっきりと伝える

できることとできないことの線引きが明確です。相手から無理難題を提案されたら、きっぱりと「できません」と答えます。

そのため、相手主導の交渉になることなく、お互いに納得できる着地点を探すことができます。

(4)堂々としている

立場が上の人の前でも、自信を持った振る舞いをします。そのため、相手から信頼感や安心感を持ってもらいやすいのが特徴です。

(5)相手の話をよく聞く

交渉力のある人は、自分の主張を一方的に押し付けるのではなく、適度に質問を織り交ぜながら相手の話をよく聞きます。人の懐に飛び込むのが上手な人が多いです。

交渉力を鍛える方法

では、そんな交渉力を鍛える方法をお伝えします。

(1)事前準備で着地点をはっきりさせる

交渉は準備が重要だとお伝えしてきましたが、準備では着地点をはっきりさせておきましょう。

交渉のゴールを決めておき、譲れない条件の他、ここまでなら妥協できるという線引きを明確にしておくだけでもテンポよく話せるようになります。

(2)日頃から相手の情報を把握しておく

相手の性格や状況、抱えているニーズを知っていると、交渉が有利に進みます。日頃から相手に興味を持って雑談をしておくと良いでしょう。

(3)交渉シナリオを作る

提案に対して、相手はどう反応するか、どんな疑問や懸念点が出てくるかを想定したシナリオを作りましょう。

事前に準備しておけば、しっかりと答えることができ信頼関係が築きやすくなります。

(4)長期的な視野で提案を考える

交渉相手とは長く良い付き合いをしていきたいもの。目先の利益だけではなく、長期的に見て双方にメリットがあるような提案を考える練習をしておきましょう。

(5)交渉したら評価する

交渉を終えたら、どの点が良かったのか、どの点が課題なのかチェックしましょう。

うまくできなかった場合は、改善策を具体的に考えるところまで落とし込めると、次回からの交渉に生かせます。

心理学を用いた10の交渉術

最後に、鍛えた交渉力を生かして使える交渉術をお伝えします。交渉対象別で紹介するので、ぜひ試してみてください!

誰にでも有効な交渉術

(1)一緒に解決するスタンスを取る

交渉相手を敵だと捉えると感情がこじれやすくなります。

「私たちは」「我々は」という言葉を使って、一緒に物事を解決していくという立ち位置を取ると、スムーズに交渉が進みます。

(2)選択肢を用意する

「この企画ですが、A案もしくはB案がおすすめです」と選択肢を複数提示されると、A案かB案のどちらかから選んでしまう心理があります。

どちらも不採用にするという選択肢が見えにくくなる効果があります。

(3)第一印象にインパクトを出す

自分の話に関心の低い相手に有効です。

話に関心が低いということは最後まで聞いてくれるかも分からないので、キャッチーなタイトルや、インパクトのある重要な情報を最初に伝えるようにしましょう。

人は最初が最も印象に残るため、相手の関心を引き付けることができます。

(4)悪い情報は最初に伝える

良い情報と悪い情報がある時は、悪い情報を最初に伝えましょう。後から言われたことが印象に残るという心理効果がありますので、悪い情報は後から伝える良い情報に上書きされます。

例えば、「この商品は値段が張りますが、品質が優れています」と言うと、品質が良い話の方が記憶に残ります。

(5)小さな要求を提示する

契約を取ることが目的だったとしても、「1分だけでいいので」「お話だけでも」と小さな要求を積み重ねていきます。

小さな要求を提示すると、「それくらいなら」と関心を持ってもらいやすくなります。

(6)前提条件を変える

自分たちの商品を使ってほしい場合、その商品が必要だという前提で提案をします。

例えば「何色がお好きですか? 赤系? それとも青系ですか?」と聞くと、「青系かな」と返答がきたとします。「それならこのきれいなブルーの商品はいかがですか?」と勧めるのです。

上司や先輩に有効な交渉術

(7)相手の顔を立てて根回しをする

目上の人に対しては、相手の顔をつぶさないことが大切。例えば部長に決裁権がある場合は、直接部長と交渉するのも手。

ただしその際は、直属の上司に事前に根回しをしておくことも忘れずに。

(8)相手の不安を取り除く

例えば有給休暇を取りたい場合、上司としては仕事に支障が出ないか心配になるものです。

ですので、あらかじめ「来週お休みが欲しいです。その間の仕事は、〇〇と△△がありますが、休み前までに終わらせることができます」と言って安心させてあげると許可を得やすくなります。

後輩に有効な交渉術

(9)相手の真意を理解する

例えば、部下や後輩から給料を上げてほしいと言われた場合、「自分は認めてもらっていない」という気持ちが給料への不満に変化していることが少なくありません。

給料という表面的な問題だけでなく、「他には?」「もし~ならどう?」と質問を積み重ねて、相手の真意に沿った解決策を考えましょう。

(10)同じ方向を見て話をする

話し合う際は、正面で向かい合うのではなく、後輩と同じ方向を見ることができる隣の位置に座るようにすると、横の連帯感が芽生えます。

すると、利害が対立するような話であっても、一緒に問題について話し合うというスタンスになり、心理的な圧迫感が減ります。

まずは経験値を上げること!

交渉力は、一朝一夕に身に付けられるものではないので、事前準備をしっかりして場数を踏むことで経験値が上がっていきます。

交渉は、人間関係がベースになっているので、相手の感情を逆なでしないことも大切な要素です。交渉相手を敵だと思わずに、一緒に問題を解決する仲間だと捉えると、気持ちもラクになるのではないでしょうか。

(高見綾)

※画像はイメージです

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