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仕事の仕方や傾向は? 「ゆとり世代」の特徴

山本喜一(社会保険労務士)

中田ボンベ@dcp

ゆとり教育を受けた世代は「ゆとり世代」と呼ばれています。この世代は「仕事ができない」などと、たびたびメディアなどに取り上げられてきました。本当にゆとり世代社員は「仕事ができない」のでしょうか? この世代の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか? 社労士の山本喜一先生に聞いてみました。

ゆとり世代とは

まず「ゆとり世代」とはどのような世代なのかを、社労士の山本喜一先生に聞いてみました。

「ゆとり世代」と呼ばれた背景

ゆとり世代とは「ゆとり教育を受けた世代」のことです。かつては「つめ込み教育(試験のための知識のつめ込みを要求する教育)」が行われていました。しかし1970年代後半に、つめ込み教育が「学校社会でのいじめや暴力などの反発を生む」と問題視されます。これを解決するために、学校教育に「ゆとりと充実」をもたらすことを目指した取り組みがはじまりました。このゆとり教育は1992年度から段階的に進み、2002年度から2010年度まで行われました。

「ゆとり世代」と呼ばれる世代

一般に、この1992年から2010年度までの学校教育を受けた世代を「ゆとり世代」と呼びます。1987年から2004年生まれの人がこの期間に教育の対象となっており、その中でもゆとり教育の影響を色濃く受けているのが1987年から1995年生まれとなっています。

ゆとり世代社員の特徴

ゆとり教育を受けた世代のうち、そのほとんどがすでに社会人となっていますが、仕事面ではどのような特徴があるのでしょうか? 同じく山本先生に聞いてみました。

仕事の仕方

ゆとり世代特有の仕事の仕方としては以下の傾向が強いようです。

(1)嫌いなことはしない

たとえば、オフィスにかかってきた電話を取らないので「どうして取らないのか」と聞くと「対応できないので、取りたくない」と答えるなどです。「失敗したくないからやりたくない」など、個人の感情で業務をするかしないかを判断することが多く見られます。

(2)ストレス耐性が低く打たれ弱い

業務上の注意をした翌日から出社しなくなり、そのまま連絡がつかなくなったなど、すぐに「駄目だ。辞めたい」と深く落ち込んでしまう傾向があります。ストレスに慣れていないことで、自分のストレス解消方法がわかっておらず、感情をコントロールできなくなることも多く見られます。

ちょっと注意をされたり、挫折に直面したときに、失敗を乗り越えようとか、これまでの経験を生かして次は失敗しないようにしようという気持ちがありません。叱られると過度に落ち込んでしまい、元気になるまで時間がかかるので、取り扱いに注意が必要です。

職場の人間関係

チームプレーが苦手

自分中心で物事を考え、他人のことを考えない人もいます。ゆとり世代は基本マイペースな人が多いと感じます。「個の力」を重視し「チームプレー」が苦手なので、チームとしてうまく行動できず、チームでひとつのことを成し遂げるということが苦手です。

リアルなコミュニケーション力が低い

また、SNSが発達したことにより、リアルなコミュニケーション力が低く、自分から積極的に人とかかわろうとしない傾向もあります。上司や先輩が声をかけても反応が薄く、相手と仲よくなろうという気持ちが見えない態度です。マイペースでまわりと積極的・主体的にかかわろうとせず、気を利かせることがないので、言われたことしかしません。その点もほかの世代とトラブルになりやすい要因です。

仕事への価値観

(1)上昇志向がない(出世に興味がない)

仕事よりもプライベート第一主義で、ゆったりと生活したい人が多いため、会社でも出世を気にしたり、出世競争に参戦することがありません。そのため、人よりもがむしゃらに働いてリードしようとするガツガツしたタイプとの相性が悪いです。

(2)給与が多くなくてもいい

給与の額について、「責任が大きくなったり自由が少なくなるくらいなら、生活できる程度の給与があればいい」と考える傾向にあります。昇進についても、責任だけ大きく増えて給与がそれほど上がらないとなると、その昇進を断る人もいます。

(3)自分の時間を確保したい

古い世代には、自分の出世や会社のためにとがむしゃらに働く人がいますが、ゆとり世代はあくまでプライベート優先です。そのため、残業や会社の親睦会より、友だちとの予定を優先します。アフター5に会社の付き合いを求めると平気で断ります。また、上司からの飲みの誘いに対して「それ残業代出ますか?」と言う人もいます。

(4)興味があることにはとことんこだわる

自分が興味のある内容だと、普通の人では考えられないような細かなところまで調べたり、その内容について会社の誰よりも詳しくなったりすることがあります。

ゆとり世代社員との上手なコミュニケーション方法

コミュニケーションを取るのが難しそうな印象を受けるゆとり世代ですが、ゆとり世代の社員とうまくコミュニケーションを取るにはどうすればいいのでしょうか? 「ゆとり世代の魅力」を含め、上手にコミュニケーションを取る方法を山本先生に教えてもらいました。

ゆとり世代社員のいいところ

情報収集能力に長けている

ゆとり世代は、自分の好きなことに熱中し、時にはその道を極めることもあります。そして、スマートフォンなどを小さい頃から使いこなしており、インターネットで検索することに慣れているので、情報収集能力が高いといえるでしょう。一部の人にはなりますが、高い情報収集能力で集めた情報をうまく活用することにより、仕事が抜群にできる人がいます。

会社の常識にとらわれないアイディア力がある

また会社の常識にとらわれないため、今までにない画期的なアイデアを出してくれることもあります。

ゆとり世代社員の伸ばし方

好きなことを業務の中に組み込む

好きなことは自分が納得するまで突き詰めて行うので、ゆとり世代社員の好きなことが業務の中で見つかるように進めることができれば、戦力となるでしょう。

「尊敬できる年上の友だち」のような関係になる

また、自分の尊敬する人の言うことは素直に聞く傾向にあります。懐いている先輩社員から「一見無駄に見えても、後々自分のためになる」と言われると、納得して前向きに仕事をしてくれやすいことも挙げられます。「上司」からの指示ではなく、「友だちのような話しやすい人」からの助言と捉えてもらうようにすると、素直に行動に移してくれやすいでしょう。

細かくマニュアル化して指示だしする

また、自ら仕事を見つけて動くのが苦手な人や、主体的に動く必要性を感じていない人も多くいます。そのため、業務についてマニュアルに細かに記載して、そのとおりに業務を行ってもらう方法も挙げられます。

特徴を理解してうまくコミュニケーションを取ろう

ゆとり世代は、自分優先で嫌いな仕事をしないなど、基本的にはマイペースなのが大きな特徴とのこと。それゆえ、ちがった価値観を持つほかの世代とトラブルになりやすいようですね。「扱いづらい」といった印象を受けますが、その特徴をしっかりと理解してコミュニケーションを取ることで、仕事面で大きな成果を挙げてくれたりもするようです。もし折り合いがうまくつけられていないゆとり世代が身近にいるのなら、その人がどんなことを考えているのか、慎重に見極めてみるといいかもしれませんね。

(文:山本喜一、構成:中田ボンベ/dcp)

※画像はイメージです

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