自分らしさに悩む人へ。専門家が教える「見つけ方」
自分らしさとは一体なんでしょうか? 個性との違いは? その見つけ方を心理カウンセラーの大塚統子さんが解説。あなたらしさを上手にアピールする方法を紹介します。
「自分らしく生きる」「自分らしさの象徴」など、しばしば「自分らしさ」という言葉を耳にします。では、この「自分らしさ」とはなんなのでしょうか? また、自分らしさを見つけるにはどうすればいいのでしょうか?
心理カウンセラーの大塚統子さんに「自分らしさ」について教えてもらいました。
「自分らしさ」とは?
「自分はこんな人間だ」「こんなふうにするのが自分だ」と自ら認識していることが、「自分らしさ」です。
人はいろいろな自分が集まってできています。電車で他人に席を譲る自分もいるでしょうし、家族にイライラしてしまう自分もいます。いろんな自分が集まって、ひとりの人間になっています。
自分らしさは、こうした自分を形作っているさまざまな自分の、どの部分に焦点を当てるかで変化します。
たとえば、電車で席を譲る自分に焦点を当てると、優しさ・思いやりが「自分らしさ」になるでしょう。イライラする自分に焦点を当てれば、怒りっぽい・短気な性格が自分らしい部分だと思えます。
このように、「自分が自分をどんな人だと感じているのか」という「自己概念(セルフ・イメージ)」が、自分らしさの認識を作り出しています。
個性との違いは「自分主観」か「他人主観」か
ほかの人との「比較」で使う場合には、自分らしさも個性も同じような意味合いで用いられます。しかし厳密には異なる言葉です。
自分らしさは「自分で自分を認識しているもの」です。それに対して、個性は個人の特徴として「他者とのちがいが認識されるもの」です。
「自分らしさ」の見つけ方
以下の1と2の質問を自分自身にして、深く掘り下げて考えてみましょう。さらに3の質問を近しい人に投げかけてみましょう。
(1)「好きなこと」から自分を見つける
1.あなたが好きなことはなんですか? 昔好きだったことはなんですか?
好きなことを思いつくだけ書き出してみましょう。そして、書き出したことのどんなところが好きなのか、その好きなことをしているときどんな気持ちになるのかを考えてみましょう。
たとえばドラマを見るのが好きで、「登場人物に感情移入しながら見ていると、人間関係についていろいろ考えさせられるのがおもしろい」と感じているとします。その場合、「人が好きで、人とどうかかわるのかに興味がある」というのが、その人の「自分らしさ」かもしれません。
また、食べ歩きが好きで「おいしいものを食べると幸せな気持ちになるのが好き」であれば、さらに「なぜおいしいものを食べると幸せに感じるか」を考えてみるといいでしょう。
お店の人のこだわりを感じ取れるのが幸せと感じるなら、「人が大切にしているものを敏感に感じられる」ことや「人に感謝できる」ことが自分らしさかもしれません。おいしいものを食べることで、普段がんばっている自分を承認できて幸せなのだとしたら、「がんばり屋さん」「人や自分のがんばりを認められる」のが自分らしさかもしれません。
好きなもの、好きなことは人それぞれ。たとえ同じものが好きでも、そこから感じることも人それぞれです。自分が好きなことから自分らしさを見つけてみましょう。
(2)「嫌なこと」から自分を見つける
2.あなたが日常で「これは嫌だ」と思うのはどんなことですか?
どんなことを嫌だと思っているのかを知るのも、自分を理解することにつながります。
できれば10個くらい書き出してみましょう。たとえば「人の悪口が嫌」「怒るのが嫌」「威圧的な人が嫌」など……。
次に、書き出した嫌なことと対になるように「自分が大事にしてきたこと」は何かを考えてみましょう。たとえば、「人の悪口が嫌だから人のいいところを見ようとしている」などです。そうすると「ほかの人の素晴らしさを見つけて伝えたい」のが自分らしさだと考えられます。
「怒るのが嫌だからたくさん我慢をしてきた」のだとしたら、自分が我慢することで誰かを守ることができたのかもしれません。そうすると、「誰かを守る強さ」が自分らしさである可能性があります。
同様に、威圧的な人が嫌で「自由であること」をとても大事に思っているのなら、それが自分らしさといえるでしょう。
(3)「客観的」に自分を見つける
3.「私のいいところはどこ?」と知人に聞いてみる
ほかの人からすると「すごいこと」でも、自分自身が「できて当然」と思っていれば自分らしさだと認識するのが難しくなります。
たとえば友だちが落ち込んでいたら毎回話を聞くのが当たり前、と思っているとします。その場合は、落ち込んでいる人を放っておけない優しさや面倒見のよさが「自分らしさ」だといえるでしょう。
しかし、当たり前だと思っていることは自分ではわかりにくいもの。
ですから、友だちなどに「私のいいところってなんだと思う? 外見ではなく内面的なところで教えて!」とお願いしてみましょう。友だちや家族、職場関係の人など10人以上に聞いてみるといいですね。そこで何人かから共通して出てきた言葉は、あなたらしさに認定していいでしょう。
「自分らしさ」を出す方法
「自分らしさとは何か」を理解した上で知りたいことといえば、その自分らしさをどのようにして表に出していくかでしょう。
以下の2STEPを踏むことで、自由に生きていく方法が見つかるはずです。
STEP1:「今の私」を肯定する
まずは「これが今の私」と認めることです。自分を肯定することが、自分らしさを表現するための第一歩です。
STEP2:「自分らしさ」を誰かのために使う
次に、その「自分らしさ」を誰かのために使いましょう。
ただし、自分らしさを「相手に認めさせよう」と考えて行動するのはただの独り善がりです。誰かを喜ばせるため、誰かを幸せにするために自分らしさを活用してみましょう。
たとえば、細かなところにまで気がつくのが自分らしさなら、その能力を使って誰かをサポートしてみるといいですね。いつも笑顔でいるのが自分らしさなら、その笑顔を誰かに向けましょう。
誰かのために役立てようと考えて行動すると、自分らしさを出すことが人を幸せにすることにつながります。そうすると、自分らしく振る舞うことに自信が出てくるはずです。
「自分らしさ」は本当に必要なのか
ここまで、自分らしさとは何かについて深堀してきましたが、それを無理に見つけようとすることへの嫌悪を抱く人ももちろんいることでしょう。
自分らしさは人生において、どんな役割を果たすのでしょうか?
「自分らしさ」の必要性
相手に自分のことを理解してもらう必要がある場面では、しっかりと自分らしさを表現できる人のほうが印象に残りやすいでしょう。たとえば就活などでの自己PRのシーンや、初対面の人への自己紹介などです。
「自分らしさ」がわからないと悩む人へ
「自分らしさがない」のもあなたらしさ
「自分らしさがない」と思っていることも、自分らしさのひとつの形です。
自分らしさがないと考えている背景には「自分の意見を述べるよりも、人の話を聞くのが上手」「最前線に立つよりは、縁の下の力持ちが得意」「人を尊重することができる」「抜群の協調性の持ち主」など、何かしらの自分らしさが存在しているはずです。
自分らしさがない人はひとりもいません。
そして、すべての人が素晴らしい魅力や才能を持っています。できないことや持っていないものばかりに目を向けてしまうと、自分のいいところが見つけにくくなってしまいます。自分がすでにできていること、持っているものに気づいて、自分のいいところに焦点を当てるようにしましょう。
それから、何が自分らしいかは簡単に変化するものです。
自分らしさは、自分が「今のどんな自分を『これが私』と認めているか」で変わるので、過去に認めた自分らしさに縛られる必要はありません。
自分の成長に合わせて、自分らしさを更新していくのが自然です。
「これが私の自分らしさだ」と思ったとしても、「やっぱりちがう」と思ったら改めればいいだけです。そう考えたら、気軽に自分らしさを見つけられるのではないでしょうか。
(文:大塚統子、構成:中田ボンベ/dcp)
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