悪い男は「君のことを知りたい」と誘いかける #悪い男の恋愛ブラックファイル
幸せな恋愛をするためには「悪い男に捕まらないこと」が一番大事。この連載では、催眠心理療法士兼恋愛コラムニストの浅田悠介さんが、悪い男たちの恋愛手口を紹介します。
お嬢さん。
幸せな恋愛をゲットするための、たったひとつの冴えたやり方をご存じでしょうか?
それは「悪い男に捕まらない」こと。
いいですか?
この世には、貴女の心と身体を奪おうとする獣や悪魔がたくさんいます──いま、この画面を見ながら想像したよりもずっと。本連載では、そんな「悪い男」の手口を紹介していきます。
それをどうか心の中にファイルしてください。危ない色のファイルですが、いつか役に立つときがくるはずですから。
本日の恋愛ブラックファイル
「てか、相性もあるしね」
「お前のこと、もっと知りたいと思ってる」
「いろいろわかってから付き合ったほうがよくない?」
わかりますか、この感じ。
この「知りたい」というワードをゴリ押してくる感じ。
正直、謎の説得力がありますね。たしかに恋愛は相性も大事。まあ、だとすれば相手を知ろうとするのは悪いことではないわけです。
もちろん、貴女も、その裏の意味はわかっています。もう大人ですから。バーや居酒屋で飲みながら、ちょっとスマートに口説かれるのも悪い気はしませんよね。
彼の冗談をまじえながらのトークは続きます。そして、こう考えはじめます。たしかに付き合うなら失敗したくないかも。だったらいまも楽しいし、このまま相性を確認して──
ダウト!
お嬢さん。それが悪い男のブラック恋愛術なのですよ。
よろしいですか?
悪い男は付き合う前に「君のことを知りたい」を連発するのです。
とても都合のいい言葉だから。ふわっと貴女を納得させて、ガードをゆるめて、ハメをはずさせるために。もしかすると、そのあと約束を守らずにサヨナラするために。
この手口を使う悪い男のタイプ
ズバリ「知りたい系男子」です。
冗談みたいな名前ですよね。しかし誰も彼も「君のことを知りたい」「付き合う前にお互いを知るのって大事だと思う」というセリフを吐くのです。
この「知りたい」が曲者なのですよね。
よく考えると、まったく具体性がないから。絶妙に大事なことをボカしています。それなのに真面目なことを言っているように感じられるのがミソです。男性側としては「すごく当然の主張をしてるんだけど──間違ってる?」という体を装えるわけですね。
たしかに理屈はもっともです。
付き合うからには長く付き合いたい。そのためには付き合うまでにいろんな相性を確かめておくべきじゃないか。いわばスーパーの試食みたいな(試食の何が悪い?)ものだ。いやらしいとかじゃない。真面目に恋愛を考えているだけだ──というわけです。
気を抜くと納得させられそうですよね。考えられたセリフだけに、ぱっと反論するのは難しいかもしれません。しかしその正体は、体よく貴女を騙そうという悪い男でしかないのですよ。
この手口を使う効果と男性心理
悪い男がこの手口を使う理由はシンプルです。
貴女のガードを崩しやすいから。
使い勝手のいいセリフなのです。精神的なガード。たやすく身をまかせてなるものかという乙女のプライド。この言葉は、それを、ひょいと突破できるくらいの力を秘めているのですね。
なぜ、そこまで効果的なのでしょうか?
それは「君のことを知りたい」の裏に「貴女との関係を真面目に考えていますよ」というニュアンスが隠されているからです。
誰だって、大事に考えてもらえるとうれしいですよね。ちょっといいと思っていた男性に言われた日には天にも昇る気持ちになります。そこまで考えてくれるなら、と身を任せてしまうのもわかるというものです。
しかし、この悪い男が「貴女との関係を真面目に考えていますよ」と口にしていないことに注目してください。実際は「キミヲシリタイ」と語っただけなのです。
ふわっとしたセリフを吐いただけじゃないですか。なんの具体的な約束もしていないのです──めちゃくちゃ怖くないですか。
貴女の純心をもてあそぶ最悪の手口。まさに悪い男のブラック恋愛術です。
この手口の見破り方と対処法
この手口の見破り方を紹介します。
手口もシンプルなら、見破り方もシンプルです。
その男の口から「知りたい」という言葉が出たかどうか。
このセリフは誠実さを演出しながら、実は、何も約束せずにことを運べる悪魔のようなフレーズです。実際、この言葉を巧みに使う男は悪魔みたいなものでしょう。あるいは契約書にハンコを押してないのに、商品をだましとる詐欺師でしょうか。
もちろん「知りたい」と口にしながら、心から、貴女との関係を考えようとしている男性もいるかもしれ──いや、絶対いません。いません。目をさましてください。
本当に貴女を想っているなら、その前に「付き合おう」と言ってくれるはずですよ。それが男女の作法ですから。
人間の本性は行動にあらわれます。言葉で何を言ったかではありません。
お嬢さん。
その「知りたい」は、本当に貴女のためを想ってる?
(文:浅田悠介、イラスト:ますだみく)